「とにかく成長のスイッチを押して、押して、押して、押して、押しまくってまいります」。高市早苗首相が20日に国会で行った施政方針演説の一節です。しかし、間違った「スイッチ」を押しまくれば、物価高や低賃金に苦しむ国民をいっそうの苦難に突き落とすことになります。
■大企業もうけても
高市氏は演説で、総選挙の結果を受け「これまでの政策の在り方を根本的に転換していく」と述べ、「本丸」は「責任ある積極財政」だと強調しました。
具体的には、人工知能(AI)、半導体、造船、エネルギー分野などへの投資促進にてこ入れをし、雇用と所得を増やし、事業収益と税収が上がる「強い経済」をつくると宣言。国民の暮らしと未来への不安を「希望」に変えていこうと呼びかけました。
しかし、これは、大企業をもうけさせれば、それが労働者に滴り落ちて経済成長するという、破綻済みの政策を、新しい装いの下にさらに加速させようというものです。大企業がもうけを賃上げに回さず、株主の配当や内部留保に優先的に充てる構造を根本から変えない限り、経済の低迷から抜け出すことはできず、「希望」は見えません。
高市氏は、「強い経済」とともに「強い外交・安全保障」も確立するとし、日米同盟を基軸に、自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有する国々と連携していくと語りました。しかし、米国のトランプ大統領は国内外で「法の支配」を否定し、「力の支配」を推し進めています。
高市氏は、国連憲章・国際法に違反したトランプ政権のベネズエラ侵略などの暴挙には一切言及せず、3月に訪米する意向を示し、大統領との信頼関係をいっそう強固にすると述べました。トランプ氏にこびへつらい、国際法違反を批判することもできないで、何が「強い外交」か。
中国に対し、力による一方的な現状変更の試みを批判したものの、こうした態度では全く説得力を持ちません。
■恐ろしい理想の姿
高市氏は中国を念頭に、「長期戦への備え」など「主体的に防衛力の抜本的強化を進める」ため、国家安全保障戦略など安保3文書を前倒しで改定すると表明しました。同盟国に軍事費の国内総生産(GDP)比5%への増額を求めているトランプ政権の軍拡要求に「主体的に」応えようとするものです。
日本の軍需産業の強化につながるとして殺傷兵器の全面的な輸出解禁に向けた検討も表明しました。憲法に基づき国際紛争を助長する武器輸出はしないとしてきた「平和国家」の理念を放棄し、「死の商人国家」になるものです。
高市氏は国の理想の姿を物語るのが憲法であり、改憲に向けた国民の間での議論の深まり、国会発議の早期実現に期待すると踏み込みました。狙いは「戦争国家づくり」であり、それを「理想の姿」というのは恐ろしいことです。
大企業最優先、日米同盟絶対の自民党政治の転換なしに、国民の暮らしや日本の平和は守れない―。その声を広げていくことが必要です。

