21日に仙台市内で開かれた「戦争準備の大軍拡反対 東アジアの平和の枠組みづくりをめざすシンポジウム in仙台」(全国革新懇、宮城革新懇共催)でパネリストとして登壇した日本共産党の志位和夫議長の発言を紹介します。
国民の疑問や不安を受け止めた対話の努力を国民的規模で
(写真)発言する志位和夫議長=21日、仙台市青葉区
私は、いかにして「戦争国家づくり」を許さない国民多数派をつくるかということをテーマに発言します。
総選挙の結果、大軍拡と憲法9条改定を中心とする「戦争国家づくり」の戦後かつてない危険が生まれています。この企てを止めるには、それに反対する国民多数派をつくる以外にありません。どうすれば揺るがない国民多数派をつくることができるか。そのためには、「大軍拡反対」「9条守れ」という主張を鮮明に掲げ、「戦争国家づくり」の危険な実態を広く伝えていくことはもちろん大切です。同時に、国民のみなさんがもっている疑問や不安をしっかりと受け止め、それに丁寧にこたえ、本腰を入れて、粘り強く、対話の努力を国民的規模で行っていくことがどうしても必要だと思います。重要だと考えることを四つの角度からお話しします。
「法の支配」を投げ捨てた米政権言いなりに「戦争国家づくり」を進めていいのか?
第一は、「法の支配」をかなぐりすてたトランプ政権言いなりに、日米一体で「戦争国家づくり」を進めていいのかという問題です。
これまでの米政権は、少なくとも建前のうえでは「法の支配」を掲げてきました。ところがトランプ大統領は、「私は国際法を必要としない」(ニューヨーク・タイムズ、1月7日)と公然と言い放ち、「力の支配」をむき出しにした行動を続けています。ベネズエラ侵略、グリーンランド領有宣言、キューバへの燃料供給の封鎖、どれもこれも国連憲章・国際法を踏みにじる無法行為です。
その矛先は彼が「西半球」とする地域に限られるものではありません。トランプ2期目に、米国が国連憲章違反の軍事攻撃を行った国を数えてみましたら、ソマリア、イエメン、イラク、イラン、シリア、ナイジェリア、ベネズエラと、中東・アフリカも含めてすでに7カ国に及んでいます。そして今、イランに対する大規模な軍事作戦を選択肢とし、それを実行する態勢をとりつつあります。絶対に許すわけにいきません。
ここで重要なことは、こういう米国の暴挙に対する批判が、その同盟国を含めて国際的に広がっているということです。ベネズエラ侵略に対しては、EU(欧州連合)から、そして多くのNATO(北大西洋条約機構)諸国からも「懸念」が表明されました。グリーンランドをめぐっても、1月6日、NATOの主要7カ国--デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、スペイン、英国--が異例の共同声明を発表し、「デンマークとグリーンランドに関する事項を決定するのは、デンマークとグリーンランド、そして彼ら自身のみである」と表明しました。カナダのカーニー首相は、1月20日、ダボス会議での演説で、名指しこそしませんでしたが、「強者はしたいことをして、弱者はそれを耐え忍ぶ、そんな世界でいいのか」と、大国の覇権主義への痛烈な批判を語りました。
こうしたなか、自民党政権は、一連のトランプ政権の無法行為に対して、ただの一言の批判もしていません。このような国はG7でも日本だけです。「日米同盟絶対」で思考停止に陥ってしまっている政権が、「私は国際法を必要としない」と公言する大統領の言うがままに、「戦争国家づくり」を進めることがどんなに危険か。このことを広く伝えて、自主自立の外交への転換をはかってこそ平和をつくることはできることを大いに語ろうではありませんか。
軍事的抑止力の強化で平和をつくることができるか?
