病院の7割、診療所の4割が赤字を抱え、病院団体などから「このままでは地域から病院が消える」という訴えが広がる中で、政府は来年6月からの診療報酬(医療の公定価格)改定率を本体(医療従事者の人件費や設備投資分)3・09%増、薬価0・87%減とし、全体で2・22%引き上げることを決めました。
自民党政権下では2000年度を最後に、消費税増税への対応を除いて診療報酬全体のプラス改定は一度もなく、医療本体もマイナスか1%未満の微増に抑えられてきました。3%台の引き上げは1996年以来、30年ぶりです。
■医療関係者の声で
物価高騰の中での診療報酬引き下げが深刻な医療危機を招いてきました。日本病院会はじめ自治体病院、大学病院、日本医師会、全国保険医団体連合会、日本医療労働組合連合会など幅広い医療関係者の訴えが“医療崩壊”の実情を明らかにし、日本共産党の国会論戦とも相まって国民的な議論となりました。今回の改定は世論と運動の成果です。
引き上げは当然ですが、現場の実感からは一息ついたというところで、医療危機を脱するには不十分です。
いま、閉鎖だけでなく、病床や診療科目を減らす、救急治療をやめるなどの病院も増えています。24年の医療機関の倒産は64件、休廃業・解散は722件で過去最多です(帝国データバンク調べ)。
24年の物価上昇率(生鮮食料品を含む)は前年比2・7%で、このペースで物価が上がれば2年間で5%を超えます。本体3・09%のままでは物価上昇に及びません。全産業平均に届かない医療従事者の賃上げや、診療報酬抑制で滞ってきた設備の更新を考えれば、国庫負担増によるさらなる引き上げが必要です。
■国費の投入が必要
政府は長らく、社会保障費の伸びを高齢化による伸びの範囲内に抑えるとし、病院団体は方針の撤回を求めてきました。今回の診療報酬改定は、政府のその路線が破綻し手直しせざるを得なくなったものです。その一方、24日の厚労・財務の大臣折衝ではこの方針を続けるとし、26年度は薬価引き下げなどで目標を達成する体裁をとっています。
さらに、高市早苗政権は日本維新の会と医療費の4兆円削減で合意しています。診療報酬引き上げは医療費の増加につながるため、診療報酬引き上げの一方で、高額療養費制度の改悪、OTC類似薬や患者の窓口負担増などを強行しようとしています。
また、診療報酬の引き上げは患者の窓口負担や保険料の増加につながります。これを防ぐためにも、医療費抑制政策を抜本的に転換し、国費を投入することが必要です。軍拡をやめ、大企業・富裕層優遇税制の是正が不可欠です。
支援金、文科省の大学病院への運営費交付金・私学助成金などあらゆる手段を活用し医療機関の経営危機打開と運営の安定化を図るべきです。
高市政権が医療改悪を強行すれば国民の批判に直面します。今回、世論と運動で診療報酬アップを勝ち取った成果を力に、高市・自維政権をさらに包囲し、高額療養費などの改悪を断念させましょう。

