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2026年4月19日

Q&A 戦争への道をどう止め、平和をどうつくるか

民青学習会 志位和夫議長の講演(上)

写真

(写真)質問に答える志位和夫議長=11日、党本部

 4月11日、日本民主青年同盟の主催で、「Q&A 戦争への道をどう止め、平和をどうつくるか」と題する学習会が行われました。講師は、志位和夫日本共産党中央委員会議長が務め、司会は、酒巻眞世民青同盟副委員長、小泉伊知郎民青同盟常任委員が務めました。学習会の冒頭、酒巻氏は、この学習会を準備する過程についてつぎのように紹介しました。

 「今日の学習会に先だって、3月24日に『ミニ学習会』を持ち、志位さんから学習内容のあらましを聞くとともに、青年との対話のなかで出されている疑問や質問についてお伝えしました。その内容を踏まえて、民青として質問案をつくり、志位さんと相談して質問を練り上げました」

 学習会は、2回の休憩をはさんで3時間近くにおよび、事前に準備された25の質問に、当日寄せられた3問を加えた合計28の質問に答える形で進みました。

 (※講演全体をきょう付と20日付の2回に分けてお届けします。志位議長が講演で使用したパネルは一部のみ掲載します。日本共産党の公式ウェブサイト上ではすべてのパネルを閲覧・ダウンロードできます)

イントロダクション

Q1 そもそも日本はいま「戦争への道」に進む危険があるのでしょうか? 「そういう不安がある」という人もいる一方、「大げさでは」という人もいますが。

「平和国家」の原則とされてきたことが、つぎつぎと壊されてきている

 酒巻 まず、「イントロダクション」です。1番目の質問です。そもそも日本はいま、「戦争への道」に進む危険があるのでしょうか? 「そういう不安がある」という人もいる一方、「大げさでは」という人もいますが、どうなんでしょうか。

 志位 いま日本は、大きな歴史の分かれ道に立っていると思います。一方で、かつてない「危険」が起こっています。他方で、それを許さない「希望」も広がっています。

 「危険」という点では、戦後、憲法9条のもとで「平和国家」の原則とされてきたことが、つぎつぎと壊されてきています。

 「軍事費GDP(国内総生産)比1%以内」――これは1976年に三木内閣が閣議決定で決めた軍事費の上限枠です。世論の力で1986年の枠撤廃後も1%程度に抑えてきたのですが、2023年度以降、異次元の大軍拡が開始されて、すでに2%まで拡大し、これを3・5%から5%に引き上げることが狙われています。

パネル2

 「敵基地攻撃能力は持てない」――政府は長らく、「他国に攻撃的脅威を与える兵器は憲法上持てない」という憲法解釈(1959年、伊能防衛庁長官答弁)をとってきました。ところが、〔パネル2〕をご覧ください。それを踏み破って、射程1千キロ、2千キロ、3千キロという長射程ミサイルの配備が強行されています。“ミサイル列島”化が進んでいます。住民説明会すら開かずに配備を強行しており、全国で反対の運動が広がっています。

 「専守防衛」――これは日本が持てるのは、日本を守るための「盾」だけで、相手を攻撃する「矛」は持たないという原則なんです。政府は、「防衛上の必要からも相手の基地を攻撃することはしない」というのが「専守防衛」なのだと説明してきました(1972年、田中首相答弁)。ところが、その形骸化が進んでいます。

 「武器輸出禁止」――1976年、三木内閣のもとで、「国際紛争の助長を回避」するためとして、武器輸出は禁止するという方針が明確にされました。それが2014年、安倍政権のもとで輸出を認める方針に転換し、いま全面解禁が狙われています。

 「集団的自衛権は行使できない」――戦後一貫して、憲法9条のもとでは集団的自衛権の行使はできないというのが政府の憲法解釈でした。ところが、安倍政権のもと、2014年の閣議決定、15年の安保法制強行で、集団的自衛権行使への道が開かれました。日本共産党は、憲法違反の安保法制は廃止すべきだと一貫して求めています。

 「非核三原則」――1967年、佐藤(栄作)首相が、核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずの「非核三原則」を打ち出しました。そして71年には国会決議が採択されて「国是」とされてきました。ところがいま、「持ち込ませず」に穴を開けて、投げ捨ててしまおうということが狙われています。

 「憲法9条」――自民党は、1955年の結党時から一貫して9条改悪を狙い続けてきました。いまこの条項に、「自衛隊」を明記する、そういう改悪の現実的な危険が生まれています。

 どれも「戦争への歯止め」とされてきたことですが、つぎつぎと壊されてきています。「戦争への道」を開く=「戦争する国づくり」という点で、戦後、最も危ないところまで日本の政治はきているというのが現状です。まず、この現状をしっかり見ることから始めていきたいと思います。

平和を求める新しい自主的な市民運動の広がり--ここに大きな希望がある

 酒巻 「平和国家」の原則がつぎつぎと壊されてきているというお話でしたが、「希望」という点ではどうでしょうか。

 志位 私は、希望は大いにあると思います。こういう危ない動きにストップをかけて、平和を求める新しい自主的な市民運動が広がっていることです。

パネル3

「憲法をまもる」「さあ行こう平和の道を」とコールする人たち=8日、国会正門前

 〔パネル3〕をご覧ください。4月8日に取り組まれた「平和憲法を守るための緊急アクション」には、3万人の市民が参加し、国会議事堂を取り囲み、ペンライトをもって、「平和をつくろう」「憲法を守ろう」と声をあげました。この日は、国会前行動に呼応する取り組みが、なんと全国165カ所で行われて、国会前行動と合わせて約5万人が参加したと聞きました。この間の運動の特徴というのは、若い世代、労働者、子連れのママなどが、SNSの告知を見て、自主的に、一人で、あるいは友だちと連れ立って参加しているのが新しい特徴となっています。

 それに先だって、私がすごいなと思ったのは、3月28日には、「オタクによる反戦デモ」も行われた。

 酒巻 はい。ありましたね。

 志位 大ヒットテレビアニメのプロデューサー、著名な漫画家、脚本家らが、反戦・平和こそが特撮やアニメの原点だという思いをつぎつぎと語りました。脚本家の古怒田(こぬた)健志さんは、「日本特撮の出発点となった『ゴジラ』は反戦映画でした。63年の歴史があるテレビアニメには戦争を賛美した作品は一本もありません。そういう文化を享受して育ったわれわれオタクにとって反戦を唱え、態度で示すことは義務です」と語ったとのことです。

 私は、これらの動きを見て、2015年に安保法制に反対する新しい自主的な市民的、国民的運動が起こった時のことを思い出します。この時に、私は、本当に胸が躍ったのですが、そういう状況がいま、つくられつつあるのではないでしょうか。ここに大きな希望があると思っています。

 こうしていま、日本は、危険と希望が交錯する歴史の岐路に立っています。どちらの方向に日本が進むのかは、一人ひとりの国民、とくに若いみなさんの行動にかかっている。みなさん、一人ひとりの行動に、日本の未来がかかっているということを言いたいと思います。

 酒巻 危険とともに、新しい自主的な市民運動が広がるという、大きな希望をよく捉えるということが大事だなと思いました。

 志位 そうです。そこがポイントだと思います。

Q2 「日本を守るためには防衛費を増やすことも仕方ないのでは」「憲法9条を変える必要があるのでは」という人もいます。そういう人とどう対話をしていったらいいでしょうか?