第二は、軍事的抑止力の強化で平和をつくることができるかという問題です。
自民党政権の決まり文句は、「日本は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面している」、「日米同盟の抑止力、対処力の強化が必要だ」というものです。耳にたこができるほど年がら年中これを言っていますね。それでは、軍事的抑止力の強化の先に平和はくるのでしょうか。いくつかの事実を紹介します。
国連報告--「軍事費増は、軍拡競争に拍車をかけ、武力紛争のリスクを高める」
一つは、国連事務総長が、2025年9月9日、世界の軍事費拡大に警鐘を鳴らす報告書を発表し、そのなかで次のようにのべていることです。
「軍事費はしばしば抑止と国家安全保障の根拠として正当化される。しかしエビデンス(証拠)が示しているのは、増大した軍事費は必ずしも平和と安定につながらないということだ。逆に、増大した軍事費はしばしば地政学的な緊張を激化させ、軍拡競争に拍車をかけ、武力紛争のリスクを高める」「国際社会は、軍事費の増大がより大きな平和〔平和の強化〕をもたらさないという厳しい現実を直視しなければならない」
この国連の報告書はたいへん重い意味があると思います。
過去150年の統計--「軍拡競争は82%の確率で戦争へとつながった」
二つ目に紹介したいのは、過去150年という歴史的スパン(幅広さ)で、世界における軍拡競争と戦争との関係を明らかにしたマイケル・D・ウォレス教授--カナダ・ブリティッシュコロンビア大学教授で核軍縮問題にとりくんだ著名な研究者--の先駆的研究(1979年)です。
「本研究は、こうした軍拡競争が主要国間の深刻な紛争が全面戦争にエスカレートする確率に影響を与えるかどうかを明らかにしようとするものである」。「軍拡競争を先行させる紛争は28件中23件(82%)で戦争にエスカレートしたのに対し、軍拡競争を先行させない紛争は71件中わずか3件(4%)しか戦争に至らなかった」(「軍拡競争とエスカレーション:いくつかの新しいエビデンス」)
軍拡競争が何と82%の確率で戦争につながった。軍事的抑止力の強化が平和をもたらさず、戦争への道だということは、150年の人類の歴史が証明しているというのがこの研究の結果でした。この論文は、この分野の古典的研究として知られており、その後の論争と研究をつうじての方法論の精緻化をへても、軍拡競争が戦争のエスカレーション・リスクを高めるという核心的提起は、半世紀近くをへた今日も生き続けているといってよいと思います。
抑止力強化の10年余--平和と安定でなく、緊張の激化に向かった
それでは三つ目に、日本の現実はどうでしょうか。自民党政権は、2014年に集団的自衛権行使容認の閣議決定を強行しました。15年に安保法制を強行しました。22年に「安保3文書」改定を強行し、それにもとづいて大軍拡を実行に移しています。それではこれをやってきて、「日本をとりまく安全保障環境」は良くなったのか。
政府の「防衛白書」では、日本の安全保障環境の評価をどのように行っているでしょうか。その変遷を見てみますと、2014年度版は「一層厳しさを増している」との記述がされています。15年度版、16年度版、17年度版、18年度版で同じ表現が続きます。年をおうごとに厳しくなっているということですね。19年度版では「不確実性が増している」との記述がされ、20年度版、21年度版、22年度版で同じ表現が続きます。そして、23年度版ではついに「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境」との記述になりました。24年度版、25年度版では同じ表現が続きます。何のことはありません。「日米同盟の抑止力の強化」にとりくんだこの10年余の結果は、平和と安定に向かったのではなく、緊張の激化に向かったことを、政府自身が認めているではありませんか。
相手に恐怖を与えるのではなく、安心を与える外交こそ必要
もともと抑止とは何か。抑止とは、英語でデターランス(deterrence)と言いますが、その語源はラテン語の「deterre」に由来し、「脅かす」や「恐れさせる」という意味です。相手に恐怖を与えることによって相手を抑えつける、これが抑止の本質なのです。しかし、一方が恐怖を与えれば、他方も恐怖を与えようとする。つまり、恐怖対恐怖--軍事対軍事の悪循環が生まれ、それが戦争につながることは、すでにお話ししたように歴史が証明しています。
ですから、私は、相手に恐怖を与えるのではなく、安心を与える外交こそ必要だということを言いたい。そして、日本はそのための最良の資産である憲法9条をもっているではないかと言いたいのです。世界で大国を中心にして深刻な軍拡競争が起こっているいまこそ、日本が憲法9条を持つ国として世界に向かって軍縮に切り替えようというイニシアチブを発揮すべきではないかと考えます。
軍事力依存の安全保障政策をとらず、外交と対話によって平和の共同体をつくった実践が
こういうことを言いますと、「外交で平和がつくれるのか」という疑問があるかもしれません。しかし、半世紀以上前から軍事力に依存した安全保障政策をとらずに、外交と対話を何よりも重視して平和の共同体をつくりあげてきた実践がすぐそばにあります。東南アジア諸国連合(ASEAN)のとりくみです。
ASEANは、東南アジア友好協力条約(TAC)を土台にし、国連憲章と国際法にもとづく徹底した対話--「対話の習慣」をつくりあげることによって、東南アジアを戦争の心配のない地域に変え、それを東アジアサミット(EAS)をつうじて東アジア全体に広げる努力を続けています。日本共産党が「東アジア平和提言」で提唱してきたように、ASEANと協力し、EASを発展させ、対話と包摂で平和をつくる外交に力をつくすことにこそ、東アジアに平和をつくる大道があると考えます。
中国との関係をどうするか?
