42年前に滋賀県日野町で起きた強盗殺人事件で無期懲役となり服役中に亡くなった阪原弘さんの再審開始が24日、最高裁で決定されました。第2次再審請求で地裁、高裁とも再審開始を決定したものの検察官が不服申し立て(抗告)を繰り返し、地裁の決定から7年以上を費やしました。
死刑囚だった袴田巌さんが冤罪(えんざい)を晴らすまでに事件発生から58年を要しました。福井中学生殺人事件では再審無罪まで事件発生から39年かかり、21歳だった被告は60歳になっていました。
罪をそそぐのに長い年月と膨大な労力を要する―その要因に、再審制度に関する法の不備と運用の問題点が指摘され、冤罪被害者の速やかで適切、容易な救済のために、▽裁判所に提出されていない証拠の確実な開示▽再審開始決定への検察官の抗告の禁止―が強く求められてきました。
■門前で棄却可能に
ところが、政府が今国会に提出しようとしている改定案は法制度の不備を改めるどころか、改悪にかじを切るものです。
現行では、再審請求を受けた裁判所は非公開の再審請求審で証拠調べなどを行い、そこで再審開始が決定され、検察が抗告しなければ再審公判が開かれます。
再審無罪事件から導かれる痛苦の教訓は、検察官の再審開始への抗告が冤罪救済を遅らせてきたことです。検察官の抗告禁止はどうしても必要です。しかし、再審制度見直しを議論してきた法制審議会(法相の諮問機関)が答申した要綱案は禁じていません。
また要綱案は、裁判所は再審請求を速やかに調査しなければならないとし、請求をふるい分けて一定の要件で棄却する規定を新設しています。その段階では証拠の提出命令や事実調べは禁じられており、証拠開示も受けられず、書類審査だけで再審請求が棄却されかねません。
証拠の開示について要綱案は、▽再審請求理由と関連がある▽必要性や開示した際の弊害を考慮し相当な場合―という限定をつけており、裁判官の裁量による広い証拠開示ができなくなっています。その結果、再審請求人や弁護人が求める証拠が幅広く開示されず、従来開示され無罪の根拠となった証拠が隠され、冤罪救済が遠のきかねません。
しかも、開示された証拠の目的外使用を罰則付きで禁じます。開示証拠を支援者やメディアに知らせることが目的外とされかねず支援活動を妨げます。報道の自由や国民の「知る権利」を侵害し再審裁判の密室化を招きます。救済をより困難にするもので、新聞協会も強く反対しています。
■議員立法の審議を
法制審の審議について日弁連は、検察官が要職を占める法務省によって恣意(しい)的に論点がまとめられ、議論が誘導されたと厳しく批判しています。刑事法研究者135人の声明も、法制審の内容を強く批判しています。
冤罪は国家による最大の人権侵害です。速やかな救済を可能にする法整備こそ必要です。衆議院の解散で一度は廃案となった超党派議連による再審法改正案を再提出し、成立を図るべきです。