「戦争はいや」という思いを共有して、どうすれば平和をつくれるかを語り合おう

 酒巻 2番目の質問です。「日本を守るためには防衛費を増やすことも仕方ないのでは」「憲法9条を変える必要があるのでは」という人もいます。そういう人とどう対話をしていったらいいでしょうか?

 志位 とても大事な質問だと思います。私は、そういう人たちも「戦争はいや」という気持ちでは共通しているのではないか。「戦争はいや」だから「防衛費を多少増やすことも必要ではないか」、「戦争はいや」だから「憲法9条を変えることも考えてみたらどうか」という感じではないでしょうか。

 酒巻 ええ。そう思います。

 志位 「戦争はいや」という思いは、いま圧倒的多数の日本国民の共通の思いだと思います。これは当たり前のことのように見えるかもしれないけれども、とても大切なことなんです。というのは、かつて、1941年に日本が真珠湾攻撃で太平洋戦争を始めたときは、当時の国民のなかには、「気持ちがスッとした」と歓迎をする声も少なくなかったと言います。権力によってそういう世論がつくられたものだとはいえ、戦争を望む世論もあったのです。今の日本はそういう状況じゃないですよね。「戦争はいや」という気持ちは、圧倒的多数の国民の思いになっている。これはとても大切なところだと思います。

 だから防衛費とか憲法の問題で意見が違ったときに、「あなたの考えは間違いだ」と頭ごなしで決めつけるのではなくて、「戦争はいや」という思いを共有して、そこから出発して、どうすれば戦争が止められるかを一緒に考えることが大切ではないでしょうか。軍事力を強めれば平和がつくれるのか、それとも外交の力で平和をつくることが可能なのか。そのことを事実と道理に照らして一緒に考えていく。広く対話と学習をしていく。そのことが大切ではないかと思います。今日はそういう対話や学習に役立つお話をしていきたいと思います。

 酒巻 はい。対話を広げて一緒に考えていくためにも、今日はよく学びたいと思います。よろしくお願いします。

 志位 最後までよろしくお願いします。

第1の角度--トランプ大統領言いなりで平和はつくれるか?

 小泉 それでは本論に入っていきます。今日の学習会では、戦争と平和をめぐって四つの角度から質問に答えていただきます。

 第1の角度は、「トランプ大統領言いなりで平和はつくれるか?」です。

Q3 アメリカとイスラエルが始めたイラン攻撃をどう見たらいいのでしょうか? 4月8日に「2週間の停戦」が合意されましたが、そもそもこの戦争をどう見るかからお話しください。

国連憲章違反の暴挙--ここまで「法の支配」を否定する米大統領は戦後初めて

 小泉 3番目の質問です。アメリカとイスラエルが始めたイラン攻撃をどう見たらいいのでしょうか。4月8日に「2週間の停戦」が合意されましたが、そもそもこの戦争をどう見るかからお話しください。

 志位 「2週間の停戦」が合意されたこと自体は、トランプ政権が米国内外からの批判に包囲され、追い詰められた結果であり、重要な一歩前進だと思います。同時に、すでにいろいろな逆行が起こっています。前途には大きな困難も予想されます。これを恒久的な戦争終結につなげていくために、ここで手を緩めないで、「無法なイラン攻撃反対」という声をさらに強めることをまず訴えたいと思います。

 「そもそもこの戦争をどう見るか」というご質問ですが、恒久的な戦争終結を実現するうえでも、アメリカとイスラエルの行動のどこが問題なのか、世界はこの問題にどう対応してきたのか、日本政府の対応の問題点と日本の果たすべき役割は何なのかについて、いま明確にしておくことはとても大事だと思います。今日は、ちょうど攻撃開始から6週間目にあたります。この6週間を振り返って、少しまとまってお話ししてみたいと思います。

 小泉 お願いします。

 志位 まずアメリカとイスラエルが開始したイラン攻撃が、どんな理由をもってしても許されない、国連憲章と国際法に違反する暴挙であることは明らかです。核問題の交渉のさなかに、それを断ち切る形で一方的に軍事攻撃を開始し、最高指導者を殺害し、「体制転換」を呼びかけた。死者はすでに3000人を超え、南部のミナブ女子小学校への爆撃では175人以上が亡くなり、病院、文化・宗教施設、民家、インフラを攻撃し、400万人以上が国内避難民となっています。どれもが国際法を二重三重に踏みつけにする暴挙です。

 世界に衝撃を与えたのは、トランプ大統領が、ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで、「私には国際法は必要ない」と公言したことです。「私を止められるのは一つだけだ。私の道徳観だ。それだけが私を止められる」とも言った。自分自身の「道徳観」なるものにあえば、どんな国際法違反の無法をやっても知ったことか、構うものか。ここまであからさまに「法の支配」を否定するアメリカ大統領が出現したのは、第2次世界大戦後の歴史でも初めての出来事です。

米国の国際法専門家の共同書簡--四つの角度から国際法蹂躙を告発

 小泉 アメリカの歴代政権と比較しても非常に危険な政権だということですね。トランプ大統領はイランを「石器時代に戻す」とも言いました。あまりに野蛮です。

 志位 ほんとうにそうですね。トランプ氏が停戦合意に先だって、「今夜一つの文明が滅ぶだろう」と脅迫した。これもあまりに異常で野蛮な発言だと強い批判がわき起こりました。

 4月2日に100人以上の米国の国際法専門家が共同書簡を発表し、すでに170人以上が共同書簡に署名していますが、米国がいかにひどい無法を犯しているかを体系だって告発しています。この共同書簡は、国際法の専門家ならではの厳密な論建ての告発の文書になっています。

 共同書簡は、第一に、米国とイスラエルによる軍事作戦の開始を、「国連憲章の明確な違反」であるとまず断罪しています。

 第二に、それ以降の米軍の行動について、インフラ、学校、医療施設、住宅などに対する攻撃、とくにミナブの女子小学校に対する攻撃は、国際人道法に違反する可能性が高く、戦争犯罪にもなりうると厳しく批判しています。

 第三に、トランプ大統領や米政府高官が行った「危険な発言」に対して、「深い懸念」を表明しています。投降者に対する「助命拒否の脅し」、「発電所を消し去る」「原子力発電所への攻撃もあり得る」などの発言は、実行されるなら戦争犯罪になりうる、「国際人道法のルールへの恐るべき軽視を示している」と強く批判しています。

 第四に、トランプ政権が、「国際人道法の順守を確実にするための保護措置を意図的かつ体系的に弱体化させてきた」こと、2026年の「国家防衛戦略」(NDS)からは文民保護や国際法に関する言及が消えていることを、「特に懸念される」と批判しています。

 こうした四つの角度から、トランプ政権による国際法の蹂躙(じゅうりん)を体系だって告発しているのです。

誰によるものであれ無法を許さず、国連憲章にもとづく平和秩序の確立を

 志位 いま国連憲章と国際法を蹂躙しているのは、アメリカのトランプ政権だけではありません。イスラエルのネタニヤフ政権は、パレスチナ・ガザでのジェノサイド(集団殺害)を続け、レバノンへの大規模侵攻を行うなど、無法な残虐行為を繰り返しています。ロシアのプーチン政権はウクライナへの侵略戦争を開始して、まる4年になるけれども、無法な戦争をやめようとしない。

 これらのふるまいを許したら、国連憲章と国際法はあってもなきがごとし――形骸化してしまうことになります。弱肉強食の世界への逆戻りを決して許してはなりません。誰によるものであれ国連憲章と国際法に反する無法は許さない、国連憲章にもとづく平和秩序を確立する、この一点で世界の諸政府と市民社会が力を合わせようということを、強く訴えたいと思います。

 小泉 誰が起こした戦争かということで評価や態度を変えるのではなくて、誰によるものであっても、国連憲章と国際法違反の戦争は許さないということ、ここがとても大事になってきますね。

 志位 そう。そこがとても大切なポイントです。誰によるものであれ無法を許さない。たとえばロシアの戦争の批判はするが、アメリカの戦争の批判をしない、あるいはイスラエルによるガザでのジェノサイドは見て見ぬふりをする、そういう「ダブルスタンダード」ではいけない。誰によるものであれ国連憲章と国際法に反する無法は許さない。この一点で力を合わせることが大切です。

Q4 世界各国は、イラン攻撃に対して、どういう態度をとってきたのでしょうか?

