閉幕の舞台は2千年の歴史をもつという円形闘技場でした。古代ローマの時代に建てられたアレーナ・ディ・ベローナ。ミラノ・コルティナ五輪の閉会式が行われました▼そこは昔、剣闘士同士や人間と猛獣が死闘をくりひろげた血なまぐさい場でした。一堂に集めた市民を熱狂させた見世物。身分によって席が分けられ、それを意識させる役割も果たしたといわれます▼神への祭典だった古代オリンピックの競技も、肉体の強さを争う男性だけのものでした。スポーツを通じて心身を鍛え、暴力を排したルールのもとでフェアに競い合い、友情を深めて世界平和に貢献する。五輪の発展は人類進歩の歴史でもあります▼今大会、国境をこえて健闘をたたえあい、抱きあう光景が各競技で見られました。若者に人気のスノーボードは、国や順位に関係なく仲間としてリスペクトしあうことが文化になっていると。その姿は五輪精神を体現していました▼「平和や団結、尊敬の最高のサインだと思う」。国際オリンピック委員会のコベントリー会長が象徴にあげたのがフィギュアスケート女子。日本の中井亜美選手のメダルが決まった瞬間、優勝した米国のアリサ・リュウ選手が抱きつき喜んだ場面でした▼力による支配、絶えない戦火が暗い影を落としている時代にあって、「分断された世界ではなく、別の世界を築けることを私たちは示した」。大会組織委のマラゴ会長はそう訴えました。人びとはつながりあうことができる、人間賛歌を高らかに。
2026年2月25日