第三は、中国との関係をどうするかという問題です。
アメリカ言いなりは問題だという人のなかにも、中国との関係をどうするかについて、不安をもつ方も少なくないと思います。実際、日米と中国との間で、今、軍拡競争という事態が起こっているのは事実です。その競争を果てしなく続けていく先に、平和はあるのか。すでに見てきたように、その答えは「ノー」です。軍拡競争のエスカレートによって、私は、万が一にも、日中が再び戦火を交えることは絶対にあってはならない。このことを言いたいと思います。
言うべきことは率直に言いつつ、両国関係を前に動かす外交に知恵と力をつくす
では、現状をどうやって打開していくか。これも外交以外にはありません。そして外交的打開の道はあります。日本共産党は、2023年3月、提言、「日中両国関係の前向きの打開のために」を発表し、両国政府に提起をしました。2008年の日中首脳会談では、「双方は、互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならない」という立派な合意があるんですね。この合意をはじめ、両国が積み上げてきた積極的合意を「共通の土台」にして、前向きの打開をはかろうという提言です。この提言は両国政府に肯定的に受け止められました。ならば、「互いに脅威とならない」という合意を、日中双方が真剣に実行すべきです。そのことを双方に対して強く求めていくとりくみが大切です。
昨年4月、私は、日中友好議員連盟の一員として訪中したさいにも、「互いに脅威とならない」の原則の重要性を提起しました。中国側は「志位議長の提言を重視している」と応じました。同時に、言うべきことは言う必要があると考えまして、二つの点を率直に提起しました。一つは、「東シナ海などでの力を背景にした現状変更の動きを自制してほしい」。もう一つは、「私たちは台湾問題の平和的解決を強く願っています。日本共産党は、(中国による)武力による威嚇や行使に反対です。同時に、第三国による軍事的関与や介入に反対します」。こういうことを表明しました。この問題では意見に違いがありますから、議論になります。ただ、「言うべきことは面と向かって率直に言う。同時に、両国関係を前に動かす外交に知恵と力をつくす」――こういう立場が必要ではないでしょうか。
外交的土台を破壊し、それを大軍拡の口実に利用--これほど間違った政治はない
そういう外交的努力を日本政府はやっているでしょうか。やっているとはいえません。反対に、「言ってはならない」ことを言って、両国の外交関係の土台を破壊しているのが、高市首相の「台湾発言」です。わが党は、この発言の撤回を強く求めてきました。同時に、中国側に対しても、この問題を経済関係にリンクさせてはならない、事実にもとづかない言動や、対立をことさらあおるような言動を慎むことなどを率直に提起しました。問題を引き起こしたのは(高市)首相の側ですから、「撤回しなさい」と言い続けますが、中国側にもわきまえてほしい問題を率直に提起しました。これが当たり前の理性的な対応ではないでしょうか。
高市首相は、あくまで撤回しないという態度をかたくなにとりつづけ、それを逆に自分を宣伝する材料として使うという態度をとっています。両国の緊張と対立を自分でエスカレートさせておいて、それを口実にして、反中国の世論をあおりたて、そのムードにのって選挙で多数を占め、さらなる大軍拡を進める。これほど間違った、道理のない政治はないということを、私は強く批判をしたいと思います。
憲法9条がどうして生まれ、戦後どういう役割を果たしてきたかを丁寧に明らかに