トランプ政権の孤立が深まる--世界は「力による支配」に決して屈していない

 小泉 4番目の質問です。世界各国はイラン攻撃に対してどういう態度をとってきたのでしょうか?

 志位 トランプ大統領の無法に対して、世界各国から厳しい批判が集中して、日に日に孤立が深まっています。

 NATO(北大西洋条約機構)の国ぐにとの深刻な亀裂が広がりました。トランプ大統領がホルムズ海峡への艦艇派遣を要請したのに対して、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スペインなどNATO加盟国がそろって拒否しました。スペインは米軍の基地使用を拒否、米軍の領空通過も拒否しました。イタリアも米軍の基地使用を拒否、フランスも領空通過を拒否しました。トランプ氏は逆上して「誰の助けも必要ない」と言い、「NATOから離脱してやる」とまで言いました。

 なかでもスペインは、――この国は共産党が参加する左翼連合も加わった中道左派政権になっているのですが――、サンチェス首相が下院の演説でつぎのように語りました。「私は国際法の一方的な破棄に『ノー』と言います」「同盟国や友人であることは、盲従し、卑屈になることではありません。間違った道に進んでいる時にきぜんと立ち向かう勇気を持つことです。友人に、パートナーに、たとえ不快であっても真実を伝えることです」。そのとおりだと思います。日本政府も見習うべきですね。

 小泉 本当にそう思います。

 志位 「グローバルサウス」と呼ばれる新興国、途上国はどうでしょうか。ブラジル、南アフリカなどは、「国際法違反」だと厳しい批判をしました。インドネシアは「攻撃停止」を要求し、インドは「深い懸念」を表明しました。「グローバルサウス」からも批判と不信の声が広がりました。

 ですから、私が強調したいのは、世界は、トランプ大統領の「力による支配」にけっして屈してはいないということなんです。今日の世界は、アメリカがいかに強大な軍事力を持っているからといって、アメリカ一国の思い通りになる世界ではけっしてない。このことが示されているのではないでしょうか。

 小泉 そうですね。トランプ大統領が非常に強気だということもあって、アメリカには逆らえないんじゃないかという声も多くの青年から聞いてきたんですが、アメリカの同盟国からも、新興国や途上国からも、イラン攻撃への批判が行われてきたし、それがトランプ政権を孤立させ、追い詰めているということですね。

 志位 そう。逆らえないんじゃなくて、逆らっている国がたくさんあるんですね。

Q5 高市首相は、「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだ」と言いました。とても恥ずかしい感じがしました。日本政府がとってきた対応をどう思いますか?

恥ずべき従属外交を批判する--日本はいかなる形でも無法な戦争に協力するな

 小泉 そういった世界の流れのなかで、5番目の質問です。高市早苗首相は、「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだ」と言いました。とても恥ずかしい感じがしました。日本政府が取ってきた対応をどう思いますか?

 志位 本当に恥ずかしいと思います。高市首相は、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃について、国会で何度聞かれても一言も批判せず、「国連憲章違反」と認めることもしませんでした。トランプ大統領が日に日に世界で孤立を深めている真っ最中にホワイトハウスに出掛けていって、「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだ。諸外国に働きかけてしっかり応援したい」と、事実上の支持表明をあたえました。これは恥ずべき従属外交というほかないと思います。

 日米首脳会談で、トランプ大統領が、「日本に一歩踏み出すことを期待する」とのべたのに対して、高市首相は「できることとできないことを詳細に説明した」と言います。「できること」として何を言ったのかを、国会で問いただしたのですが、答弁拒否を続けています。だいたい、無法な戦争に協力できることなど一つもないですよ。

 小泉 そうです。

 志位 「日本政府は、自衛隊派兵をはじめ、いかなる形でも無法な戦争への協力をするな」。ここで手を緩めずに、この声を上げ続けることが大切だと思います。

 その点で、見過ごすことができないのは、すでに在日米軍基地がこの無法な戦争に使われているということです。横須賀の米イージス艦、厚木の米海軍ヘリ、佐世保の米強襲揚陸艦、沖縄と岩国の米海兵隊、三沢の米空軍などが、すでにイラン攻撃に投入されているのです。つまり日本が戦争の事実上の当事国になっている。とても重大です。

 私は、日本政府は、スペインのサンチェス首相がやっているように、またNATO諸国がやっているように、在日米軍基地のイラン攻撃への使用は拒否するときっぱり言うべきだと思います。

 小泉 いまどうしてもガソリン代とか、石油製品ということが注目されがちで、もちろんそれ自体、重要な問題なんですけれども、同時に、日本中の米軍基地から出撃した米軍が実際にイラン攻撃に使われている、日本は事実上の当事国なんだということを直視しなければならないし、緊急に止めないといけないと思います。

日本政府は、戦争終結のための外交交渉を前に進めるための積極的役割を

 小泉 いま日本政府が、戦争を終わらせるために積極的にできることはないのでしょうか。

 志位 できることはあります。といいますのは、日本とイランというのは伝統的な友好関係を維持してきたのです。ですから、その気になれば積極的に役割を果たすことができるのです。

 私が注目したのは、ペイマン・セアダット駐日イラン大使が3月29日、日本のメディアのインタビューに答えて、日本とイランの伝統的な友好関係に言及して、「日本はいま、国際社会の先頭に立って、ほかの国ぐにと共に外交によってこの戦争を終わらせることができると思います」、こういう期待をのべたことです。

 私は、その翌日の3月30日、セアダット大使の訪問を受けて、党本部で会談したさいに、「大使の発言に注目しました」とのべ、つぎのように表明しました。

 「日本共産党は、戦争によるこれ以上の犠牲者を増やさないためにも、ホルムズ海峡問題を解決するうえでも、一刻も早く戦争を終わらせるために、アメリカとイランが外交交渉を始めることが重要だと考えます。そのさい、そうした外交交渉は、少なくとも、(1)イランに対する攻撃を完全に停止すること、(2)イランに対する再攻撃をしないことを保証することなどが、当然の前提になると思います。日本政府に対して、そうした立場に立って戦争を終わらせるための外交交渉を開始するための働きかけを求めていきたい」

 そうしましたら、大使は、「私がまさしく言いたかったことです」と応じました。私が、「いまのべた二つの前提が満たされれば外交交渉開始は可能になりますか」と尋ねますと、大使は「必ず可能になると思います」とのべ、それはイラン政府も主張していることだとのべました。

