今回の総選挙は極めて異常な選挙でした。高市早苗首相は、国会審議も行わないまま衆院を解散。通常国会召集日の衆院解散は1966年以来60年ぶりで、通常国会が1月に召集されるようになってからは初めてでした。解散から投開票までは戦後最短のわずか16日間しかなく、真冬の2月の投開票は90年以来36年ぶりという異例づくしでした。
(写真)第51回衆院選で投票する有権者=8日午前、東京都杉並区
すべては高市首相の自己都合によるものでした。国民が苦しむ物価高に有効な手だてを打てず、トランプ米大統領の「力の支配」を振りかざす数々の無法に一言の抗議もできない。内政も外交も行き詰まり、首相自身の「政治とカネ」の問題や統一協会と自民党との癒着が次々と明るみに出て、国会審議に耐えられないとして、支持率が高いうちに解散に打って出るという保身と延命のための大義なき解散でした。
高市首相は3日の街頭演説で「予算委員長だって野党だし、私にばかり当たる」(さいたま市)と不満を漏らしました。国会で答弁したくないからと、2026年度予算案の審議さえも放り投げるという、国民そっちのけだったことを示しています。
論戦から逃げ
選挙戦では「高市早苗でいいのかを国民が決める選挙」だと言い募り、この一点で選挙を押し切りました。「国論を二分する政策、改革に挑戦する」といいながら、具体的な中身を示して論戦することもありませんでした。選挙期間中、唯一の党首討論だったNHK「日曜討論」を突如欠席。政策論争から逃げ、「白紙委任状」だけを求める卑劣さでした。
解散から投票まで16日間という超短期の選挙日程を設定し、有権者が政策を吟味し、理解を深める時間も十分に与えませんでした。厳冬期の選挙だったため、大雪の影響で公設掲示場や投票所などでは頻繁な除雪が必要になり、街頭演説の機会も制限され、有権者に判断材料が提供される機会も減りました。雪などの影響で、投票終了時刻を午後8時から繰り上げる投票所も数多くありました。
高市首相の自己都合は、民主主義の根幹をなす選挙に重大な影響をもたらしました。
理念なき野合
一方、野党はどうだったか。立憲民主党が公明党に吸収された「中道改革連合」は、基本政策で安保法制合憲、原発再稼働容認を明記。野田佳彦共同代表は公示前の日本記者クラブの党首討論で自民党との政策の違いを説明できないなど、高市政権と対抗する立場を持ちませんでした。政策的な旗印もないまま「中道」だけを掲げる理念なき野合は、自民党政治を変えたいという受け皿にはなり得ませんでした。
国民民主党や参政党も、あからさまに高市政権への協力姿勢を示すなど、多くの政党が自民党政治にのみ込まれていく異様な政治状況が生まれました。
日本共産党が高市政権と正面から対決し、自民党政治の転換を訴えたのとは対照的でした。
自民党単独で過半数超えの結果となりましたが、高市首相が「白紙委任」を得たとして暴走することは許されません。
高市首相は食料品の消費税ゼロについて、財源を示せず迷走し、公示後には語れなくなりました。選挙中、福岡市で高市首相の演説を聞いた人は「物価高対策を聞きたかったが、それがなかった」と話していました。また、首相は、国民を苦しめる物価高を引き起こしている異常円安を歓迎する発言まで行いました。高市自民党では国民の期待に応えられないことは明らかです。
選挙終盤に高市首相が持ち出した9条改憲に対しても、X(旧ツイッター)で「#ママ戦争止めてくるわ」との投稿がトレンド入りするなど、平和を求めて投票に行こうという意思表示が広がりました。
統一協会との癒着の問題でも新たな疑惑が浮上しており、高市首相の説明責任が求められています。国会内外での国民の監視とたたかいにより高市政権の暴走を止めることは可能です。

