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2026年1月14日

きょうの潮流

 今日は第174回芥川賞の発表日。恒例の候補作一気読みです▼海と霧の気配に包まれるのは久栖博季(くず・ひろき)「貝殻航路」。北海道を舞台に「北方領土」の貝殻島に立つ灯台を心のよすがにして生きる女性を描きます。奪われた島はかつてアイヌから奪った土地でした。故郷の喪失と尊厳の剥奪を歴史の水脈に刻みます▼畠山丑雄(はたけやま・うしお)「叫び」は万博開催中の大阪で自堕落に暮らす男が主人公。1940年、日中戦争で頓挫した東京万博に行きたかった地元の青年の存在を知り、自身の生きる意味を見いだします。青年は「満州」で、関東軍の資金源となるアヘンの原料のケシを「天皇陛下のための花束」として栽培していました。個人をのみこむ国家のからくりを告発します▼坂本湾「BOXBOXBOXBOX」は無機質で奇妙な労働小説。配送センターのベルトコンベヤーにはりついて、ひたすら荷物の箱をレーンに載せ続ける作業員たちの空虚さと、病んでいく心身をあぶり出します▼鳥山まこと「時の家」。解体寸前の思い出深い家に入り込み細部をスケッチする青年の筆先から、40年にわたる3代の住人たちの人生が浮かび上がります。二つの震災とコロナ禍を経た出会いと別れ。記憶とは何かを問う一編▼坂崎かおる「へび」は、ぬいぐるみのヘビの視点で発達障害の息子と人形になってしまった妻を抱える男の煩悶(はんもん)が語られます。家族とケアの問題に異次元をしのばせ、価値観の転換を促す意欲作。自分にとって大切な作品を見つけてみませんか。