 このやりとりを踏まえて、田村智子委員長は、4月3日、木原稔官房長官と会談し、高市首相に対して、(1)戦争終結のための外交交渉を開始するよう世界各国と協調して米国とイランに働きかけること、(2)戦争終結のための外交交渉開始の前提として、イランに対する攻撃の完全な停止、イランに対する再攻撃をしない保証を米国に求めることを申し入れました。さらに、小池晃書記局長は、4月7日、参議院予算委員会で、高市首相に直接、わが党の要求を提起しました。首相は、「米国とイランの双方に働きかけを行っていく」と答弁しました。

 今回の停戦合意は、日本共産党が働きかけてきた方向に事態が一歩動いたということを示していると思います。ただ前途は厳しいものがあります。これを恒久的な戦争終結の実現につなげるために、日本政府に対して、米国に再攻撃をしない保証を求めるなど、交渉を前に進めるための積極的役割を果たすことを引き続き求めていきたいと思います。

 小泉 日本政府には積極的役割をぜひ発揮していってほしいと思います。その点で、日本共産党が、イラン大使と会談をし、日本政府に働きかけてきたというのは、とても大事だと思いました。

Q6 さきほど高市首相の取った態度について、恥ずべき従属外交と批判されました。「日米同盟が外交の基軸」だということが当たり前のように言われますが、このことをどう思いますか?

米国との軍事同盟を「外交の基軸」としている国は、日本の他にはない

 小泉 6番目の質問です。さきほど高市首相の取った態度について、恥ずべき従属外交と批判されました。「日米同盟が外交の基軸」だということが当たり前のように言われますが、このことをどう思いますか? 他の同盟国でも同じようなことが言われているのでしょうか?

 志位 「基軸」というのは「物事の中心」(『広辞苑』)ということですが、調べてみますと、「日米同盟が外交の基軸」という表現は、21世紀に入ってから政府の公式文書で使われ出したものなのです。わりあいと最近のことなんです。

 小泉 最近のことだと。

 志位 ええ。21世紀に入って、日本は、アフガン戦争、イラク戦争などで、自衛隊の海外派兵に踏み切っていきますが、そうした動きと歩調をあわせての変化なんですね。そして私が強調したいのは、アメリカと軍事同盟を結んでいる他の国を見ても、そんなことを言っている国は世界に他にないということです。

 3年ほど前、緒方靖夫副委員長が韓国の有力なシンクタンクの研究員――世界の安全保障問題に精通している研究員とソウルで会談しました。先方からつぎのような発言があったことが強い印象に残ったと聞きました。

 「韓国はアメリカの要請があっても中国封じ込めという立場に立たないし、立つことはありません。日本は『日米同盟が外交の基軸』と言っているが、韓国には韓米同盟を今のように重視すると言っても、外交の基軸にするという言葉も考えもありません」

 そもそも世界に、アメリカとの同盟関係を、「基軸」という言葉で定式化している国は他にないというのです。実際に、調べてみても、アメリカと軍事同盟を結んでいる韓国、オーストラリア、ヨーロッパのどの国も、アメリカとの同盟関係を「基軸」だと言っている国はありません。特定の国との2国間関係を唯一至上のものとしている国はないのです。ところが、日本政府は、「日米同盟」という4文字を聞くと思考停止に陥ってしまう。これは世界で日本だけのことです。

 この間のトランプ政権の一連の無法――ベネズエラ攻撃、グリーンランドをよこせという要求、キューバへの燃料封鎖、そしてイラン攻撃に対して、一言も批判を言っていない。これもG7の国の中で日本だけなんです。

米国の戦争に「ノー」と言ったことのない国が、「戦争する国づくり」を進める危険

 小泉 そもそもこれまで日本政府がアメリカの戦争の批判をしたというところを見たことがないのですが、この点はいかがでしょうか。

 志位 私も見たことがないです。2015年のことなんですが、安保法制が大問題になったさいに、安倍首相と国会で論戦したことがあります。私は、「日本が国連に加盟してから今日まで、日本政府が米国による武力行使に対して国際法上違法な武力行使として反対したことが一度でもありますか」と聞きました。安倍首相は、「日本は米国の武力行使に国際法上違法な武力行使として反対したことはありません」としぶしぶ認めました。一回もないんです。

 小泉 戦後一回もない。

 志位 一回もない。そんな国は世界の主要国では日本しかありません。私は、いま進められている「戦争する国づくり」がいかに危ないか、その根本がここにあると思うんです。つまり、アメリカの戦争に一度も「ノー」と言ったことのない国、「日米同盟絶対」で思考停止に陥ってしまっている国が、「私は国際法を必要としない」と公言するトランプ大統領の言われるままに「戦争する国づくり」を進めることはどんなに危険か。あまりにも明らかではないでしょうか。

 こういう恥ずべき従属状態から抜け出して、自主自立の外交への転換をはかってこそ、平和をつくることができるということを訴えたいと思います。

 小泉 アメリカと軍事同盟を結んでいる国ぐにでも、アメリカの無法を批判することがあると聞くと、日本の異常なアメリカ言いなりがきわだつと思います。そこから抜け出すことがほんとうに大切だなと思いました。

Q7 国連憲章にもとづく平和秩序を壊す動きを許さず、平和のルールを回復する一番の力はどこにあるのでしょうか?

世界の人民のたたかい、市民社会の運動こそが、平和のルールをつくる力

 小泉 7番目の質問です。国連憲章にもとづく平和秩序を壊す動きを許さず、平和のルールを回復する一番の力はどこにあるのでしょうか?

 志位 国連憲章を壊す無法がこれだけやられていますと、もう元には戻らないんじゃないかという心配があるかもしれません。しかし私は、そんなことはないと言いたい。世界の人民のたたかい、市民社会の運動こそが、平和のルールを回復し、前進させる一番の力になるということを訴えたいのです。

パネル6

 〔パネル6〕をご覧ください。アメリカでは、3月28日、イラン攻撃から1カ月にあたり、強権的な政治や国際法違反を繰り返すトランプ政権の打倒をめざして、「ノー・キングス=王はいらない」をスローガンとした大規模デモが行われました。全米50州の3300カ所以上で、少なくとも800万人が参加し、一日の抗議デモとしては米国史上最大規模になりました。このデモを主催したインディビジブル運動は、「国民はトランプ政権の横暴や違法な戦争にうんざりしている。われわれは変化を待つのではなく、変化を起こす」と語りました。「変化を起こす」。いいですね。日本とアメリカの平和運動が、太平洋をはさんで連帯して、違法な戦争に反対し、世界の平和秩序を確立するためにたたかおうということを言いたいと思います。

 歴史をたどってみましても、1945年に「武力による威嚇又は武力の行使」を禁止した国連憲章がつくられたのも、その根底には、2回にわたる世界大戦で、言語を絶する戦争の悲惨さを体験した、世界の諸国民の平和を求める大きなうねりがありました。その熱い思いが国連憲章に実ったのです。

パネル7

核兵器禁止条約の採択が決まった歓喜の中で握手を交わすサーロー節子さん(中央)と藤森俊希さん(その左)=2017年7月7日、ニューヨークの国連本部(池田晋撮影)

 〔パネル7〕をご覧ください。2017年に核兵器禁止条約が成立しましたが、この条約をつくった力が、広島、長崎の被爆者を先頭にした世界の市民社会の運動にあったことは、私もこの国連会議に参加して、肌身を通じて強く感じたことです。これは条約が採択された瞬間の写真で、この女性がサーロー節子さん(カナダ在住の被爆者)、握手しているのが藤森俊希さん(日本被団協事務局次長=当時)、お二人とも被爆者ですが、お二人の国連会議のスピーチは世界を圧するとても感動的なものでした。

 世界の市民社会の運動、たたかいこそが、平和のルールをつくる力です。たたかいによってこの世界を希望ある方向に変えようということを呼びかけたいと思います。

 小泉 いま、ひどい戦争が起こされているなかで、何とかしたいけれども、自分には何もできないという、無力感を抱える青年ともたくさん出会ってきましたが、市民社会の運動こそが力なんだということは、青年にとってとても大きな励ましになります。そういう大きな視点を持って頑張っていきたいというふうに思いました。

第2の角度--軍事的抑止力の強化で平和はつくれるか?

