日本共産党

メニューとじる

すべての記事が読める

赤旗電子版購読お申し込み

2026年5月5日

山手線1周スタンディング完走

政治に言いたいこと30駅分
団地のネコさん(26)

写真

(写真)一番好きな街、神保町で=東京都千代田区

 「ぼっちでも言うよ戦争反対」などと書いたスケッチブックをかかげて、東京・JR山手線の全30駅を1日で1周した若者がいます。1周の途中で投稿したX(旧ツイッター)は20万回近く見られました。行動に至った思いとは―。(津久井佑希)

 「いろんなやばいことが目前に迫っているという感覚があった。罪のないイランの子どもたちが殺されている。石油が枯渇したら私たちの命も脅かされるかもしれない。でも、周りを見るとみんな普通に日常を送っている」

 自身の感じていることをゆっくりと言葉にするのは、「団地のネコ」さん(26)=東京都内=です。普段は小売店での販売の仕事に加え、空き時間にオンライン英会話講師をしながら通信制大学で学ぶ社会人学生です。

 「石油のこと、イランやイスラエルのこと。何から言えばいいんだろうってくらい主張したいことがいっぱいあった。そのときに山手線の路線図が頭に浮かんだ。主張を30駅分全部書こうって」

 山手線の全30駅で下車してスタンディング。各駅で異なるメッセージをかかげて自撮りして、すぐにXに投稿するという取り組みです。

 「同性婚合法化は夢のまた夢なのかい???」「熊本・静岡に勝手にミサイル置くな」…。スケッチブックには暮らしや平和、人権などへの思いを書きました。政府は2025年、外国人の在留資格に関する省令を改定し、外国人が事業を営む際の資本金要件を、それまでの6倍の3000万円に引き上げるなどしました。影響を受ける店が多く並ぶ新大久保駅前では「滅亡の危機!?インドカレー屋を救え」、上野駅前では「上野にパンダをもう一度」。駅にちなんだ主張も書きました。

 4月16日午前9時30分すぎ。山手線1周は新宿駅前からスタートしました。最初の数駅では各30分以上スタンディングしていたところ、4駅目の目白駅前ですでに正午を過ぎました。「途方もないなと気付き」、1駅あたり5分から20分ほどスタンディングして、次の駅までの電車内でX(旧ツイッター)に投稿を繰り返しました。途中、“燃料切れ”を感じるとしょうゆせんべいやタイ料理(ともに巣鴨駅周辺)を補給。ライトアップされた東京駅にもエネルギーをもらいながら、午後10時15分にゴールの代々木駅に。無事完走しました。

Xにとどまらず路上へ “何という勇気”反響も

写真

(写真)19万回見られた東京・高田馬場駅前でのスタンディング(Xの投稿より)

 東京・新宿駅前と高田馬場駅前、駒込駅前では通行人から好意的な反応がありました。駒込駅前では中年女性が「戦争は人災」の主張をじっと見つめた後、無言で親指を立てて“グッド”サインをして去っていきました。

 「代々木駅に着いたときはマラソンを完走したみたいに感無量だった。マラソン走ったことないけど」。各駅でのXの投稿には多くの好意的な反応が。高田馬場駅の投稿は19万回見られ、9000以上の「いいね」が付きました。

危機感を抱いて

 2月28日に米国とイスラエルによるイラン攻撃が起き、ホルムズ海峡が事実上封鎖。改憲に前向きな高市自維政権が多数の議席を持つ状況で、「私たちの命も脅かされるかもしれない」と危機感を抱いたことが行動のきっかけです。

 友人を誘って参加した3月12日の東京・JR有楽町駅前での「憲法9条改憲NO!ウィメンズアクション」が、生まれて初めてのデモでした。それまでデモは「『俺たちは正しいことしてるんだ』みたいな雰囲気があり苦手だった」。

 80代の祖母が長崎で被爆しました。戦争法(安保法制)が国会で強行採決された2015年、改憲に反対するチラシを駅頭で配ったり、戦争のニュースが流れると「戦争は絶対にやっちゃいけない」と怒っていた姿が印象に残っています。その頃から政治や社会に関心はありましたが、「自分事になっていなかった」と振り返ります。

 3、4年前にカジュアル衣料品の縫製工場で、難民申請中の人やイスラム教徒などさまざまな背景のある外国人と働きました。「いろんな点が線としてつながっていった。世界で起きていることは私と直接関わっているんだと認識できるようになった」

 終わらないイラン攻撃とホルムズ海峡の事実上封鎖に、いても立ってもいられない気持ちでした。一方で、国会前でデモがある夜は仕事…。デモで出会った人たちにLINEグループで1人スタンディングについて相談すると、「1人でやっている人もいるよ」と背中を押されました。

 4月6日、部屋にあった段ボールにキノコ雲の絵とともに「One Country was ENOUGH. NEVER again(一国でたくさんだ。繰り返すな)」と一気に描きました。

プラカード掲げ

 翌日、普段より30分早く職場の最寄り駅へ。約30分間、黙ってプラカードをかかげました。「現場に着いた途端に足がすくんで、ずっと隅っこにいた。でも、『とにかく私はやったんだ』と思った」。初1人スタンディングを報告したXの投稿には7000の「いいね」と、「尊い!!何という勇気。尊敬します」など多くのコメントが届きました。

 「SNSをチェックしていると最悪な現状が全然変わらなくて、世界に裏切られた感覚を持っていた。行動すると世界に関わっていると感じられて、私の中の世界が少し明るくなった」と声を弾ませます。

 「声を上げ続ければ波が広がる」という希望が「山手線1周」につながりました。

 「団地のネコ」さんの「山手線1周」をXで見て類似の行動をする動きが、大阪環状線(大阪市)と名城線(名古屋市)などで起きています。

 「私一人の意見なんて大したことないって思っていた。でも可視化することで同じ思いを持った人がいるとわかったし、行動してくれる人もいる。これからも前を向き続けようと思った」。団地のネコさんは、こう呼びかけます。「Xにとどまってないで、みんな路上に出よう。高市さんもXの投稿ばかりじゃなくて記者会見開いて」