【ベルリン=吉本博美】南欧スペインで、政府が約50万人の非正規移民に在留・労働許可を与える大規模な計画を進めようとしています。欧州全体で排外主義を唱える極右政党の台頭や政府による移民受け入れの厳格化が広がる中、一石を投じる動きとして注目されています。
スペイン政府は1月27日、同国内にいる非正規移民に在留資格と就労許可を出し、安定した定住を促進する計画を開始すると発表しました。サイス移民相は、「政府は人権、社会への統合、共生という価値観に基づき、経済成長と社会の調和を達成する移民受け入れモデルを広げていく」と表明しました。
1月時点で、中南米出身者を中心に約84万人が在留資格を持っていないと推計されています。多くが農業や清掃業、介護分野などで、低賃金や不当な労働条件下で働いています。
政府は、国内で少子高齢化と労働人口の減少が進む中、移民がすでに農業などで重要な役割を果たしていると指摘。在留資格と就労許可を与え、正式な経済・社会活動に組み込むことで納税や社会保険料の増加、労働力の安定化が見込めると説明しています。さらに社会保障や基本的権利を得られるようにすることで「社会的排除を減らす」としています。
在留・就労許可を得るため、申請者はスペイン国内に滞在していることに加え、5カ月以上の居住実績と重大な犯罪歴がないことを証明する必要があります。就業分野は問わず、最初の申請では1年間の許可が与えられ、更新も可能です。申請期間は4月~6月末の予定。今回の受け入れ計画は国会での審議を経ずに、閣議決定で法令化されたものです。
政府がこうした計画を発表した背景には、移民支援に取り組んできた市民運動がありました。「書類のないまま働き続けている人々を合法化し、社会保障の対象とすべきだ」として、2021年ごろから人権団体やNGOなど約900の市民団体が署名活動を開始。憲法に基づく市民による立法発議を目指し、2022年末には70万筆の署名を集めて議会に提出していました。
スペイン政府が、今回の市民発の移民受け入れ計画を発表したことに対し、歓迎の声が上がっています。国際人権NGOのPICUMは「人権保護・尊厳回復に寄与する政策だ」と評価。署名集めを推進したネットワーク「今すぐ合法化を」は、「市民が求めていたことが反映された」と述べ、計画の周知や現場窓口の対応が適切に行われるかを注視していくとしました。