 酒巻 それでは、ここからは第2の角度――軍事的抑止力の強化で平和はつくれるか、ということについてうかがっていきます。

Q8 政府は、日本を守るためには、「日米同盟の抑止力、対処力の強化が必要」ということを繰り返しています。「抑止力」の強化が平和につながるのでしょうか?

 酒巻 8番目の質問です。政府は、日本を守るためには、「日米同盟の抑止力、対処力の強化が必要」ということを繰り返しています。「抑止力」の強化が平和につながるのでしょうか?

 志位 自民党政権の決まり文句は、「日本が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面している」、だから、「日米同盟の抑止力、対処力の強化が必要だ」というものです。耳にたこができるほど聞かされていますよね。

 それでは軍事的抑止力の強化の先に平和は来るのか。今日はこのことをトコトン考えてみたいと思います。まずは三つの角度からデータを紹介します。

世界で起こっている軍拡競争は、平和でなく、武力紛争のリスクを高める

 志位 第一は、いま世界で起こっている軍拡競争と戦争との関係です。

 国連事務総長は、2025年9月9日、世界の軍事費拡大に警鐘を鳴らす報告書「私たちが必要とする(本当の)安全保障:持続可能で平和な未来のための軍事支出のリバランシング」を発表して、そのなかでつぎのようにのべています。

 「軍事費はしばしば抑止と国家安全保障の根拠として正当化される。しかしエビデンス(証拠)が示しているのは、増大した軍事費は必ずしも平和と安定につながらないということだ。逆に、増大した軍事費はしばしば地政学的な緊張を激化させ、軍拡競争に拍車をかけ、武力紛争のリスクを高める」

 ストックホルム国際平和研究所所長のカリム・ハッガグ氏は、「日経」のインタビュー(2026年3月15日付)にこたえてつぎのような指摘を行っています。

 「世界の軍事支出は過去10年で大幅に増えたのに、多くの国が『自国は安全でなく深刻な安全保障上の課題に直面している』と公言する。これだけで軍事支出を増やせば安全になるわけでないと分かる。軍事支出の増加は紛争のリスクと、紛争時の破壊のレベルをかえって高める」

 共通して、世界でいま軍拡競争が起こっているが、それは平和でなく、武力紛争のリスクを高めると結論づけています。

軍拡競争が戦争への道であることは、人類の歴史が証明している

 志位 第二は、人類の歴史に見る軍拡競争と戦争との関係です。

 ここで過去150年間という歴史的なスパンで、世界における軍拡競争と戦争との関係を明らかにした先駆的研究を紹介したいと思います。

 カナダのブリティッシュコロンビア大学の教授で核軍縮問題に取り組んだ著名な研究者、マイケル・D・ウォレス氏が、1979年に発表した研究「軍拡競争とエスカレーション:いくつかの新しいエビデンス」です。「軍拡競争」が、「重大な紛争」を「全面戦争」へとエスカレーションさせる確率を大きく高めることを、1816年~1965年の150年間という歴史的スパンで、大国間のデータで立証しています。その結論をここで紹介します。

 「軍拡競争を先行させる紛争は28件中23件(82%)で戦争にエスカレートしたのに対し、軍拡競争を先行させない紛争は71件中わずか3件(4%)しか戦争に至らなかった」

 軍拡競争が何と82%の確率で戦争につながった。軍事的抑止力の強化が平和をもたらさず、戦争への道だということは、150年間の人類の歴史が証明しているというのが、この研究の結果でした。

 ウォレス教授の研究は、この分野の古典的研究として知られ、その後、さまざまな批判や論争が行われてきました。

 それらの論争を総括したのが、1997年、オーストラリア国立大学・平和研究センターのスーザン・G・サンプル氏の研究――「軍拡競争と紛争のエスカレーション:論争の解決」です。この研究では、論争を総括して、ウォレス教授が提起した命題は、どんな基準や紛争をもとに検証しても、「データによって支持される」として、つぎのような結論をのべています。

 「導き出される不可避の結論は、軍備増強を継続している2国が、紛争で対立した場合、軍拡競争に関与していない紛争国同士よりも、最終的に互いに戦争状態に陥る可能性がはるかに高いということである」

 これが、この意義ある研究の到達点のようです。

「日米同盟の抑止力強化」の10年余--平和でなく緊張激化につながった

 志位 第三に、日本の現実はどうでしょうか。

 自民党政権は、2014年に集団的自衛権行使容認の閣議決定を強行し、2015年に安保法制を強行し、22年に「安保3文書」の策定を強行し、それにもとづいて大軍拡を行っています。それでは、これをやってきて、「日本をとりまく安全保障環境」はよくなったのか。

 政府の「防衛白書」に見る日本の安全保障環境の評価の変遷を紹介します。

 2014年版は「一層厳しさを増している」と記述されています。15年版、16年版、17年版、18年版は、同じ表現が続きます。

 19年版では「不確実性が増している」と記述されています。20年版、21年版、22年版は、同じ表現が続きます。

 そして、23年版では、とうとう「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境」との記述になりました。この評価はいまも続いています。

 何のことはない。「日米同盟の抑止力の強化」に取り組んだこの10年余の結果は、平和と安定に向かったのではない、緊張の激化に向かったことを、政府自身が認めているではありませんか。

 軍事的抑止力の強化の先に平和は訪れません。それは戦争への道であるということは、データと事実が証明していることではないでしょうか。

 酒巻 抑止力の強化が、平和をどんどん遠ざけて、戦争の危険を高めているということが、本当によくわかりました。

Q9 そもそも「抑止」とはどういうことでしょうか?

抑止の本質は恐怖--恐怖対恐怖、「安全保障のジレンマ」に落ち込む

 酒巻 9番目の質問です。そもそも「抑止」とはどういうことでしょうか?

