ゴキブリやケムシ、ハエやダニ。名を聞くだけで、忌み嫌われる生きものたちがいます。人間の生活や経済活動に影響をおよぼす「害虫」です▼昔、人々は虫を「自然にわいてくるもの」と考えていました。生態もわからず、虫による被害はたたりや天災とされ、虫送りなど神や仏に頼ることで追い払おうとしました。日本で本格的な害虫対策にとりくみ始めたのは明治政府になってから。戦争とともに農薬や殺虫剤の研究も進み、害虫は人の手で排除するものという考え方が社会に定着していきました▼害虫と、人の役にたつ益虫という分け方もうまれましたが、それは生きものそのものを指すというより、人とのかかわりのなかで形作られました。虫たちはそれぞれ、自然の一員として生き続けています▼先入観にとらわれずフラットな目線でみてほしいと、いま群馬県立自然史博物館で害虫たちの大博覧会が開かれています。植物の受粉や水質の浄化など自然環境を支えるものもいるハエ目。はねの構造が工学分野の応用に役立っているハサミムシ目▼害虫ではなく益虫としての意外な素顔も。あのゴキブリだって落ち葉や朽ち木、動物の死骸を食べて有機物を分解する役割を担っています。一方で世界で最も多くの人を死に至らしめているのは蚊だという事実も▼地球に生きる仲間としてのありようを知ることで見方が変わってくる。そのむきあい方は虫たちだけでなく、人間をふくめたすべての生きものに対しても同じなのかもしれません。
2026年5月3日