第四に、憲法の問題そのものについては、憲法9条はどうして生まれ、戦後どういう役割を果たし、それを壊すことが何をもたらすかを、歴史と事実にもとづいて、丁寧に明らかにしていくことが大切だと思います。
憲法9条がどうして生まれたか--その積極的意義を明らかにするとりくみを
なぜ日本が憲法9条という世界で最も先進的な恒久平和主義の条文をもつにいたったか。それは、半世紀にわたる侵略戦争と植民地支配によって、アジア諸国民に甚大な被害をもたらした加害の歴史、同時に、広島、長崎という非人道的惨禍を体験したなどの被害の歴史、加害と被害によるおびただしい犠牲、その反省が込められたのがこの条文です。
そのことは、敗戦直後の時期には、政府も明らかにしていったことでした。ここに復刻版を持ってきましたが、1947年に文部省によって発行され、全国の中学生が1年生の教科書として学んだ『あたらしい憲法のはなし』では、憲法9条の積極的意義を丁寧に語り、「日本は正しいことを、ほかの国よりさきに行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません」と誇らかにのべています。
もう一つ、1946年に内閣によって発行され、広島・長崎への原爆投下と憲法9条の関係を深く解明した『新憲法の解説』では、「文明が戦争を抹殺しなければ、やがて戦争が文明を抹殺するであろう」とのべ、ここに憲法9条のもつ「重大な積極的意義」があることを力説しています。
ただ、こうした憲法9条の積極的意義を明らかにする教育的とりくみは、敗戦直後の2~3年間で終わってしまい、教室から姿を消していきました。もちろん、教職員組合や父母などによる積極的とりくみは続いてきましたが、自民党政権は、憲法9条の積極的意義を子どもたちに伝える教育をやってきたとはいえないのです。
ですから、いま憲法9条への攻撃が強まるもとで、私たちが、原点に返って、憲法9条がそもそもどうして生まれたのかを、若い方々を含めて、広く国民の共通認識にしていく努力が必要だと思います。
戦後81年、憲法9条がどういう役割を果たしてきたか
同時に、この条項が、戦後81年、どういう役割を果たしてきたかを明らかにしていくことも大切だと思います。この条文は、歴代自民党政権によっておとしめられてきましたが、それでも、この条文を守り、生かそうという国民の努力によって、世界でも他に類のない平和国家としての日本の姿がつくられてきました。専守防衛、軍事費の抑制、非核三原則、武器輸出禁止、集団的自衛権の禁止などです。それらによって、自衛隊は、創設以来72年、一人の外国人も殺さず、一人の戦死者も出していない、主要国では唯一と言ってよい歴史をもっています。
2004年に自衛隊がイラクに派兵されたさいに、現地の武装勢力が「日本の自衛隊は攻めない」と、「内部で合意」していたことが報じられました(「朝日」、2013年3月17日付)。「武装闘争を主張する幹部もいたが、……『日本とは共有すべきものがある』とする意見が大勢を占め、……武力攻撃の対象としないことで合意していた」といいます。憲法9条は、自衛隊員の命をも守ってきたことを忘れてはならないと思います。
憲法9条改悪によって壊されようとしているものが、世界にもその価値が高く評価されてきた平和国家としての姿であることを広く国民の共通認識にしていくことも大切だと思います。
以上、4点ですが、討論の素材にしていただければありがたいと思います。ありがとうございました。
改憲や軍拡が必要という市民とどう対話していったらいいか?