 志位 そもそも論ですね。「抑止」というのは、日本語では、「抑えて、止める」と表記しています。そうしますと受動的・防衛的な感じがしますが、英語ではデターランス(deterrence)と言い、その語源はラテン語deterrereに由来し、「怖がらせる」「恐れさせる」という意味があるんです。つまり相手に恐怖を与えることで相手を抑えつける。これが抑止の本質なのです。

 このことは軍事の専門家の間では常識に属することです。

 米国防総省の『軍事関連用語辞典』(2001年版)は、「抑止」について、「恐怖によって行動を阻止すること」としています。

 もう一つ、防衛大学校教授の岩田修一郎氏は、『日本の防衛政策と抑止』と題する論文のなかで、「抑止の要件の一つは、敵対国に対する威嚇であり、……抑止の本質は、昔も今も恐怖である」とのべています。

 相手から恐怖を与えられることを好む指導者など、この世の中にいません。恐怖が与えられたら、恐怖で応えようとする場合が多いでしょう。つまり、恐怖対恐怖――軍事対軍事の悪循環に陥ってしまう。このことを「安全保障のジレンマ」というんですけども、そういう軍拡競争に落ち込んでしまう。そして軍拡競争に落ち込んでしまったら、戦争のリスクを高めることになるのは先ほどお話しした通りです。抑止力強化の先には平和は訪れない。それは戦争への道だということを重ねて強調したいと思います。

 酒巻 抑止は恐怖という本質をよく捉えることが大事だなと思いました。

Q10 「日米同盟の抑止力、対処力強化」ということで実際にやられていることはどういうことでしょうか?

米国が先制攻撃を開始したさいに、自衛隊が無法な戦争に参加する仕組みをつくる

 酒巻 10番目の質問です。「日米同盟の抑止力、対処力強化」ということで、実際にやられていることはどういうことなんでしょうか。

 志位 実際にやられていること、その中身をつかむことが非常に重要です。政府の文書では、「自衛隊の抑止力」でなく、必ず「日米同盟の抑止力」と言っているところが重要なところです。

 冒頭にお話しした長射程ミサイル――敵基地攻撃ミサイルの配備が、一体何のために行われているのか。政府の「安保3文書」を見ますと、米国の「統合防空ミサイル防衛」――IAMDに自衛隊が参加することが、敵基地攻撃能力を持つ目的の一つだと明記されています。IAMDって聞いたことありますか?

 酒巻 はい。聞いたことあります。

 志位 2023年3月の民青同盟の学習会(パンフレット『この国を「戦争国家」にしていいのか』所収)で詳しくお話ししましたね。

 IAMDというのは、アメリカが同盟国を動員して地球的規模で張りめぐらしているシステムで、その中身は、相手国から飛んでくるミサイルを撃ち落とす「ミサイル防衛」と、相手国に対して攻撃を行う「敵基地攻撃」を組み合わせたものです。「ミサイル防衛」プラス「敵基地攻撃」――「守り」と「攻め」を一体にしたシステムがIAMDです。アメリカが地球的規模で軍事的覇権を打ち立てるためにやっていることで、日本の防衛とはまったく関係がない話です。

 きわめて重大なことは、アメリカが「統合防空ミサイル防衛」(IAMD)の基本原則として、先制攻撃を行う――相手から攻撃される前に攻撃することを、公然と選択肢にしていることです。ここに持ってきましたが、そのことを私は、2023年の国会で、米統合参謀本部が作成した2017年の文書を元に明らかにしました。このなかに先制攻撃を選択肢とすることがハッキリ書いてあります。

 その後の米国の方針がどうなったのかを、今回、調べてみました。そうしましたら、米国防総省でIAMDを担当するジョン・プラム国防次官補(宇宙政策担当・当時)が、2024年4月14日に行っている書面発言にぶつかりました。

 この書面発言は、アメリカのIAMDが先制攻撃をより重視する方向に傾斜していることを語っています。ジョン・プラム次官補はこの書面発言を行う直前に行われた、(2024年)4月1日のイスラエルによるイラン大使館攻撃に対する4月13~14日のイランの反撃について語っています。イランからイスラエルに対して300発以上の報復攻撃が行われた。そのときにアメリカとイスラエルなどのIAMDは、「驚異的な成果」をあげて、イランの攻撃をことごとく打ち破った、こう胸を張ったうえで、同時に、このシステムには「落とし穴」があることが明らかになったとのべています。

 どういうことかというと、イランが発射したドローンは1発5万ドルという安い値段であるのに対して、それを撃ち落とすミサイルが1発数百万ドルもの高価なものだったというのです。これではあまりに費用対効果が悪い。プラム次官補は、この「落とし穴」を回避する方法として、つぎのように強調しています。

 「迎撃ベースのアプローチに加え、『包括的ミサイル撃破』が必要だ。もっと率直に言えば、敵が成功裏に使用している、増え続ける攻撃ミサイルを阻止するためには、敵が発射する前の発射(先制攻撃)・発射した後の発射のあらゆる手段が使われる」

 このような言い方で、先制攻撃をより重視する方向に傾斜していく方針が明記されています。ドローンなどの安い値段のミサイルに対処するためには、飛んでくるものを撃ち落とすのでは費用対効果が悪い。だったらこちらから先制攻撃をやって、敵のミサイルを一気にたたきつぶしてしまおう。それが一番効率的なやり方だ。そういう方針が2024年4月にのべられていた。今回、アメリカとイスラエルがイランに対して行った先制攻撃のシナリオがここにあるのです。

 いまお話ししたことをまとめますと、アメリカがイラン攻撃のような先制攻撃の戦争に乗り出したさいに、米軍の指揮統制下に置かれた自衛隊も一緒になって無法な先制攻撃に参加する仕組みをつくる。ここに「日米同盟の抑止力の強化」と言われていることの恐るべき危険があるということを強く告発したいと思います。

 酒巻 費用対効果が悪いから先制攻撃をするっていう話は本当にちょっと衝撃的です。

 志位 ひどい話ですね。

 酒巻 本当ですね。同時に、いまお話ししていただいた、「日米同盟の抑止力の強化」の恐るべき危険性を告発していくということが大事になるなと感じました。

Q11 「抑止力強化」の名目でやられている大軍拡は暮らしと両立できるでしょうか?

GDP比5%の軍事費なら、国民1人当たり28万円、暮らしと絶対に両立しない

 酒巻 11番目の質問です。「抑止力強化」の名目でやられている大軍拡は暮らしと両立できるのでしょうか。

 志位 これは絶対に両立しません。すでに軍拡増税が始まりましたが、トランプ政権は日本を含む同盟国に対して、「GDP比3・5%の軍事費、関連経費を含めて最大5%」を求めています。

 先日の国会で、日本共産党の辰巳孝太郎議員の質問に対して、政府はGDP比3・5%になった場合は軍事費は24兆円、5%になったら34兆円になると答弁しました。ただ、24兆円とか34兆円とかいっても、あまりに金額が大きすぎてピンときませんよね。だいたい「兆」なんてお金、さわったことも見たこともない。

パネル15

 そこで国民1人当たりに計算してみました。それがこの〔パネル15〕です。

 26年度予算の一般会計の総額は122・3兆円です。これは日本の人口1人当たりに換算すると約98万円になります。

 この円グラフのうち、外側の円グラフが26年度予算の内訳です。国民1人当たりにしますと、軍事費は26年度予算で7万円にまで膨らみ、教育費の4万円を大きく上回っています。すでにこうなっているわけですけれども、軍事費がGDP比3・5%になれば、1人当たり19万円になります。そして、この内側の円グラフのように軍事費を5%にしたら1人当たり28万円にもなってしまいます。1人当たり28万円というのは、予算規模が変わらなければ、現在、医療、介護、少子化、教育に充てられているお金を全部のみ込んでもまだ足らない。これらが全部ゼロになってもまだ足らない。そんなお金が軍事費にのみ込まれることになります。仮にこれを消費税増税で賄うと、単純計算しますと、税率は17%になります。

 このように、暮らしの予算の大幅削減か、庶民大増税か、国債大増発による財政破綻か。どちらに行っても暮らしも経済もめちゃくちゃになることは、絶対に避けられないことは明らかです。

 酒巻 グラフにするとすごく分かりやすいです。一気に身近な問題として捉えることができました。絶対に両立しないということが見えたと思います。

Q12 ところで「抑止」が破れることはないのでしょうか?

