日本の上場企業の自社株買いが急増し、日本経済をゆがめています。
自社株買いは、上場企業が過去に発行した自社の株式を株主から買い戻すことです。
各社が公表した昨年12月までの自社株買いの実績を集計すると、昨年1年間で18兆円を超えたことがわかります。直近の2年間で、それ以前の2倍以上に急増しています。
自社株買いをすると、市場に出ている発行済み株式の数が減ります。すると、その企業があげた利益の額が変わらなくても、1株当たりの利益が増えます。
その結果、株式市場でその企業の株式に対する評価が高まり、株価をつり上げます。
企業が「自社株買いを実施する」と発表すると、「株価が上がる」と予想した投資家が買いに入るため、実際に自社株買いをする前から株価が上昇する場合も少なくありません。
■賃金ほぼ同額流出
自社株買いが、利益を積み重ねたものである内部留保を使って行われることが企業経営や日本の経済をゆがめています。
内部留保や現預金などの自己資金が自社株買いに使われることで、その分、労働者の賃上げや設備投資、下請けの単価改善など国内経済の活性化に使えるはずだった原資が減り、経済停滞を招いています。
直近の2年間で自社株買いを実施した企業は、上場企業約4000社のうち約1600社です。これらの企業で働く正社員は218万人、平均年収は781万円で、賃金総額は約17兆円です。
2年間の自社株買いの総額は33兆円ですから、賃金2年分とほぼ同額が株価つり上げのために流出してしまったことになります。
自社株買いが急増したのは、安倍晋三政権のもとで、2015年に金融庁と東京証券取引所が定めた企業統治のガイドラインである「ガバナンス・コード」で、株主の権利の確保を最優先とすることを求めたのが契機です。
23年には東証が、株価を意識した経営を上場企業に要請しました。そのことで、株主至上主義を求める海外投資家などの「物言う株主」の圧力のもと、配当に加え、株主への分配として自社株買いがさらに急増してきました。
■弊害あらわで改訂
あまりの弊害にこの4月、元凶であるガバナンス・コードの改訂にあたって、金融庁と東証が「専ら株主還元に頼るなど短期目線でふるまうのではなく、中長期的な企業価値の向上に向けた成長投資等の取組みを行うことが期待される」とのべるほどです。
日本では、株価を都合良く操作できるなどの弊害から、自社株買いは原則禁止されていました。ところが、1994年以降、政府や自民党が自社株買いを認める法改悪を繰り返し、小泉純一郎政権がすすめた「構造改革」のもと、2001年に全面解禁してしまったのです。
アメリカやフランスでは、自社株買いに対する課税も行われています。自社株買いによる経済のゆがみをただし、日本でも自社株買いに課税すべきです。