会場から「世論を変えるために改憲や軍拡が必要という市民とどう対話していったらいいか」との質問が出されました。これに志位氏は次のように答えました。
◇
私は、冒頭の発言で「大軍拡反対」「9条を守れ」というスローガンを訴えるだけでは国民多数派をつくれないとのべました。もちろん、そういう運動にとりくむことは本当に重要なことなのですが、今の世論の状況を変えていくには、本腰を入れた国民的対話が必要だと感じて4点ほどお話ししました。
「改憲が必要だ」「軍拡が必要だ」という方々とどうやって対話をしていったらいいかというご質問ですが、そういう方々とも共通のベースになることがある。それは、「戦争には反対だ」というベースです。そうした方々とも、「戦争だけは起こしちゃいけない」ということでは一致しているのではないでしょうか。これは当たり前のことのようですがとても大事なことです。かつて太平洋戦争に向かう時期には、天皇制権力によってつくり出されたものですが、国民のなかに戦争を望むような空気が生まれ、真珠湾攻撃のときには喝采を上げた人も少なくなかったと言います。今の日本は、そういう状況とは違うわけです。公然と「戦争に賛成だ」と言っている人はほとんどいないでしょう。
問題は、戦争を起こさないためにどういう手段が適切なのか。軍事的抑止力を強めることが平和への道なのか、外交と対話を何よりも最優先させていくことが平和をつくる道なのか、ここが分かれ道になってくると思います。ここを事実にもとづいて冷静に話し合っていく。外交と対話で平和をつくれるという展望も語っていく。「防衛力をもっと強くする必要がある」「憲法を変える必要がある」という意見の方とも、それは間違いだと頭ごなしに言わないで、「あなたがそう言うのは、戦争を起こしてはいけないという気持ちからでしょう」という、ベースになるところを共有したうえで、どうすれば戦争を起こさないことができるのかという対話をやっていく。そのさいに、きょうお話ししたことも参考にしていただければと思います。
ASEANと協力して平和をつくっていくことは可能か?
(写真)志位和夫議長の発言を聞く人たち=21日、仙台市青葉区
東南アジア諸国連合(ASEAN)など国際社会との連帯についての質問がありました。志位氏は次のように答えました。
◇
ASEANの国ぐにが取っている安全保障は、日本の自民党政権とはまったく違う考え方にたっているんです。つまり軍事力に頼った安全保障政策ではないんです。私は、ASEANの国ぐにとの対話を重ねてきましたが、基本的にはどの国も、外交、対話、協力を最優先させた安全保障政策をとっている。もちろん、どの国も軍事力を否定しているわけではないし、軍隊を持っています。しかし、軍事は最後の手段と位置づけられている。まず外交を徹底的にやる。対話をやる。相互理解をやる。相互信頼をつくっていく。経済的交流、人的交流を活発にし、文化でもお互いに相互理解していく努力を重ねる。そうした非軍事の安全保障をとことんやっていく。もっぱら軍事に頼って安全保障をやろうという考え方ではそもそもないんです。
それじゃ日本はどうかというと、まさに軍事的抑止力一辺倒じゃないですか。この一辺倒というところが怖いところです。日本なりに道理の通った、また自主的な外交を一生懸命やったうえで、防衛力も強めましょうという話ではないんです。そうした外交をやっていないんです。外交をやらないどころか外交を壊しているんです。それを象徴的に示しているのが高市首相の「台湾発言」なのですが、外交不在、外交否定の軍事的抑止力一辺倒でいいのかということを問うていく必要があると思います。
ASEANが主導して、昨年10月、クアラルンプールで東アジアサミット(EAS)の首脳会合をやりましたが、そこでは、「東アジアサミットは、この地域で国際法を擁護し促進する役割と対話の効果を誓約している」という宣言が採択されています。東アジアサミットには、日本もアメリカも中国も参加しています。トランプ大統領のアメリカでも、ASEANが主導する首脳会議に行けば、「国際法を守ります」と言う。それだけの力を持っているのがASEANです。そういう流れが間近にあることもよく見て、協力しながら東アジアに平和をつくっていくことは可能だと思います。
