沖縄県名護市長選(来月18日告示、25日投票)まで1カ月を切りました。辺野古新基地建設に明確に反対する、おながクミコ予定候補と、新基地と引き換えの交付金にすがる現職との事実上の一騎打ちです。政府は市長選を前に、新たな区画への土砂投入を行い、中断していた地盤「改良」工事を再開。市民の「あきらめ」を誘おうとしていますが、工事は思惑通りに進んでいません。市民らは「無謀な工事いますぐやめろ」と不屈のたたかいを続けています。
(写真)地盤改良船(赤白塗装の塔が3本セットになっている船)6隻が並ぶ大浦湾=24日、沖縄県名護市辺野古
防衛省沖縄防衛局は今年1月、「マヨネーズ状」の広大な軟弱地盤が広がる大浦湾側で地盤工事に着手しました。ところが台風や波など気象・海象条件により6月10日以降、地盤改良船6隻すべてが撤退。10月1日には1隻が大浦湾に戻るも数日で再撤退するなど、工事は半年以上中断されました。
辺野古の海で抗議・監視活動を行っている「ヘリ基地反対協議会」海上行動チームによると、大浦湾に6隻が再びそろったのは12月1日。しかし実際に工事を再開できたのは、さらに半月以上あとの同19日でした。
地盤改良船はその後も“フル稼働”状態とは言えず、24日午前には、軟弱地盤の改良が必要な海域に4隻が入っていましたが、砂くい打設(打ち込み)作業は確認できず、残りの2隻は外れた位置にとどまっていました。工事再開以前に打設が完了した砂くいは約2900本にすぎません。一方、地盤改良に必要な砂くいなどは約7万1000本にのぼります。防衛局は、大浦湾側の着工から新基地の完成まで約12年としていますが、このままのペースでは地盤「改良」だけで20年以上かかります。
そもそも、最深で海面下90メートルに達する軟弱地盤の改良は現在の技術では不可能です。このままでは、“沈み続ける基地”になってしまいます。
大浦湾では、護岸を構成するケーソンの仮置き場となる海上ヤード造成も行われていますが、同湾に造成用の石材を投入していた作業船の姿は24日午前の時点で確認できませんでした。
防衛局は11月28日、大浦湾側でも土砂投入に着手しました。しかし、同チームによると、「埋立区域(3)―3」の埋め立て開始の後、海上ヤード造成の石材投入用作業船は大浦湾から姿を消したといいます。
「A護岸」と呼ばれる区域での鋼管を打設する作業も進行中です。ただ、「A護岸」の造成に必要な約1000本の鋼管のうち11月末までに打設が完了したのは約350本と、10月末時点から10本しか増えていません。
年末の24日にも抗議船上から抗議・監視を行っていた島袋正さん(65)は、新基地完成は「どう考えても現実的に無理だ」と断定します。
「自然壊し戦争の準備」
新基地反対の人 応援当然 住民ら「声上げ続ける」
(写真)米軍キャンプ・シュワブゲート前で続けられている座り込み=23日、沖縄県名護市辺野古
(写真)大浦湾に土砂を投入するダンプトラック(中央)=25日、沖縄県名護市辺野古
島袋さんは、費用は「何兆円にもなるのではないか」と話します。実際、新基地建設費用はうなぎ登りです。
政府は軟弱地盤の改良工事のために費用想定を9300億円に引き上げましたが、その7割を昨年度までに使いました。一方、埋め立てを終えたのは全体の約16%にすぎません。
島袋さんは「こんな状態が続いたら日本が滅ぶ。庶民の生活が苦しくなってどんどん衰亡していく」と危機感をにじませました。
海上行動チームメンバーで名護市在住の女性(47)は、「稲嶺進さんが市長だったときは、(新基地)反対でやっていたが、(現職の)渡具知武豊市長は(基地問題に)あまり触れない」と批判しました。
女性は、「クミコさんは市議だったとき、辺野古に泊まり込みで現場に来ていた。高江(同県東村)の(米軍ヘリパッド=オスプレイパッド〈着陸帯〉建設工事への)抗議行動が激しかったときにも毎日のように来てくれた。現場に寄り添ってくれる人で信頼感がある」と、名護市長選に立候補するクミコ氏の勝利に期待を込めました。
同チームメンバーの中原貴久子さんは、「クミコさんの『新基地建設反対』の訴えには人々の穏やかで平和で安全・健康な暮らしを守りたいという思いが込められていると思う」と強調。「自然が壊され戦争の準備が着々と進み、それに多額の税金が使われるのはどう考えてもいい選択とは言えない。これに反対する人を応援するのは当然だ」と語ります。
教育関係者の安里邦夫さん(53)は「強引に新基地を造っている状態が許せない」と語りました。「何もやらないと基地を造られてしまう。何もやらないで次の世代が苦しむより、私はちゃんと反対したよというのを子どもに伝えながらやっている」「全国民に、国によって市民が苦しめられていることに気づいてほしい」と話しました。
「基地建設はただちにやめろ」「軟弱地盤で完成はしないぞ」「税金を無駄に使うな」―市民・県民らは海上だけでなく米軍キャンプ・シュワブゲート前の座り込みでも声を上げ続けています。25日には、14年7月7日の座り込み開始以来4190日目を迎えました。
座り込みに参加した女性(74)は、「辺野古の現場に(抗議する人が)誰もいなければ、(新基地建設を)認めたことになってしまう」と語り、「政府よりも一日も長く頑張る。向こうが諦めるまで、向こうよりも一日長く頑張ればこちらの勝利だ」と力を込めました。