政府は「抑止が破れる」ことを想定して、戦争の準備を進めている

 酒巻 12番目の質問です。ところで、そうした「抑止」が破れるということはないのでしょうか?

 志位 これはとても大事な質問です。さきほど軍拡競争が高い確率で戦争につながるというデータを紹介しました。これは「抑止が破れる」ことが大いにあり得るということを示すものです。実は、そのことは、政府自身が認めていることなんです。

 「安保3文書」の中の「国家防衛戦略」では、「抑止が破れ、我が国への侵攻が生起した場合」を想定して、それへの対処をのべています。だいたい、政府は必ず「抑止力、対処力の強化」と言います。「対処力」というのは、「抑止が破れた場合」に、それに「対処」するという話なんです。「抑止が破れる」――戦争が起こるということは、最初から想定ずみなんです。そして、「抑止力」というのは、それが強ければ強いほど、破れた場合の被害が大きいことになります。

 そして、政府は、「抑止が破れた場合」にどう具体的に「対処」するか。つぎのようなメニューを並べ、実行に移しています。

 「継戦能力の強化」――「継戦能力」というのは長期にわたって戦い続ける力のことです。高市首相は、テレビの番組で、「戦闘員にどこをゴールにして戦わせますか」と問われたのに対して、「最後まで戦っていただく」と言いました。つまり、どんなに長期になっても戦争を戦いぬくのだと宣言した。しかし、ちょっと考えればわかることですが、戦闘機やミサイルや弾薬はいくら用意したとしても、補給路を断たれたら日本はどうなりますか。エネルギー自給率も食料自給率もこんなに低い日本で、国民はどう生き延びればいいのか。日本で長期戦を戦うこと自体が荒唐無稽な話なのです。

 「自衛隊基地強靱(きょうじん)化」――戦争になっても自衛隊が戦い続けられるように、全国の自衛隊基地の司令部の地下化をはかるなど「強靱化」を進める計画が始まっています。27年度までの5年間で4兆円もの予算を使うといいます。

パネル18

2024年度陸上自衛隊フォーラム資料から

 〔パネル18〕をご覧ください。恐ろしい絵です。これは陸上自衛隊が作成したイメージ図です。日本全土を他国とのミサイルの撃ち合いに使って、日本全土が戦場になることを想定した恐ろしいものです。ミサイルがどんどん撃ち込まれ、こちらからもどんどん撃ち返す。文字通り修羅場の戦場になっています。こういう状態になって、自衛隊の司令部が地下のシェルターに逃れて生き延びても、住民はどこに逃げればいいのか。逃げる先などないですよ。国民全体を対象にしたシェルターをつくるなどという話も持ち上がっていますが、これもまったく荒唐無稽なことだと思います。

 「自衛隊員葬式準備」――これは「しんぶん赤旗」のスクープで明らかになったことですが、集団的自衛権を発動しての戦争に自衛隊が参戦した時に、自衛隊員が戦死した場合に備えて、陸上自衛隊と葬祭業の業界団体が協力協定を結んでいた。かつて、イラク戦争に陸上自衛隊が派遣された当時、陸自トップの陸上幕僚長だった人物が、後に秘密裏に「約10個近く棺(ひつぎ)を準備した」と証言しました。ところが、今度は葬祭業の業界団体との協力協定という話です。これはどういうことかというと、自衛隊の中では対応できないほどの多数の戦死者を想定しているということです。

 「住民避難計画」――「台湾有事」を念頭に置いて、沖縄県の先島諸島の5市町村、石垣市、宮古島市、竹富町、与那国町、多良間村の住民ら11万2千人を、九州各県と山口県の8県などに疎開させる。この現代に疎開だなんてとんでもないことです。これ自体が実施不可能なことですが、それに加えて、米軍基地が集中する沖縄本島はどうなるか。沖縄本島は「屋内避難」とされています。九州や山口県の避難先が攻撃されたらどうするのか。そうしたことは全く考慮されていない。これも荒唐無稽の極みです。どれもこれも荒唐無稽な話です。

 私は、ここには、大きな破綻があると思います。つまり、「抑止力強化は平和を守るためのもの」と言って大軍拡を進めながら、実際は、「抑止が破れる」ことを想定して戦争の準備を進めている。これは全くの自己矛盾じゃないですか。

 酒巻 そうですね。矛盾していると思います。

 志位 これは、「抑止力強化は平和を守るためのもの」という言い分が、大ウソだということを自ら証明しているものだと思います。

 酒巻 抑止が破られた時にどうするかを、ここまで想定しているというのは本当に驚きました。これは大ウソだということを伝えていくことが大事だと思います。

Q13 「抑止力強化」の道を進めば、核兵器に頼るということになるのではありませんか?

世界では「核抑止」論を乗り越える 新しい流れが生まれている

 酒巻 13番目の質問です。「抑止力強化」の道を進めば、核兵器に頼るということになるのではありませんか?

 志位 その通りです。軍事力による抑止というのは、軍事対軍事の果てしないエスカレーションの議論をもたらし、最後は核兵器に頼るという話になってくる。核保有国を「抑止」するには、日本も核保有が必要だ、あるいは「非核三原則」を破棄して、アメリカの核持ち込みを公然と認めよ、こういう議論になってくる。現に、昨年12月、「官邸幹部」が「日本は核兵器を保有すべきだ」と発言して、大問題になりました。

 ここで強調したいのは、こうした「核による抑止」という議論を乗り越える新しい流れが世界で生まれているということです。「核抑止」を禁止した核兵器禁止条約の成立はその大きな成果です。

 核兵器禁止条約は、被爆者のみなさんが先頭に立って訴えてきた核兵器の非人道性を告発する取り組みが、大きな実を結んだものでした。「核抑止」論というのは、いざという時には核兵器使用のボタンを押すことを前提にした議論です。いざという時になってもボタンを押さなかったら「抑止」になりません。言い換えますと、いざという時には広島・長崎のような非人道的な惨禍を引き起こすこともためらわないという議論が、「核抑止」論なんです。そうしますと、核兵器の非人道性を告発すること、――これは日本国民だったらみんな一致することですが――、そのことと「核抑止」論は決して両立しないということになります。

 同時に、私たちが国会でこの問題を提起しますと、日本政府は何と言うか。「核兵器をめぐっても日本を取り巻く安全保障環境は悪い」という言い訳を持ち出します。核兵器を持った国がまわりにいるではないかというわけです。しかし、そうした安全保障の観点からも、「核抑止」論が合理性を持つでしょうか。

 2025年に開催された核兵器禁止条約第3回締約国会議の報告書は、この観点からの「核抑止」論批判を行っています。いかなる立場に立つ国であれ、報告書がのべているように「核兵器はすべての国家の安全保障に対する深刻かつ根本的な脅威」であることは誰も否定することはできません。そして、この報告書が指摘しているように、「核抑止が失敗する可能性があるという事実は疑いの余地がない」。核抑止が破れる可能性を誰も否定することはできません。

