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2026年4月16日

9条考える 戦争と人類 共存できず

広島・長崎の体験 憲法に刻む

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(写真)核兵器禁止条約の採択が決まった歓喜の中で握手を交わすサーロー節子さん(中央)と藤森俊希さん(その左)=2017年7月7日、ニューヨーク(池田晋撮影)

 憲法9条には広島・長崎での人類初の核戦争の体験が刻み込まれています。

 日本国憲法が公布された1946年11月、内閣法制局が『新憲法の解説』を発行しました。その「第二章 戦争の放棄」には次の一節があります。

 「原子爆彈の出現は、戦争の可能性を擴大(かくだい)するか、又は逆に戦争の原因を終熄(しゅうそく)せしめるかの重大段階に到達した」「識者は、まづ文明が戦争を抹殺しなければ、やがて戦争が文明を抹殺するであらうと眞劍(しんけん)に憂へてゐる」

 まさに核時代に突入する中で、戦争と人類は共存できないという認識が9条成立の背景にあったのです。

核戦争を警告

 46年3月20日、枢密院で幣原(しではら)喜重郎首相は次のように述べていました。

 幣原は、核戦争で数百万の人間が一瞬にして殺されるときが来ると警告し、諸国がいつかは憲法9条が示す大道についてくるとの展望を示したのです。こうした発言は、日本国憲法制定(明治憲法改正)の審議の過程でたびたび出てきます。

 「武力による威嚇、武力の行使」を原則禁止した国連憲章は、第2次大戦末期の45年4~6月に議論し決定されました。これに対し日本国憲法(46年11月公布)は「戦力不保持」にまで飛躍を遂げています。そこには、国連憲章の制定後に起きた、45年8月の広島・長崎への人類初の原爆投下という経験が刻まれていました。

 著名な憲法学者の故・長谷川正安名古屋大学名誉教授は2006年1月の本紙インタビューに次のように語りました。

 「第二次世界大戦は、人類史上はじめての核戦争となりました。ポツダム宣言や国連憲章を通じて反戦平和の問題、人権と民主主義の問題が国際的に大きくあったのですが、その前提として核兵器の問題があらわれたのです。日本は核戦争の最初の被害者となりました。

 世界戦争を第二次世界大戦で終わりにできなければ、人類が滅亡するという問題が提起されています。九条はその意味で、通常の戦争の問題だけでなく、核戦争を絶対に阻止したいという願望を強くあらわしており、これを世界の人々に呼びかけた――九条の大きな世界史的意義はここにある」

禁止条約へと

 核兵器禁止条約が国連で締結(15年1月、122カ国)され、発効(21年1月22日)するに至っています(99カ国が批准)。この流れの背景には、「ヒバクシャ」による核兵器の非人道性の告発の長い努力、科学者らによる核戦争がもたらす人類破滅の危機の警告、植民地支配の崩壊による世界政治の構造変化と市民社会の活動の影響力拡大など、巨大な歴史的変化があります。そのさきがけとして、戦争そのものを全面的に否定した9条2項の人類史的重みが、改めて浮かびあがります。

非核三原則見直し狙う 高市自民党政権の逆行

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(写真)北海道原水協の「6・9行動」でアピールする参加者=6日、札幌市

 ところが自民党政権は、核兵器禁止条約への参加を拒否し続ける一方、高市早苗首相のもとで非核三原則(核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませず)の「見直し」に着手する構えです。高市氏は自身の編著『国力研究』で、現行の安保3文書が閣議決定(22年12月)される前に、「持ち込ませず」は米国の核抑止の「邪魔になる」として「非核三原則を堅持する」との記述の削除を要請したと明かしています。この中で高市首相は「『守るのは国民の命か、非核三原則か』という判断をせまられる究極の事態」では、米国の拡大抑止の提供を期待するなら、三原則の堅持は「現実的でない」などと述べています。しかし、核を使うことを前提に、「核の脅しに核の脅しで対抗する」やり方は、まさに破滅の危険に国民を巻き込むものです。「現実的でない」のは高市首相の方です。

問題発言続々

 首相は、今年3月14日の防衛大学校の卒業式でも、3文書改定を巡り「あらゆる選択肢を排除せず検討し、防衛力を抜本的に強化する」と発言しました。

 昨年12月には、首相官邸で安全保障政策を担当する政府高官の一人が「日本は(核を)持つべきだ」と記者団に向かって発言。「たがが外れた」としか言いようのない動きに厳しい批判が起こりましたが、責任も明確にせず、発言も撤回していません。唯一の戦争被爆国の政権が、核廃絶への逆流を強めながら、9条破壊・9条改憲の動きを進める異常な流れが強まっています。

 国際的にも深刻な事態が進行しています。ウクライナ侵略(22年2月)に際してのロシアの核先制使用の威嚇は世界を震撼(しんかん)させました。核を相互に保有することで核戦争が阻止され平和が保たれるという「核抑止」(相互確証破壊戦略)は明らかに破綻したのです。同戦略は、あくまで合理的に行動する人間像を前提にしたモデルであり、「ロシアの存在しない世界など無意味」(プーチン大統領)とうそぶき、自国民の滅亡も辞さない権力者の出現で、「核による平和」の論理が幻想にすぎないことが一層鮮明になり、緊張が続いています。

廃絶へ進む時

 他方で、そもそも核兵器禁止条約が、核の非人道性を背景に「核の使用」とともに「使用の威嚇」をも禁止したことは、文字通り「核抑止」論の法的・倫理的破綻を明確にしています。

 今こそ世界は核兵器の廃絶に向かって進むときです。日本は憲法9条2項に込められた核戦争阻止の理念を掲げ、世界の協力と連帯を広げる役割を果たすときです。

幣原首相の帝国憲法改正案「説明要旨」

 「原子爆弾ノ発明ハ世ノ主戦論者ニ反省ヲ促シタノデアルガ、今後ハ更(さら)ニ之ニ幾十倍幾百倍スル破壊的武器モ発明サレルカモシレナイ」

 「他日新タナル兵器ノ偉力ニ依リ短時間ニ交戦国ノ大小都市悉(ことごと)ク灰燼(かいじん)ニ帰シ数百万ノ住民ガ一朝塵殺セラルル惨状ヲ見ルニ至ラバ、列国ハ漸ク目醒メテ戦争ノ抛棄(ほうき)ヲ真剣ニ考エルコトトナルデアラウ」