日本共産党の志位和夫議長と鳩山由紀夫元首相がインターネット番組「UIチャンネル」で、米国、イスラエルのイラン攻撃や抑止力論の批判などからマルクスの『資本論』についてまで、多様な話題で対談(2日)しました。そのやりとりの要旨を紹介します。
(写真)鳩山由紀夫氏
(写真)志位和夫議長
イラン攻撃の即時中止を
鳩山 米国、イスラエルがイランを攻撃し、ハメネイ師が殺された。とんでもないことが起こった。どのように考えていますか。
志位 トランプ政権がイスラエルと一緒にやった行動は、誰がどう見ても国連憲章と国際法に反するとんでもない暴挙であり、強く非難したい。しかも核問題で交渉中だった。
鳩山 オマーンが仲介に入って。
志位 そうです。交渉を中断、破壊し、一方的な武力行使を行った。しかも最高指導者を直接米軍が殺害した。ここまでの暴挙というのは、戦後のアメリカの歴史の中でも過去にないことじゃないでしょうか。
鳩山 そうですね。ないと思いますね。
志位 法の支配を無視した暴挙は許されないという声を国際社会が強くあげていかなければなりません。
鳩山 絶対にそうですよね。今回の先制攻撃は、国際社会にイランが復帰することを阻むことに目的があったのではないでしょうか。
志位 そうですね。昨年6月に米国がイラン攻撃を行ったさいに、トランプ大統領は、「イランの核能力を完全に破壊した」と言った。それならどうしてたった半年余で、イランの核開発は最大の脅威となったといえるのか。つじつまがあいません。トランプ氏の発言はうそだらけです。
鳩山 なるほど。それなら脅威になるわけがない。
志位 しかも攻撃後、イランの体制転換を公然と呼びかけた。無法に無法を重ねるものです。
鳩山 イランでは体制に反対する声もあがっていました。これからイランはどうなるでしょうか。
志位 これまでもイランの体制批判の声があがって、弾圧をやったことがありましたね。今年の1月です。その時に、私たちは弾圧をやるべきではないと表明しました。
しかし、そうしたことを理由に、他国の内政に手を突っ込んで、政権を変えてしまうなど絶対に許されません。そしてこういうやり方が米国の思惑通りに進むとは決して思いません。その国の運命を決めるのは、その国の人民であって、外部から体制を変えることを押し付けることが、まともな結果をうむとは絶対に思いません。
日本は攻撃中止を求めよ
鳩山 日本政府は、イランに自制を求めると言っていますが。
志位 高市首相の答弁でも、イランに自制を求めると。米・イスラエルの攻撃に反対しないでおいて、イランだけに自制を求める。これは話が違う。
鳩山 逆だよね。
志位 逆だよ。まず先制攻撃した米・イスラエルに中止を求めるべきです。
鳩山 ホルムズ海峡の封鎖ということになると、安保法制のときにホルムズ海峡が封鎖されたら存立危機事態になりうるという政府答弁があります。その危険がありますよね。
志位 そうです。これは絶対にダメだと強く言っておきたい。機雷を除去するというのは、武力の行使になる。日本も無法な戦争の当事者になる。絶対にやるべきではありません。米・イスラエルに無法な攻撃をやめ、外交的解決の道に戻れと言い続けるべきです。
鳩山 心配なのは、これがアメリカとイスラエルとイランだけの話にとどまらずに、拡大していきかねないことです。日本は、米国とイスラエルは武力行使するなと世界に訴えるべきですね。
志位 まずそれをやるべきです。それを言えば、事態を外交的な解決に戻していく上で、日本が役割を果たせることになります。
鳩山 たしかにそうですね。
抑止力で平和つくれるか
鳩山 議長は、東南アジアにも行かれて、日本共産党として外交でいろいろな努力をされています。
軍事的な抑止力の強化によって平和というものは築けないんだというところを聞かせてください。
志位 日本政府は「日本は戦後最も厳しい安全保障環境のもとに置かれている」、「日米同盟の抑止力、対処力の強化が必要だ」と繰り返しています。抑止力の3文字で大軍拡も、憲法9条を変えることも合理化しようとしています。そういうなかで、国民のなかにも軍事力強化が必要だという声がありますよね。
鳩山 あるんですよ。結構。
志位 ええ。ですから、軍事的抑止力を強めることが平和につながるのかという問いを、私は、いま真剣に立てて、国民的な議論を起こしていく必要があると思っているんです。
国連事務総長が2025年9月に出した報告書で、世界で起こっている軍拡競争に警鐘を鳴らし、「(軍事力増強は)平和にはつながらない。軍拡競争、そして武力紛争のリスクを高める。エビデンス(証拠)があると言ったんです。
鳩山 エビデンスと。
志位 その点で注目しているのは、核軍縮問題に取り組んできたマイケル・D・ウォレス・カナダ・ブリティッシュコロンビア大学教授の研究です。これは、世界の軍拡競争と戦争との関係を150年というスパンで調べた古典的研究(1979年)なんですが、軍拡競争をやったケースの場合、82%の確率で武力紛争につながり、軍拡競争がない場合は、武力紛争につながったのは4%となっている。その後の論争と研究の発展がありますが、いまでも核心的命題は生き続けていると言っていいと思います。