 たとえば、1962年、キューバ危機が起こりました。この時、全面核戦争の文字通りの寸前まで世界がいったんです。最後にギリギリのところで、米国のケネディ大統領とソ連のフルシチョフ首相が紙一重のところで退いて、全面核戦争を回避したのですけれども、あと一歩で人類が破滅という事態となった。つまり、私たちが今ここに存在すること自体が幸運にすぎないわけです。

 このように「核抑止」論は、核兵器の非人道性の観点からも、安全保障の観点からも全く合理性を持ちません。それはいま世界で乗り越えられつつある議論だということを言いたいのです。私は、「核抑止」論の否定からさらにすすんで、軍事力による「抑止」論そのものの否定に前進するときだということを、訴えたいと思います。

相手に「恐怖」を与えるのではなく、「安心」を与える外交こそ

 酒巻 「抑止力強化」は平和につながるものではないということが、これまでいろいろな角度から明らかにされてきたと思うのですが、ここまでの話のまとめをお願いしたいと思います。

 志位 はい。ここまでのまとめをしてみますと――、

 第一に、「抑止力強化」は、軍拡競争をもたらし、戦争リスクを高めます。

 第二に、「日米同盟の抑止力強化」の名で行われていることは、米軍が無法な先制攻撃の戦争に乗り出したときに、自衛隊も一緒に無法な戦争を行うということです。

 第三に、「抑止力強化」の名目での大軍拡は、暮らしと絶対に両立しません。

 第四に、「抑止」は破れることがあり、政府はそれを想定した戦争準備計画を進めています。

 第五に、「抑止力強化」の道を進めば、核兵器に頼ることになりますが、そうした「核抑止」論を乗り越える新しい流れが世界で生まれています。

 このようにあらゆる角度から見て、「抑止力強化」が平和をつくるというのは大ウソです。相手に「恐怖」を与えるのではなくて、「安心」を与える外交こそ必要です。日本はそのための最良の資産である憲法9条を持っています。ですから、世界で大国を中心にして深刻な軍拡競争が起こっているいまこそ、日本が憲法9条を持つ国として、世界に向かって軍拡から軍縮に切り替えようというイニシアチブを発揮するべきではないでしょうか。

 酒巻 憲法9条を持つ日本の本領を発揮すべき時だということですね。

Q14 外交の力で平和をつくれたら良いと思いますが、現実的に可能なのでしょうか?

「東アジア平和提言」--「対話と包摂で平和をつくる」が根本精神

 酒巻 14番目の質問です。外交の力で平和をつくれたら良いと思いますが、現実的に可能なのでしょうか。

 志位 私は、素晴らしい成功例が身近にあるということを言いたいと思います。東南アジア諸国連合――ASEANの経験です。ASEANは、1976年に結んだ東南アジア友好協力条約(TAC)――武力の行使をしない、紛争は話し合いで解決することを誓い合った条約です――、この条約を土台にした粘り強い対話の努力を続けて、半世紀前には「分断と敵対」が支配していたこの地域を、「平和と協力」の地域へと劇的に変えました。私自身、繰り返しこの地域を訪問して、その成功の秘訣(ひけつ)としてつぎのような点が大切だと学んできました。

 第一は、良い“対話の習慣”を育んできたということです。インドネシアのジャカルタにあるASEAN本部を訪問したさいに、私が聞いて驚いたのは、ASEANでは域内で年間1500もの会合を開いているというのです。

 酒巻 すごい数ですね。

 志位 ええ。すごい数です。年間1500回といったら、1日4回、5回と開いていることになりますね。いろいろなレベルで会合をやっている。それだけの密度で会合を開いていたら、相互理解、信頼関係も進みますよね。そうなれば紛争が起こっても戦争にならない。軍事的抑止力に頼らず、徹底した対話で平和をつくるという安全保障政策をとっているのです。

 第二は、「ASEANの中心性」――自主独立と団結を大切にしてきたということです。私が、ASEAN本部での対話で、「いまアメリカと中国が対立しているなかで、ASEANはどういう対応をしているのですか」と聞きました。そうしましたら、先方から返ってきた答えは、「ASEANは大国の関与を歓迎します。しかし、一方の側に立つことはしません。アメリカの側にも立たないし、中国の側にも立たない。自主独立と中立を貫きます」ということでした。ここにもASEANの成功の秘訣ありと感じました。

 第三は、こうした平和協力の流れをASEANの域外にも広げてきたことです。とくにいま力を入れているのは、東アジアサミット(EAS)――ASEANの11の国プラス日本、中国、アメリカなど8カ国で構成するサミットを発展させて、東アジアの全体をASEANのような戦争の心配のない地域に変える、「ASEANインド太平洋構想」――AOIPの実現に向けた努力です。この構想の一番素晴らしいところは、この地域のあれこれの国を排除するという考え方をとらないことにあります。中国も排除しないし、アメリカも排除しない。地域に関係する全ての国を包み込む――包摂する平和の枠組みをつくっていこうというところにあると思います。

 私が、ASEANの国ぐにを訪問してすごいと実感したことを、もう一つみなさんにお伝えしたいと思います。それは世界のどの国とも対立や敵対の関係にはない、どの国とも友好関係をつくっているということです。たとえばインドネシアの外交戦略のスローガンは、「ミリオン・フレンズ、ゼロ・エネミー」――「無数の友を持ち、敵は持たない」だと聞きました。インドネシアは、このスローガンの通りの姿勢を貫いています。

 日本共産党は、2024年4月に、「東アジア平和提言」を発表し、ASEANと協力して、「ASEANインド太平洋構想」――AOIPの実現を共通の目標にすえ、東アジアサミットを活用・発展させて、東アジアを戦争の心配のない平和な地域にしていくための憲法9条を生かした外交を進めようと提案し、その実現のために国内外で努力してきました。その根本精神を一言で言いますと、「対話と包摂で平和をつくる」ということです。戦争ではなくて対話、排除ではなくて包摂で平和をつくるという考えです。この道こそ、私は日本と東アジアに平和をつくる一番確かな道だと確信しています。

 酒巻 ありがとうございます。敵をつくるのでもなく、排除するのでもなく、対話と包摂で平和をつくるっていうのは、すごく大事だなと思いました。実際に外交で平和をつくれるっていうことが、ASEANの実際の取り組みからすごく具体的に見えてきて、実現できるっていうことがよくつかめました。

 志位 ここで休憩を取りたいと思いますが、ここまでどうですか。

 小泉 いま世界中で戦争が起きている深刻な状況だと思いますが、同時に、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃に反対する各国政府の行動や市民社会の運動が発展していること、「核抑止」論を乗り越える流れも発展してきていることなど、前向きな側面もよく捉えて自信にしていって、一刻も早く平和な国際秩序を回復して、さらに発展させていくということで、草の根からもたたかいを広げて頑張っていきたいと思いました。

 酒巻 私は、志位さんがトコトン「抑止力」について話していただいたことが本当に印象に残っていて、「抑止力強化」では平和をつくれないっていうことが本当にリアルに見えてきたなと思いました。同時に、そことの対比で、外交によって平和をつくることができるということが、いかに重要で現実的な方向なのかというのが本当に見えてきて、たくさん疑問とか不安に答える内容になったなと思って、本当に良かったなと思いました。対話の中で大いに語っていきたいなというふうに感じました。

 (1回目の休憩)

 ((下)につづく)