とくにいま強調したいことの一つは、北東アジアを二つのブロックに分断し、対立を固定化してはならないということです。二つのブロックとは、日本・米国・韓国と、中国・ロシア・北朝鮮です。二つのブロックに分断し、対立が固定化し、エスカレートするような状況に北東アジアをしてはならない。そのための条件はあります。さきほど、日中間で「互いに脅威とならない」という首脳合意があると言いました。また、多国間の枠組みとしては「日中韓サミット」があります。この仕掛けを動かしていく。この3カ国でよく対話をする。さらに北東アジアに関連する6カ国でも対話をする。こうした対話を日常的にやり、何でも話し合いで解決していくという流れを、「対話の習慣」を北東アジアにも広げていくことは可能です。そういう外交努力こそ必要だということを強く言いたいと思います。
憲法についての「そもそも論」をいろいろな角度から話し合っていこう
シンポジウムの締めくくりで、志位氏は次のようにのべました。
◇
高良さんが「憲法はそもそも何だっけ」ということを語っていくことの重要性を話されましたが、私も、憲法についての「そもそも論」をいろいろな角度から話し合っていくことが大切だと思います。
たとえば高市首相は、20日の施政方針演説で「国の理想を物語るものが憲法です」と言いました。これは憲法の本質を理解していない発言です。憲法とは国民の権利と自由を守るために国家権力を縛るものです。それが憲法の本質であり、それを立憲主義と私たちは呼んでいます。そしてそういう規範は歴史によってつくられました。つまり、歴史の反省に立って、国家権力を縛るものとして何が必要かが明らかにされ、国民主権、恒久平和主義、基本的人権、これらを永久不可侵のものとして憲法の中に刻まれたわけです。歴史の反省に立って権力を縛るものが憲法だ、というところから出発した憲法論というものをきちんと立てなければならないと思います。
さらにもう一点、先日のNHK「日曜討論」(15日)で、自民党幹事長代理が「国論を二分する憲法改正を進めていきたい」と言いました。私はあぜんとして聞きました。「国論を二分する」ような憲法改正というのはできないし、やってはならないことなんです。憲法96条には憲法改正の手続きが定められています。衆議院と参議院の両院の総定数の3分の2以上によって発議されて、国民投票にかけられるとなっています。発議には、衆院だけでなく参院と両方で、総定数の3分の2という非常に厳しいハードルがかかっています。私たちは憲法改正自体に反対ですが、仮に憲法改正する場合には、国民の圧倒的多数のなかで改正が必要だという合意が成熟した時に初めて問題になるというのが、憲法96条に書いてあることです。ですから、「国論を二分する憲法改正」などというのはそもそも憲法違反なのです。そういう憲法についてのイロハが分からない人たちが政権を担っていて、憲法のイロハをわきまえない言説がたくさん飛び交っていますので、私たちとしては、そもそも憲法とはどういうものなのかということを根っこから考え、憲法はどうしてつくられ、どういう役割を果たしてきたか、変えたらどういうことになるか、一つひとつ丁寧に話していく対話が必要だと思います。
沖縄県知事選挙勝利へ--沖縄建白書での団結、本土の連帯を
最後に、沖縄県知事選挙の勝利のために、頑張りましょう。総選挙で、沖縄1区、「オール沖縄」の赤嶺政賢さんは、惜敗したものの得票を伸ばす大健闘でした。総選挙のさい、那覇市にうかがい、玉城デニー知事、高良さちかさんなど、「オール沖縄」の代表者のみなさんとご一緒に訴えたさいに、立憲民主党の県連代表の方も一緒に訴え、沖縄建白書で団結するのが「オール沖縄」だと言われ、赤嶺勝利のために頑張るとの決意を語りました。私は、ここに団結の原点があると思います。
2013年に沖縄県のすべての自治体の長と議会の議長が署名・捺印(なついん)してつくったのが沖縄建白書で、普天間基地の閉鎖・撤去、県内移設断念、オスプレイ撤去の3点で、翁長雄志那覇市長(当時)が中心になって沖縄県民の総意をとりまとめ、安倍政権に提起しました。文字通りの超党派の合意です。私は、沖縄建白書という原点で、党派を超えて、沖縄県民が団結することにこそ、沖縄の未来があるし、「オール沖縄」の未来があると思います。それに本土もかたく連帯して頑張りたいと思います。

