(写真)全国弁連の会見で示された、統一協会の資料に掲載された岸信介元首相(右)と文鮮明が握手する写真
東京高裁は統一協会(世界平和統一家庭連合)に対する解散命令決定で、霊感商法や高額献金などの不法行為を防止するには「解散命令以外見当たらない」と断言しました。協会が日本で活動を開始したのは1958年です。この68年間で多くの被害が出ました。解散命令は当然であり、むしろ遅すぎたといえます。
全国霊感商法対策弁護士連絡会によると被害額は、集計がある87年からの36年間だけでも約1340億円にのぼります。協会が長期間にわたり被害を広げた背景には、自民党との癒着があります。とりわけ憲法改悪を目指したタカ派の首相と深い関係を結んできました。
統一協会の内部文書「TM特別報告」には、協会に貢献した4人の首相名が頻繁に出てきます。岸信介元首相、福田赳夫元首相、中曽根康弘元首相、そして安倍晋三元首相です。
TM文書は岸氏を教祖文鮮明と「一番最初に深い信頼関係を結んだ日本の首相」と紹介しています。福田氏は、74年に文鮮明と妻韓鶴子(ハン・ハクチャ)・現総裁が来日した際、50人を超える国会議員の前で「アジアに偉大な宗教指導者現る」と絶賛したと記載しています。
中曽根氏については86年の衆参同時選挙で、教祖夫妻の指示により信者が「狂ったように選挙運動を展開」したとあります。92年には教祖夫妻と面会。議員引退後も協会関連団体の行事に祝電を贈ってきました。協会の政界工作にかかわった元信者は「協会は中曽根氏を重視し、祝電を依頼していた」と証言します。
癒着の頂点に安倍氏
癒着の頂点と言えるのが安倍元首相です。TM文書も安倍氏が文鮮明、韓鶴子夫妻と「最も縁が深い日本の指導者」としています。協会幹部と首相在任中に繰り返し面会し、自身が支援する参院選候補者の応援を依頼してきました。
他方、統一協会には選挙応援の見返りもあります。安倍氏は21年9月12日に協会ダミー団体「天宙平和連合(UPF)」が韓国で開いた大規模集会にビデオメッセージを贈りました。その際、韓総裁に「敬意を表します」とまで語ったのです。
TM文書ではこのメッセージを大会の「基調演説」として紹介しています。協会内の反響も大きく「全世界の会員たちも大いに興奮した」「(信者たちに)大きな希望と刺激と力を与えた」との記載があります。
しかし安倍氏の登場は、信者にとって「希望」でも、被害者にとっては「絶望」でした。元信者2世は安倍氏の映像をみたときに「信者の洗脳が強化される」と絶望感を覚えたと振り返ります。安倍氏を銃撃した山上徹也被告に対する奈良地裁の判決も、安倍氏の動画を見た同被告は「(統一協会が)社会に問題がない団体として認知されてしまうのではないか、それは『困る』という感情を抱いた」としています。
活動の中心は「献金」
統一協会が日本の首相に接近したのは、単に持ち上げのメッセージをもらうためだけではありません。狙いは「国家復帰」です。協会元幹部は「『国家復帰』とは、世界を統一協会の影響下に置くことだ。一時期、国民の半数を信徒にすることだと幹部たちは公言していた」と証言します。
極めて非現実的で反社会的カルト集団ゆえの妄想ともいえる目的です。それでもマインドコントロールされた信者は、日本の首相経験者の名前が行事で紹介されるたびに「希望」や「刺激」をうけ、教祖夫妻の言葉をひたすら信じて活動にまい進します。
活動の中心は「献金」です。実際に、TM文書は献金目標の達成状況を極めて重視して報告しています。むしろ報告の主目的が献金だといえます。前出の元幹部は「日本本部の報告に対し、(韓国本部の)上層部が関心をもっていたのは、何よりも献金実績であり、韓総裁にどう良い報告をするか、ということだろう」と指摘します。
東京高裁の決定によると、協会は18~22年度に年500億円前後の献金目標を掲げています。この期間に海外へ約83億~約179億円を送金し、うち9割超が韓国に送られていました。さらに決定は、文鮮明が信者に「自分の生命、全財産にも当たるすべてを捧(ささ)げるのです」などと説き、「日本からの金銭拠出が少ないことを叱責(しっせき)することがあった」と指摘しています。
日本からの献金は韓国の協会本拠地にある宮殿のような豪華建築物などに費やされてきました。現在、韓総裁は、韓国前大統領側に金品を贈った政治資金違反や請託禁止法違反の罪で起訴されていますが、賄賂の原資に日本からの献金が含まれている可能性すらあります。
お墨付きを与え助長
このように安倍氏ら歴代首相との癒着は、統一協会という反社会的カルト集団にお墨付きを与え、空前ともいえる被害を生み出す助けをしてきたといえます。被害救済に奔走する弁護士や日本共産党は、自民党に対し癒着を断ち切るよう繰り返し求めてきました。それでも自民党は選挙に勝つため協会を利用し、逆に癒着を深化してきました。
この責任は現在の自民党総裁である高市早苗首相にも引き継がれています。高市氏自身、協会関連団体からパーティー券購入を受けていた疑いがあります。協会系の日刊紙「世界日報」に5回登場したことも隠してきました。協会と安倍氏の間を取り持ったとされる萩生田光一衆院議員を幹事長代行という要職に就けています。癒着を断ち切る気があるのか疑わざるを得ません。
東京高裁が解散命令を出したから終わりではないのです。被害救済を進めるためにも癒着を徹底解明し、二度と同じことを引き起こさないために真摯(しんし)に反省する―。この姿勢がいま高市氏と自民党に求められています。

