「公益の代表者」(検察庁法)であるべき検察に強い不信の目が向けられています。
昨夏、再審無罪となった福井女子中学生殺人事件(1986年)について名古屋高等検察庁は1日、裁判にかかわった当時の検察官らへの内部調査をすると発表しました。
■証拠隠し調書捏造
この事件で、検察は無罪を示す証拠を知りながら隠して有罪に持ち込み、再審開始決定にも異議を申し立てました。再審無罪判決は、検察官が証拠を明らかにしていれば初めから無罪の可能性があったとし、検察官の行為を「罪深い不正」と断じました。
再審法改定をめぐり、検察の不服申し立て(抗告)への批判が高まるなか、検察は調査を言い出しましたが、なぜ事実を隠し罪に陥れたのか、組織としての問題に迫れるのか厳しく問われます。
こうした検察の対応はこれにとどまらないからです。
強盗殺人犯として死刑囚だった袴田巌さんの冤罪(えんざい)を晴らした再審判決は、捜査機関の証拠捏造(ねつぞう)を認定、検察官調書も捏造だとしました。検察は上告を断念して無罪を確定させながら、判決には「重大な事実誤認がある」「到底承服できない」とする検事総長談話を出しました。袴田さん側は「犯人視するものだ」として名誉毀損(きそん)で国を訴えています。
■女性検事への加害
大阪地検トップだった北川健太郎元検事正が2018年、部下の女性検事に暴行を加え準強制性交罪(抗拒不能に乗じ性交等をした)で起訴されている事件では、検察内の二次加害を組織の問題だと訴えてきた被害者が4月30日、辞表を提出しました。復職を願い職場の安全確保を求めてきましたが、辞職に追い込まれたものです。
北川被告は当初、「大阪地検が機能しなくなる」「検事総長が辞職しないといけなくなる」など組織防衛を持ち出して脅し、被害者は5年あまり被害申告できませんでした。
さらに告発後、同僚の副検事が被害者の実名や「被害者は同意していた」などの誹謗(ひぼう)中傷を流し、広まりました。何度も対処を訴えたものの検察庁は放置し、被害者を傷つけ孤立させました。
女性検事は、虚偽を言いふらした副検事を名誉毀損、国家公務員法違反で告訴。しかし大阪高検は、副検事が捜査情報や被害者の名前を漏らしたと認めながら不起訴にし、最も軽い戒告としました。
検察外の第三者委員会による組織内ハラスメントの調査、再発防止策を求める訴えは無視されています。「検察庁は二次加害に対し必要な調査、捜査をせず身内の犯罪を隠蔽(いんぺい)した。だとすれば今後、必ず同じ過ちを繰り返し、新たな被害者を生み出す」と女性検事は訴えます。
この事件は元検事正の性犯罪というのにとどまらず、検察の組織体質を問うものです。「人権蹂躙(じゅうりん)組織が、人の一生がかかった処罰にかかわること自体が問題」(女性検事)であり、冤罪被害を生む体質と根は同じだといえます。
検察は起訴権限を持つ唯一の組織です。身内の不正・犯罪の隠蔽は許されません。国民全体のためにも第三者機関による徹底検証が不可欠です。

