差別や偏見を助長し社会の分断を招くのではないか―。茨城県が「不法就労者」通報制度をつくろうとしている動きに懸念の声が広がっています▼県が市民からの情報をもとに不法就労外国人の調査を行い、警察が検挙した場合には情報提供者に報奨金を支払うという制度。不法就労の外国人かどうかは見た目では判断できず、在留カードなどの確認が欠かせません。県は「情報は、事業者に関するものに限定」するとしていますが、それでも臆測や偏見にもとづく通報が相次ぐ恐れがあります▼市民同士が監視し合う仕組みはこれまでにも。2012年12月に第2次安倍政権が発足した後、生活保護たたきが激化。兵庫県の小野市はさっそく翌年に「不正受給」を密告させる条例を施行させました▼生活保護の「適正化」として密告を促す「ホットライン」を設置する自治体は各地に拡大しました。14年以降、ホットラインを設けている北海道函館市では「不正受給対策グループ」をつくり、警察官のOBも配置しています▼市民からの通報は毎年200件程度あり、多くは居住実態や車の保有に関するものです。実際に口頭指導などの処分を受けた事例は2割ほどで、8割は誤報だといいます▼昨年参院選の頃から急激に広がった排外的な風潮。高市首相は「スパイ防止法」制定など監視社会の強化に傾斜しています。そんななかで茨城県が実施すれば、他の自治体にも波及しかねません。人権を尊重する社会を。いまこそ、声を上げるときです。
2026年3月9日

