トランプ米政権が南米のベネズエラへの大規模な軍事攻撃に踏み切りました。米特殊部隊がマドゥロ大統領と妻を拘束し、米国へ連行しました。昨年来、退陣を求めて軍事的圧力を強めた末に武力で同氏を排除したものです。
これは明白な国際法違反です。国連憲章第2条第4項は武力行使とその威嚇の一般的禁止の原則を定めています。主権尊重と内政不干渉は国際法の基本原則です。
いかなる理由であれ、主権国家に対して軍事攻撃を行い指導者を拘束・連行する権利はどの国にも与えられていません。国連憲章と国際法を乱暴に踏みにじる侵略であり、この暴挙を強く非難します。
■新しい植民地支配
危惧すべきは、この米政権が自国の国益のみを主張し、国際秩序の擁護には何の関心も示していない点です。昨年12月に公表された米国家安全保障戦略(NSS)は、「米国が世界秩序全体を下支えする時代は終わった」と述べ、西半球の支配確立を最重視する方針を示しました。
南北アメリカ大陸をいわば自国の縄張りとみなす、19世紀以来の米外交方針モンロー主義の“トランプ版”といえるものです。
トランプ大統領自身が3日の会見で、「新たなNSSの下で、西半球における米国の優位性は二度と疑問視されることはない」と、今回の軍事行動をこの戦略実行の一環と位置付けたのは重大です。
第2次世界大戦後、国連憲章と国際法に基づいて、主権平等と武力不行使を大原則に築かれてきた国際秩序を、この政権がもはや一顧だにしていないのは、今回の軍事行動からも明らかです。
トランプ氏は会見で、埋蔵量世界一を誇るベネズエラの原油資源に対する野心をあけすけに語りながら、米国が同国を「安全で適切、賢明な政権移行が実現するまで、運営する」とも主張しました。
縄張り内の意に沿わない政権は力ずくで排除してでも、自国権益の拡大をためらわない―。新戦略と今回の軍事行動が共通して示しているのは、こうした力による地域の支配を目指す大国の姿です。
日本共産党の志位和夫議長は4日、「新しい植民地支配の宣言だ」と米政権の時代逆行姿勢を批判しました。
■法の支配結束こそ
ロシアのウクライナ侵略しかり、国際平和に特別の責任を負っている大国が、ルールに縛られることなく隣国や中小国に横暴を振るえば、世界は力が支配するジャングルと化します。
国連や欧州連合(EU)、中南米諸国、米国内からも国際法違反だという批判の声が出ているのは当然です。力が支配する世界への逆行を許さないために、国際社会は今こそ法の支配の擁護で結束する必要があります。国連をはじめとする場で、国際秩序を守る立場を示す各国の外交的対応が焦点になります。
高市早苗首相は4日のSNS投稿で、米国の明白な国際法違反に対し懸念さえ示しませんでした。盲目的に日米同盟を続けるのか、法の支配に基づく国際秩序を守る自立的な外交の道を歩むのか、日本は厳しく問われています。

