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2026年1月5日

ベネズエラ侵略

トランプ政権、植民地支配狙う
石油権益求め「モンロー主義」言及
外信部長 菅原啓

 米軍は3日、南米ベネズエラの首都カラカスで大規模攻撃を行い、マドゥロ大統領らを拘束し、米国に連れ去りました。トランプ米大統領は、米国民に多大な被害をもたらす麻薬密輸組織の首謀者であるマドゥロ氏を米国内で裁くためだと説明しますが、こうした一方的な武力行使は国連憲章を踏みにじる許されない侵略行為です。

 国連憲章は第2条第4項で、武力行使の原則禁止を定めています。

 他国から攻撃を受けた場合は例外として自衛権の武力行使が認められますが、今回は、ベネズエラ側から米国に何らかの攻撃が行われた事実はありません。

 マドゥロ政権が麻薬組織と結託あるいは一体化しているという米国側の主張を、ベネズエラ側は繰り返し否定してきました。マドゥロ氏が麻薬組織の首謀者だったとしても、米国が一方的に軍事力を使って拘束する権限はないのです。

 ベネズエラ沖のカリブ海や東太平洋ではこの間、米国が勝手に「麻薬運搬船」と見なした小型船を相次いで空爆し、100人を超える人々を殺害してきました。こうした攻撃についても国際法違反と厳しく批判してきたコロンビアのペトロ大統領は3日、今回の米軍の作戦を「ベネズエラと中南米の主権に対する侵略だ」と非難しました。メキシコ、ウルグアイなど中南米では多くの国が、国連憲章第2条第4項に直接・間接に触れながら米国の攻撃を糾弾しています。

 ブラジルのルラ大統領は国際法を踏みにじっての他国への攻撃は「暴力・混沌・不安定の世界、強者の法が多国間主義を圧倒する世界への第一歩だ」「ベネズエラの主権の重大な侵害、国際社会全体にとって極めて危険な前例となる」と厳しく批判しています。

砲艦外交の歴史

 トランプ政権は昨年12月に発表した国家安全保障戦略(NSS)の中で、西半球(南北米州)を自らの「勢力圏」であるとするモンロー主義(1823年に当時のジェームズ・モンロー米大統領が表明)を打ち出していました。米国にはこのモンロー主義を土台に19世紀末から、中南米各国で自らの利益追求のために意に沿わない政権を武力を背景に威嚇する「砲艦外交」、実際の武力行使や米中央情報局(CIA)による秘密作戦での政権打倒や干渉行為などを繰り返してきた歴史があります。

 トランプ氏は3日の記者会見でも、モンロー主義に触れ、「西半球における米国の優位性が再び疑問視されることは決してない」と強調。安全で適切な政権移行までベネズエラを運営していく方針、米軍投入の可能性を示すとともに、ベネズエラの石油権益を取り戻すと訴えました。

 トランプ氏のベネズエラ「運営」方針は、モンロー主義の新たな実践であり、自国の都合で他国を支配下に置く新たな植民地支配宣言ともいえるものです。

パナマ侵攻想起

 米軍が直接攻撃を行い、外国政府のトップを拘束した点で、今回のベネズエラ攻撃は1989年12月~翌年1月のパナマ侵攻を想起させます。この時も、米国はパナマの権力を握っていたノリエガ将軍の麻薬取引疑惑を主張。ノリエガ氏は米国に送られ、裁判で有罪とされました。

 パナマ侵攻は、国際法違反として世界中から批判を浴び、国連総会は非難決議を圧倒的多数で採択しました。そして、侵攻の目的は、当時いわれていたような「在留米国人の保護」でも、麻薬対策でもないことが後に明らかになっていきました。米国が狙っていたのは、両国間の条約により1999年までにパナマに返還しなければならなかったパナマ運河の支配継続、そのためのパナマ国軍の解体でした。

 ノリエガ氏追放後、米国の意図を受けたパナマの新たな政権は国軍を解体しています。ただ、侵攻によって多数の一般市民が殺されたパナマでは、米軍の支配への抵抗が粘り強く続き、パナマ運河は条約の規定通り99年末にパナマのものとなりました。

 米国は国際的な非難を浴びながら侵攻し、当初の目標は果たしたように見えましたが、最終的な目標、パナマ運河の支配維持には成功しませんでした。

 トランプ氏は、今回のベネズエラでの軍事作戦の「成功」に上機嫌のようです。

 しかし、今回、米国が強行した攻撃は、中南米を「裏庭」視し、無法な手段で攻撃し、支配しようとする米国の姿を改めて浮き彫りにしました。「国際法と国連憲章の原則が尊重されなければならない」(欧州連合カラス外交安全保障上級代表)、「地域全体に深刻な影響を及ぼしかねない」(グテレス国連事務総長)など国際的な批判も高まっています。

 攻撃を受けたベネズエラはもとより、米国の乱暴な干渉の記憶を持つ中南米各国の国民の大多数も米国への警戒や反発を強めざるをえないでしょう。それは、トランプ氏の真の目的といわれる石油資源の確保の前途を危うくする可能性を秘めています。

 実際3日には、今は親米政権で政府が米国の行動を支持しているアルゼンチン、パナマを含め各国で、多くの市民が街頭に繰り出し、「米国はベネズエラから手を引け」と声を上げています。