日本共産党はこの間、志位和夫議長の『Q&A いま「資本論」がおもしろい』(赤本)を力にしながら、『資本論』を読むムーブメントを日本で起こしていくことを呼び掛け、志位議長を先頭に、幅広い方々との対話・懇談やインターネット番組への出演などに取り組んでいます。
その一環として今年10月に行われた、斎藤幸平・東京大学准教授と志位議長との対談は、インターネット番組ReHacQ(リハック)のユーチューブチャンネルを通じて配信され、視聴者コメント欄には前編・後編をあわせて3800を超える感想や意見が書き込まれています。
本紙既報のとおり、それらのコメントには「右派」「右寄り」「保守」などを自称する人たちから、党派を超えた好意的な反応が多く含まれています。
「愛国心のある右派だが、今回の動画はとても好き」
「私はどちらかと言うと右寄りだけど、結構目指す理想は一緒でびっくり」
「自分はおそらく保守寄りな思考だと思っているのだが、こういう左派的な思考から学ぶべき点はたくさんあるように感じた」
さらに、コメントの内容に目を向けると、そこには、日本における「『資本論』を読むムーブメント」が今後さらに大きく広がる可能性を感じさせる、いくつかの特徴があります。
資本主義への疑問の声
まず、視聴者が直面する目の前の問題と対談の内容とを結びつけながら、資本主義の矛盾について考えたり、それを乗りこえる展望を模索したりするコメントが目立ちます。
「心療内科やってます」というある視聴者は、「診療室は社会の縮図。長時間労働、低賃金で病む人ばかり。若い人も学費のためにアルバイトして病んでいます。父親が長時間労働で子どもを母親任せ、多くの母がワンオペ育児で病んでいます」としながら、「医療経済的にも、志位さんの言われる政策は急務と思う」と書き込んでいます。
「都合があり会社員をやめてフリーランスに移行した」という別の視聴者は、「今駅に行って通勤する人々を見ていても気力・体力のほとんどを労働に捧(ささ)げているように見えます。働くことが楽しいことはいいことだけど、人生を通してそれでいいのか?を考える機会、自由な時間を皆が持てるようになることが、豊かな社会になるのではないか」と投稿しています。
「身の回りの20代の人が、働き始めて暫(しばら)くして精神を病み自死するといったこと」が立て続けにあったという視聴者も、「今一度労働のあり方を考えています。労働者の手を借りて稼ぐ側が大きな顔をしている。そんな時代は終わって欲しい」と訴えています。
資本主義の現状に疑問を述べたコメントや、そこから「マルクス」「共産主義」に関心を持ったと語るコメントも少なくありません。
「共産党員ではありませんが、資本主義には疲れました。働く為(ため)に生きているようで自分の人生何なんだろうと思ってしまいます」
「共産主義を支持できるかは別にして、現代の資本主義になんとなく違和感ある、もっと良い仕組みは作れないのかと思っている人はきっと少なくないはず」
「資本主義の限界という現実から目を逸(そ)らさず、先入観をなくして、『マルクス』『共産主義』『資本論』というワードを学び直す必要があると思いました」
「150年以上前の書物が古いどころか新しいというのが私の中での発見です。まだまだ人類はマルクスから脱してもいない!?」
斎藤氏の本を読んだことから「新しい社会のあり方」を考えるようになったという視聴者は、「崖っぷちの環境問題」を打開するには「脱成長しかない」と思いつつ、「現実問題として、天変地異でもないと無理なんじゃないか」と「モヤモヤ」していたと言います。それが、今回の動画を見て、「(生産力の)質的成長で経済は発展できるっていう志位さんのお話にすごく希望を感じ」たとし、「この質的成長というものがどういうものか、もっと深堀りしてほしいです!」と書き込んでいます。
異なる理論的見解をもつ斎藤氏と志位氏が、率直に意見を交換した対談ならではの感想と言えるでしょう。
マイナスイメージ一新
また、コメント欄には、旧ソ連などの影響による旧来のイメージが大きく変わり、共産主義を見直したとする投稿も見られました。
「志位さん、面白いですね~。共産主義というと中国ロシアを思って印象悪かったけど、スゴイ興味持てた」
「中露などを見て反共を叫ぶ人の愚かさが良く分かりました。学びは大切ですね」
対談では、前編の冒頭、志位氏が、旧ソ連の体制について「働く人が主人公ではなかった」という根本問題を指摘し、「『これができあがった社会主義』だといえる国は、いまの世界にないし、そういうことは過去にもない」と語った場面以外に、旧ソ連や中国について詳しく述べた部分はありません。それにもかかわらず、対談全体を視聴した人たちから“共産主義のイメージが全然違う”という反応がいくつも出されているのは注目すべき点です。
「自由な時間」強い関心
さらに、視聴者コメントで目立ったのは、志位氏が語る「自由な時間」の意義に着目した書き込みです。
「面白い。社会主義の根本は平等ではなく自由時間! そうなんや」
「自由な時間は人間にとって素晴らしい富。人生の時間は限られている。志位さんの本読みたくなった」
「真の富=『自由時間』というくだりは非常に興味深かった。この考え方ならば、確かに労働者は真の富を得難(がた)いのかもしれない」
「自由な時間が増えたら、もっと勉強する人、もっと創造する人、もっと遊ぶ人、もっと料理する人が増えて、結局経済も豊かになりそう」
「本当の豊かさとは、物質的な事ではないなと思います。もちろん最低限は必要だけど。…自然環境が整い、自由な時間があって、平和に暮らせること。それが一番だなぁと思います」
ここには、すべての人間の「自由な発展」、とくに、「自由な時間」の獲得を社会主義・共産主義の中心課題と位置づけた日本共産党の未来社会論が、多くの国民の共感を得られるものであることが示されているのではないでしょうか。
マルクス・ブーム日本でも
「赤本」でも紹介されているとおり、今、ヨーロッパでも米国でも『資本論』への新たな注目が広がり、「マルクス・ブーム」と呼ばれる状況が生まれています。
その根底には、格差・貧困や気候危機など世界資本主義の矛盾の深まり、旧ソ連によりふりまかれたエセ理論の破綻などがありますが、志位・斎藤対談への視聴者の反応には、日本でも同様の「ブーム」が起こる可能性が示されています。
実際、コメントのなかにも“対談動画を見て『資本論』を読みたくなった”とするものが、いくつも書き込まれています。
「ちょっと頑張って資本論を読んでみようかと思った」
「やっぱり『資本論』は読まないとだめかなあ」
「最後の言葉かなり刺さりました。『新しいものを学び自分自身で考えよう』……とりあえず資本論は買って読んでみようと思います」
2026年を『資本論』を読むムーブメントのさらなる発展の年とするため、取り組みを広げていくことが求められています。

