日本共産党の田村智子委員長が27日の記者会見で発表した「2026年度予算審議にあたって」は次のとおりです。
高市内閣が提出した2026年度予算案は、物価高騰と暮らしの悪化に背を向ける一方で、軍事費を突出させ、大企業支援と米国トランプ政権の要求にこたえた対米投資の拡大など、国民生活、経済、外交における数々の重大な問題を含んでいる。また、政治とカネの問題をはじめ高市内閣の政治姿勢も厳しく問われている。
日本共産党は、本日衆院予算委員会で審議入りした来年度予算案の審議にあたって以下の問題点を指摘し、予算案の抜本的な組み替えを含めた徹底審議を求める。
1 物価高から暮らしを守り、経済を支える予算への転換を
(1)総理が「悲願」と主張する消費税減税が含まれていない
物価高騰から暮らしを守る上で、消費税減税は待ったなしの課題である。日本共産党は、消費税を5%に減税し、インボイス制度を廃止、財源は大企業・大株主への行き過ぎた減税・優遇を見直し確保することを提案する。参加政党を選別し、消費税温存ありきとなりかねない「国民会議」ではなく、国会審議を通じて消費税減税を実現すべきである。
(2)大幅賃上げへの政治の責任を投げ捨て、長時間労働を押しつけようとしている
上場企業が史上最高益を更新し株価も上昇、しかし賃金に回らず「富の一極集中」が続く。ところが政府には賃上げをどう進めるかの具体策がなく、最低賃金の引き上げ目標すら放棄した。そのうえ裁量労働制のさらなる拡大まで持ち出している。賃上げと労働時間の短縮、生活時間、自由な時間を増やすことこそ、暮らしの困難を打開するために必要である。
(3)物価上昇に遠く及ばない社会保障予算が暮らしを脅かす
社会保障予算は2%増と物価上昇に及ばない。年金改定率も2%の見込みとされ、物価上昇に比べ大幅な目減りとなる。「凍結」していた高額療養費の負担増を「復活」させ、OTC類似薬の追加負担導入、「子育て支援」と称する医療保険料への上乗せ負担開始など給付削減と負担増が目白押しとなっている。
診療報酬本体の3・9%引き上げは世論と運動の成果だが、医療危機を脱していない。国費を投入して患者負担増なく危機打開を進め、11万の病床削減計画は撤回すべきである。訪問介護基本報酬の引き下げを直ちに見直すとともに、介護保険への国庫負担10%増により介護労働者の賃金を抜本的に引き上げることが必要である。
(4)大学の学費値上げに拍車をかけ、教員の定数減を放置
教育予算は、学校給食費の負担軽減などで増額があるものの、国公私立大学での学費値上げラッシュを止めるどころか運営費交付金や私学助成を抑制し値上げに拍車をかけ、国立大学授業料標準額の値上げを含め検討している。値上げを中止し、無償化に向け値下げに進むとともに、本格的な給付制奨学金を創設すべきである。教員の定数減を放置せず、増員に転じ少人数学級の拡大と教員の労働時間短縮こそ必要である。
(5)福島原発事故を忘れた原発回帰の大転換を進めようとしている
エネルギー対策特別会計に2兆5333億円、次世代革新炉開発に1220億円を計上するなど露骨な「原発回帰」予算案となっている。原発ゼロ、省エネ・再エネの抜本拡充による気候危機打開をめざす。東日本大震災から15年、被災者支援のいっそうの強化が必要である。
(6)大企業支援に巨額を注ぎ込む一方、乏しい中小企業支援、農業予算
AI・半導体企業には1・2兆円もの支援、企業への投資減税0・4兆円など大企業には大盤振る舞いとなっている。「84兆円対米投資」のための日本貿易保険への交付国債1・78兆円は、民間投資のリスクを国民に押し付けるものであり認められない。
中小企業対策費は+0・3%、農林水産関係予算は+1・1%にとどまっている。中小企業支援を抜本的に強めるとともに、食料自給率の向上に踏み出し、減反政策、市場任せの農政を改めるべきである。
2 軍事費突出、憲法に反し戦争する国づくり
(1)米国トランプ政権の要求にこたえた大軍拡
