子どもは真実を知らない方が幸せだ。そんな思い込みからくる“優しさ”が、実は子どもを苦しめていました▼親やきょうだいを自殺で亡くした自死遺児の全国調査が進められています。量的な調査としての目標は500人。その中から50人にインタビューをする予定です。それぞれの体験や思いを集めて、どんな支援が必要なのか明らかにするのが目的です▼プロジェクトを進める3人は、いずれも自死遺児。その一人、豊福麻記さんは5歳の時に父親を亡くしました。死因が自殺だと知ったのは、母親が亡くなってから。すでに30年の月日がたっていました▼自分は真実を伝えるに値しない人間だったのか。とてつもない衝撃を受けました。父との別れを別の形で再び体験せざるを得ず、母と一緒にできたはずの「喪の共同作業」を一人でしなければなりませんでした。そのために事実を知りたいと奔走しましたが、“本当のこと”に行き着くまでの道のりは平たんではありませんでした▼死をきちんと受け止めながら、その後の人生を自分なりに歩めるようサポートしてくれる社会であってほしい。「まさか自分の経験が役立つなんて」という当事者の生の声を丁寧につむいで、サポートブックを作りたいと願っています▼「今も人前に出るのは苦手」と豊福さんは言います。それでもかつての自死遺児として、今まさに苦しんでいる自死遺児にどうしても伝えたいことがあります。「あなたは一人じゃない」。思いを形にする挑戦は続きます。
2026年3月7日

