2026年度予算案の年度内成立を目指す政府・与党は、“異例づくし”の乱暴な国会運営を強行しています。質疑時間が不十分なのはもちろんですが、重大なのは高市早苗首相の答弁姿勢です。衆院予算委員会では、首相への質問に他の閣僚が“肩代わり”して答弁し、首相が事実上答弁を拒否するケースが頻発する異例の事態となっています。
「総理に聞いております」。3日間行われた衆院予算委の基本的質疑では、各党の質問者からたびたびこうした声が上がりました。高市首相に質問しても、答弁に立たない場面が相次いだからです。
象徴的だったのは2日の日本共産党の田村智子委員長の質問です。田村氏は、米国とイスラエルによる対イラン先制攻撃は国連憲章や国際法に違反すると述べ、攻撃中止を求めるべきだと指摘し、首相の見解をただしました。しかし首相は答弁に立とうとせず、坂本哲志予算委員長も田村氏の「総理に聞いている」という訴えを無視し、茂木敏充外相を指名。まるで首相を“守る壁”を築くような対応でした。
最終的に答弁に立った高市首相は「法的評価は差し控えたい」と述べるにとどめ、先制攻撃への認識や、攻撃中止を求めるべきかどうかについて自ら語ることはありませんでした。
基本的質疑初日の2月27日、高市首相の答弁は計69回にとどまりました。昨年の論戦初日(11月7日)の115回から約4割減です。続く3月2日は46回、3日は61回で、昨年の2日目(11月10日)の125回、3日目(11月11日)の76回と比べても明らかに少ない答弁です。
首相に答えさせず、他の閣僚が代わって答弁する手法に、各党の質問者からも「時間稼ぎはやめてほしい」(中道改革連合の後藤祐一議員)、「要求大臣は総理だけだ」(参政党の和田政宗議員)など、憤りの声が次々に上がりました。
論戦から逃げる高市首相
「謙虚に」どこへ 強権政治
高市首相は常に論戦から逃げ続けています。
今年1月23日には、通常国会で一切論戦を行わないまま「党利党略」「自己都合」の衆院解散を強行しました。総選挙期間中の演説では「もう高市内閣はヘロヘロだった。予算委員長だって野党だし、もう大臣がいくら手を挙げても私にばかり当たる」と不満を漏らし、唯一の党首討論だったNHK「日曜討論」への出席も直前で取りやめました。そして、この間の答弁拒否です。
しかし、予算委は単に予算を審議するだけの場ではありません。政府のあらゆる政策を首相に直接ただす、国会の中心的舞台です。議院内閣制のもとで政府の最終責任を負う首相が、政治判断を国会で説明するのは当然の責務です。
総選挙後の記者会見で高市首相は「私自身が討論番組を逃げる理由は何もない」などと胸を張りました。首相就任後の会見でも「さまざまな声に耳を傾けながら、謙虚に、しかし大胆に政権運営に当たる」「私が大きな権力、『白紙委任状』を得たと言う方もいる。そのようなつもりは全くない」などと述べていました。
ところが、いま高市政権が進めているのは、巨大与党という「数の力」に驕(おご)る強権政治そのものです。
予算案の年度内成立に固執する高市首相の意をくんだ与党は、衆院予算委員長の職権で次々に審議日程を決定。予算案採決の前提となる中央公聴会を10日に開き、13日には審議を打ち切って衆院通過させる日程を強行しようとしています。
こんな異常な国会運営がまかり通れば、議会制民主主義の根幹が揺らぐことになります。「逃げない」「謙虚に」と言うのであれば、採決前提の日程は白紙撤回させ、徹底審議に応じ、自ら野党の質問に丁寧に答えるべきです。