軍事費は当初予算で初めて9兆円を超え、所得税の軍拡増税が開始される。しかも軍事費を「GDP(国内総生産)比2%程度」とした「安保3文書」を前倒しで改定したもとで、米国トランプ政権が同盟国に求めるGDP比5%水準を見据えた、いっそうの軍事費増額を行おうとしている。
(2)非核三原則、武器輸出禁止、平和国家の「国是」を投げ捨てようとしている
非核三原則を放棄し、米軍の核兵器持ち込みを容認することは、唯一の戦争被爆国として絶対に許されない。軍需産業を経済成長の柱と位置づけ、武器輸出を全面解禁することは、戦争と軍事的緊張を利用して「繁栄」する国をめざすものであり到底容認できない。スパイ取り締まりを口実に市民監視を強め人権と民主主義を蹂躙(じゅうりん)する「スパイ防止法」は認められない。
(3)破たんが明瞭な米軍辺野古新基地建設
民意を踏みにじり、軟弱地盤でいつ完成するかもわからず、建設費の大幅超過も明らかな辺野古新基地建設は、政治的にも技術的にも財政的にも破綻している。さらに米国は、辺野古新基地が完成しても「普天間基地は返還しない」ことがあり得ると公言している。普天間基地返還の「唯一の解決策」とした根拠が崩れている。即刻中止すべきである。
(4)日米関係、日中関係、外交姿勢が問われる
「法の支配」を否定し、「力の支配」をふりかざす米国トランプ政権言いなりに、ベネズエラ攻撃もグリーンランド領有宣言も批判しない。トランプ関税「84兆円対米投資」は「相互関税」が米最高裁で違法とされ前提を失っているが改めようともしていない。
日中関係は、高市首相の「台湾発言」を契機に極度に悪化している。中国に対して、言うべきことは言いつつ、両国関係の前向きな打開を進める外交が求められるが、高市内閣には全くその姿勢がない。
3 「責任ある積極財政」の名で大軍拡と大企業支援、対米投資
高市内閣は「責任ある積極財政」というが、「積極的」といえるのは突出した軍事費やAI・半導体企業への巨額支援、「84兆円対米投資」など、大軍拡と大企業支援、対米屈従のばらまきであり、国民不在の「無責任な放漫財政」にほかならない。
予算案に占める国債関係費は31兆円、総予算の4分の1に上る。大量の国債発行が財政の信認を低下させ、長期金利の上昇を招いてきた。異常円安による物価高騰のリスクも続く。ばらまきを中止し、大企業と富裕層への優遇税制をただす税制改革が求められる。
4 ジェンダー平等への逆行、排外主義をあおる政治をただす
ジェンダー後進国である日本のとりくみがいっそう求められるにもかかわらず、高市内閣は旧姓の「単独使用」法制化という全く代替にならない提案を持ち出し、同性婚には反対している。「違法外国人ゼロ」などといい、外国人に対する差別を助長する姿勢もただす必要がある。えん罪被害者の救済を阻んできた再審法の抜本改正が求められる。
5 政治とカネ、統一協会との癒着、高市内閣の基本姿勢が問われる
裏金問題の全容解明にはほど遠いにもかかわらず、高市首相は裏金議員を続々と復権させた。自らの企業献金をめぐる問題も未解明なうちに、当選した315人全員に1人約3万円のカタログギフト配布が発覚した。また統一協会との癒着でも、高市首相自身の疑惑についてなんら語っていない。さらに、議員定数削減は断じて許されない。虚構の多数をつくりだす小選挙区制の廃止こそ必要である。
これら予算案及び高市内閣の基本姿勢にかかわり重要な課題が山積するもとで、予算委員会での十分な審議時間を確保すべきことは言うまでもない。徹底審議は国会が国民に対して果たすべき責任である。自らが強行した解散・総選挙によって予算の年度内成立が困難になったにもかかわらず、国会で予算案の審議を大幅に省略して年度内成立を迫るなどということは強権政治そのものであり、議会制民主主義の根幹を揺るがすものである。
十分な審議時間を確保し予算の修正や組み替えなど必要な対応も行うことを強く求める。

