日本軍は作戦目的を達成したので、方向を転じて別の方面に進む。日本軍は積極的な攻撃によって玉のように美しく砕け散った―。撤退は転進、全滅は玉砕に言い換えられました▼政府や組織に都合のよい信用できない発表。いまではその代名詞となっている戦前の「大本営発表」。近現代史研究者の辻田真佐憲(まさのり)さんは同名の著書で、隠しきれない敗退を美辞麗句で糊塗(こと)する「特殊な話法」を徹底的に暴きました▼かつて陸軍の報道部にいた人物が戦後に記した文章を紹介しています。「官僚の作文だけでは戦争はできない。こういう無内容・無感動の言葉を適当に操作していれば、知らぬまに勝利がころげこんでくる、とでも思ったのであろうか」▼辻田さんは「大本営発表の本質は政治権力と報道機関の一体化」だったといいます。それは現在も。たとえば、高市政権が閣議決定した「防衛装備移転三原則」。殺傷武器を防衛装備に、輸出を移転にすり替えて▼情報機能の強化を名目にした国民監視、表現や思想の自由、権利やプライバシーの侵害につながる法案は、国家情報会議やスパイ防止に名を変えています。一方で自衛隊の幹部を大将や中将、大佐といった諸外国の軍隊に準じた呼称に変更する方針も▼なによりのごまかしは、高市首相が「平和国家の基本理念は堅持する」と強調していることです。戦争の反省からうまれた憲法9条と、戦後の歩みに真っ向から反しながら。現代版「大本営発表」で覆い隠された真実を広げるときです。
2026年4月28日