鳩山 日本共産党として続きの研究をなさったらどうでしょうか。
志位 英語で「抑止力」は、deterrenceで、語源はラテン語で「脅かす」「恐れさせる」になります。相手に恐怖を与えて抑えつける。これが抑止力の本質です。
鳩山 実際そうですね。よく当たっている。
志位 相手に恐怖を与えたら、相手だってこちらに恐怖を与えようとする。だから恐怖対恐怖、軍事対軍事の悪循環に陥ってしまい、結局のところ戦争のリスクを高めるということを歴史が証明しています。恐怖でなく安心を与える外交こそ必要ですね。
どうする日中関係の打開
鳩山 どうしてもお聞きしたいのは中国(との関係)です。日中関係は今最悪的な状況になってきているわけですけれども、日中関係はどうすべきか。外交努力で相手に脅威を与えないことを一番やるべきなのが日中関係ではないでしょうか。(日本政府には)その外交努力がほとんど見えない。
志位 まったくそうですね。話し合いすらできなくなっている。日中関係でまずやらなきゃならないのは、高市首相の「台湾発言」を撤回することです。
鳩山 本当にそうです。
志位 台湾海峡で米中が軍事衝突した場合に「どう考えても存立危機事態になり得る」と言った。「存立危機事態」となれば、日本が武力攻撃を受けていなくても、自衛隊が武力の行使をすることができることになり、結局、(中国と)戦争しうるということです。それ自体、憲法違反で許しがたいことです。
同時に、日中国交正常化のさいの1972年の日中共同声明で、台湾は中国の不可分の領土だと中国側が主張したと書かれ、日本側はその中国側の主張を理解し尊重し、ポツダム宣言第8項を順守するというのが、合意になった。高市発言は、この合意に反する。日中両国関係の土台になっている合意を壊してしまった。時間がたてばなんとかなるという問題では決してありません。高市発言の撤回がどうしても必要です。
そのうえで、2008年の日中首脳会談での「互いに脅威とならない」の合意を双方が順守するなど、両国関係を良くしていくための努力が必要です。
鳩山 ただ、それは2008年の合意ですが、高市発言は、1972年の合意を破っています。
志位 そうです。だから、発言を撤回し、撤回したうえで、日中両国の四つの基本文書を、2008年のものも含めて再確認することが必要ですね。撤回がないとその後の合意も有効性の土台がない。
鳩山 高市さんは人気が高かったこともあって、撤回する気持ちは全くないのではないですか。
志位 逆に、撤回しないことを前面に立てて、自分の支持を高めるために利用しているところがある。そして大軍拡を進める。これは悪質です。
ただ、私は、中国に対して言うべきことは言わなくちゃいけないと。
鳩山 そうですよね。おっしゃってますよね。
志位 昨年訪中したさいにも、「東シナ海などでの力を背景にした現状変更の動きを自制してほしい」「台湾問題の平和的解決を願っています。日本共産党は、(中国による)武力行使や威嚇に反対です」などを率直に表明しました。言うべきことはしっかり言う。同時に、外交の知恵を絞って、(日中関係を)前に動かすため全力をあげる。これが政治の役割です。
高市政権は言うべきことを言わないで、言ってはならないことを言って、日中関係の土台を自分で壊しておいて、軍拡が必要なんだと主張をするわけです。これは、マッチポンプみたいな議論で一番悪い。
鳩山 おっしゃるのはその通りだと思います。
いまなぜ『資本論』なのか
鳩山 (志位氏の『Q&A共産主義と自由』(青本)、『Q&Aいま「資本論」がおもしろい』(赤本)を示しながら)読ませていただいて、たいへんにこれはおもしろかった。なぜ今また『資本論』なのか。『資本論』は素晴らしい理論的な著書だとは思うんですけれども、なぜ今また『資本論』が関心を持たれてきているかというところをご説明いただけますか。
志位 2008年のリーマン・ショックをきっかけとして、ヨーロッパやアメリカなどでマルクス・ブームが起こってきており、日本でも今起きつつあります。その背景には何と言っても資本主義の矛盾がいよいよ噴き出ている。一つには貧富の格差があまりにもひどいことです。
鳩山 ここ(「赤本」)に書かれているように、ビリオネアトップ10人の富は1日1人1億ドル増えている。一方で、国際貧困ライン以下の人たちは36億人いるという。
志位 もう一つは気候危機の問題です。パリ協定で産業革命前に比べて気温上昇を1・5度以内に抑える目標を掲げながら、実際には超えている。気候危機は、まさに待ったなしの状況です。これは資本主義がつくったものです。
