高市早苗首相は14日、23日に召集される通常国会の早期に、衆院を解散する意向を自民、維新両党幹部に伝えました。何のために選挙をやるのか。何一つ大義を語れないまま、統一協会との関係や「政治とカネ」を巡る疑惑から逃げるために急きょ選挙に走り、国民の暮らしをおきざりにし、地方自治体に過大な負担を押しつける―。まさに究極の“自己都合解散”です。
(写真)解散検討の報道を受け、緊急宣伝する小池晃書記局長の訴えを聞く人たち=11日、横浜市西区
ゆきづまり逃げる
なぜ、このタイミングで解散・総選挙なのか。そもそも、高市首相は昨年末の会見で「目の前でやらなければいけないことが山ほど控えているので、解散については考えている暇がない」と述べていました。今年1月5日の会見では「国民に高市内閣の物価高対策、経済対策の効果を実感いただくことが大切だ。こうした目の前の課題に懸命に取り組んでいるところ」としていました。実際、高市政権は物価高対策で有効な手を打てないままであり、円安も進んでいます。
それにもかかわらず、解散に踏み切る目的は何か。与党関係者は「首相は昨年末時点では、早くても通常国会後(6月以降)の解散を想定していたようだ」と証言。急転直下したのは、「年始以降、首相周辺の政治資金をめぐる(国会での)追及の可能性が高まってきた」からだと指摘します。
高市首相が代表を務める政党支部が政治資金規正法の定める上限をこえて企業献金を受けていた問題で、首相は国会で「支部への献金は私への献金ではない」と言い逃れていました。しかし、共同通信は8日、高市首相が2005年以降の7回の衆院選で、自身が代表を務める自民党支部から計6474万円の寄付を受けていたと報道。「選挙のための総収入の8割超を支部からの寄付が占めていた計算」として、首相の国会答弁は実態と乖離(かいり)していると指摘しました。
加えて、あげられるのが統一協会との癒着です。前出の与党関係者は、長島昭久首相補佐官が統一協会の信者だった問題に言及しました。
統一協会が日本での政界工作などを韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁に報告した内部文書によると、2021年の総選挙で290人もの自民党候補が応援を受けていました。高市首相の名前は32回も登場し、「高市氏が自民党総裁になることが、天の最大の願い」と報告されています。
さらに、「台湾有事は存立危機事態」という首相答弁に端を発した中国との関係悪化、レアアース(希土)をはじめとした輸出規制による経済への打撃、止まらない物価高に何ら有効な手を打てないことから、今後は支持率が下がり続けるしかないといったマイナス要因も指摘されています。
首相が自らの疑惑と、内政・外交のゆきづまりによる支持率低下の「芽が出る前に先手を打つ。支持率が高いうちに勝負する」(別の与党関係者)のが真相だとみられています。
そのため、最短で23日解散→27日公示→2月8日投票という、前例のない最短日程を軸に検討が進んでいます。まさに、逃げの選挙なのです。
石破茂前政権でさえ24年の解散・総選挙は、所信表明演説とそれに対する代表質問を行ってから実施していましたが、冒頭解散なら、施政方針演説も行わず、代表質問も受けないことになります。
国政選挙の私物化
国民生活にかかわる予算案の審議は通常国会の最優先課題です。このため通常国会冒頭での解散は1992年以降一度もありません。冒頭解散となれば、予算審議は後回しとなり、年度内成立を目指すとしてきた政府の方針とも矛盾します。
2025年11月の実質賃金は前年同月比2・8%減で11カ月連続でマイナスとなり、物価上昇に追いつかない状況が続きます。25年の企業倒産は1万件を超え、倒産件数は4年連続で増加。暮らしも営業も悲鳴を上げるなか物価高対策も予算審議も投げ出しての解散には、与野党からも疑問や不満の声が出ています。
自民党の石破茂前首相は「3年連続で国政選挙となる。何を国民に問うのか、これから首相は明確に述べねばならない」(同日)と指摘します。
また、選挙事務を担う自治体には新年度予算編成作業と重なり、困惑が広がっています。千葉県の熊谷俊人知事はSNSに「準備期間も短く、職員の気持ちを思うと、やむを得ないとは言え、いたたまれない気持ちになる」と投稿しました。
衆院選の投開票日は2月8日か15日が想定され、厳しい寒さのなかの選挙戦となります。大雪などの悪天候に見舞われる可能性もあり、投票行動が制限されないか懸念があります。受験シーズンとも重なるため、18歳選挙権を得た受験生への投票機会の保障も問われます。
仮に通常国会冒頭の1月23日に衆院を解散し、投開票が2月8日となれば、解散から投開票までの期間は16日間で過去最短となります。高市首相からはいまだ解散の大義すら示されず、有権者が政策などを吟味し投票を判断するための期間も制限されます。通常国会冒頭での解散は、政策論など抜きの「選挙私物化」にほかなりません。
維新も出直し便乗
日本維新の会も、総選挙に乗じて「国保料逃れ」に対する追及から逃れようとしています。
「赤旗」日曜版の報道を受け、維新は7日に党内調査の結果を報告。兵庫県議ら4人の党所属地方議員が一般社団法人の理事に就任することで高額な国民健康保険料の支払いを逃れていたと認めました。
議員は国保加入が基本ですが、回答した特別党員(党所属の国会議員や地方議員ら)803人のうち45・3%の364人が国保ではなく、より安い社会保険に加入していたことも判明。国会が始まれば、維新全体の問題として野党から厳しい追及を受けるのは必至でした。
加えて、吉村洋文代表(大阪府知事)は13日、解散・総選挙に合わせて知事を辞職し、大阪都構想の是非を問う「出直し選」に踏み切る考えを示唆しました。大阪市の横山英幸市長も辞職し「ダブル選」とする考えです。
2度も住民投票で否決された、大阪市を廃止する「都構想」を押しつけるために、総選挙のどさくさに紛れて住民の議論・理解もないまま「出直し選」を行い、再選を口実に「都構想」を押しつける党利党略に他なりません。
厳しい審判今こそ
高市政権の支持率は高い水準を維持していますが、総選挙で大勝できる保障はありません。NHKの自民党の支持率は、石破前政権時よりも低い状況です。
早期解散も自民党内への根回しは一切なく、党内には不満や不安が広がっている状況です。
内政も外交も行き詰まりを深めています。
内政では、「強い経済」を掲げながら、暮らしを「強く」するどころか、最低賃金1500円の目標も投げ出し、労働時間規制緩和、社会保障改悪など、さらに暮らしを追い詰める政策を強行。外交では、自らの「台湾発言」で極度に悪化した日中関係を打開する展望が全くなく、経済界からも厳しい批判の声があがっています。米国トランプ政権の無法なベネズエラ侵略を何一つ批判できず、これまで日本政府がまがりなりにも掲げてきた「法の支配」という外交の看板と深刻な矛盾をきたしています。
一方、一部野党は高市政権を中心とした右翼的潮流に迎合する傾向を見せていますが、日本共産党はこれに対し、時流に流されず、正論を貫いていくことを訴えています。高市政権の「自己都合解散」に対して、主権者・国民の厳しい審判を下すときです。