人類の歴史はこんなにも矛盾の多い、苦しみの多い、社会で最後なのだろうか。そんなことはない。『資本論』は資本主義の運動法則を明らかにして、人類の歴史は資本主義で終わりではない。先に進む力を人類は持っていることを示した書物として、今新しい光を放っています。
鳩山 労働時間の短縮が一つの大きなポイントなんですね。
志位 最大のポイントです。本格的に(労働時間を)短くして、例えば週2日から3日の労働で、1日3時間から4時間ぐらいの労働時間まで短くする。そういうことができれば、自由に使える時間がうんと広がる。自由に処分できる時間こそ人間にとっての真の富だということをマルクスは『資本論草稿』の中で強調しています。マルクスは、搾取をなくすことで、すべての人が自由な時間を十分に持って、自分の中に眠っているいろんな能力を自由に発展させることができる。そういう社会こそ共産主義だということを言っています。
鳩山 失礼な言い方すると、共産主義に対して勉強していないわれわれからすると、共産主義は何か自由がないようなイメージですよね。そういうイメージがあるんですけど、逆なんだよね。
志位 逆なんです。この「青本」で、「共産主義と自由」についてとことん話しています。人間の自由があらゆる分野で豊かに花開くのが共産主義なんです。
鳩山 どうやったら資本主義から社会主義・共産主義の社会に転換することができるのか。
志位 日本共産党のとっている戦略は、いきなり社会主義にいくのではない。まずあまりのアメリカ言いなりをやめて、本当の独立国といえる日本をつくる。
鳩山 大賛成です。
志位 もう一つ、あまりに財界の利益第一になっていて富が一極集中している。それをただして、暮らしを守るルールをつくる。
それをやりとげたうえで、国民多数の合意で社会主義に進もうということなんです。
鳩山 段階的にね。それで共産党さんは、21世紀の自由宣言というのを出したわけですね。
志位 人間の自由がキーワードです。
鳩山 私が主張している友愛というのは、自由と平等は両方とも非常に大切だ。二つの概念を両立させるのは友愛なんだという考えなんです。
志位 自由、平等、友愛。フランス革命いらいの進歩的思想ですね。
東アジアの平和共同体を
鳩山 (共産党が)東アジア平和共同体という、それを構想することの重要性を訴えておられました。そこを最後にうかがいたい。
志位 東南アジアはもう平和共同体がつくられています。ASEAN(東南アジア諸国連合)という固まりがあって、あらゆることを話し合いで解決する。対話を徹底的にやる。何度も訪問してすごいなと思っています。東南アジアには“良い対話の習慣”があるというのです。域内で年間1500回にも及ぶ対話をしているといいます。
鳩山 すごいな。1日5回にもなりますね。
志位 ええ。それだけ対話をやっていると、お互いに信頼関係ができる。こうした粘り強い対話の積み重ねによって、この地域を平和の共同体に変えたことは注目すべきです。
ところが、北東アジアでは、“対話の習慣”が弱い。“対話の習慣”を、日中でも、日韓でもつくっていく。北朝鮮との関係だって対話で解決するしかない。
鳩山 それをやるべきですよね。
志位 すべてを対話で解決するような習慣を北東アジアでもつくっていく。この地域に関係する国は、6カ国協議に参加していた六つの国です。この六つの国の間に、“対話の習慣”をつくっていく。つくるうえで、最初、三つの国から始めてもいい。日本と中国と韓国の日中韓サミットがありますよね。三つの国の対話も頻繁にできるようにしていく。年がら年中話し合うって関係にして、顔を合わせている関係をつくって、粘り強く前進していくことが大切だと思います。
そして言いたいのは、北東アジアにブロック対立を固定化させてはならないということなんです。日米韓と、中国とロシアと北朝鮮。ブロック対立で軍拡競争をやって、それが固定化する。対話ができなくなってしまう。そういう関係に北東アジアがなってしまうのか。それとも、6カ国協議のような対話の枠組みを、この地域でもつくり、平和を築くのかどうか、分かれ道に立っていると思います。
対話で平和をつくる信念に強く賛同
鳩山 賛成です。でも今回のトランプの行動を見ていると、北朝鮮も戦々恐々とする可能性があるんじゃないか。
志位 米国とイスラエルのイラン攻撃を見たら、北朝鮮は、いよいよ核兵器を強く握りしめてしまう。トランプ政権の、この間のベネズエラ侵略、それにつづくイラン攻撃を許すと、世界の平和秩序が崩れてしまいます。
国連憲章も国際法も形骸化した世界になっていいのか。世界は本当に今分かれ道だと思います。その方向に行ったら、第2次世界大戦の反省はどこへ行ったのかとなる。絶対に行ってはいけません。いろいろな立場の違いがあっても、国連憲章と国際法を守る国際秩序をしっかりつくっていくことに、あらゆる力を注ぐべきです。
鳩山 やはり対話が必要なんだと。軍事力じゃない。対話によって平和を築こうという信念に、とてもとても強く賛同させていただいたところです。

