(写真)小池書記局長
一、本日、高市内閣が閣議決定した2026年度予算案は、国民の願いであり、日本経済立て直しのカギである消費税減税や賃上げには背を向け、軍事費を異常に突出させるとともに、大企業へのばらまきと、トランプ政権の要求にこたえた対米投資支援を拡大するという、大軍拡、財界・大企業優先、対米屈服の予算案となった。
一、軍事費は当初予算として初めて9兆円を超え、関連経費を含めれば10兆円規模となる。補正予算の追加でGDP比2%を前倒し達成した25年度に続いて、当初予算でも2%に迫る規模となった。高市政権は、トランプ政権の要求にこたえて、来年中にも「安保三文書」を改定し、GDP比3・5%、21兆円以上となるいっそうの軍拡に踏み出そうとしており、それに向けて突き進む予算となっている。
軍事費の中身は、極超音速誘導弾など他国に撃ち込むための長射程ミサイルの開発・取得、攻撃用ドローン取得、次期戦闘機開発など、安保法制のもとで米軍とともに戦争する国づくりに向けたものが目白押しとなっている。軍事対軍事の軍拡競争、軍事的緊張をさらに激化させ、平和を脅かす危険な予算である。
「軍拡増税」では、この間政府が先送りしてきた所得税への上乗せに踏み込み、年度中に増税を開始しようとしている。平和も暮らしも踏みにじる大軍拡計画は断じて許されない。
一、一方、国民の命と暮らしを守る社会保障の予算は2%増と、物価上昇に遠く及ばない予算が続いている。年金改定率も2%の見込みとされ、3%以上とされる物価上昇に比べて、大幅な目減りが必至である。それにくわえて、石破政権時に「凍結」された高額療養費の負担増が「復活」し、OTC類似薬の追加負担導入、「子育て支援」と称する医療保険料への上乗せ負担の開始(初年度0・6兆円)など、給付削減と負担増が目白押しとなっている。
国会での多数派工作のために追加する所得税の減税は、低所得者への恩恵は乏しく、中堅層への減税上乗せも2年限りの措置となっている。すべての人に行きわたる消費税の減税こそ必要である。
前政権が掲げてきた「2029年までに最低賃金1500円」の目標もあっさり投げ捨て、中小企業の1割にも満たない適用しかない「賃上げ減税」を除けば、賃上げのためのめぼしい予算はない。介護労働者の賃上げでも、肝心の訪問介護の基本報酬は引き下げられたままとなっている。
中小企業対策費は+0・3%、農林水産関係予算は+1・1%と、いずれも物価に追いつかない低い伸びである。教育予算は、国民の運動で実現した給食費負担軽減などで増額となっているが、学費値上げと大学の危機が深刻になっているにもかかわらず、国立大学運営費交付金+1・7%、私立大学経常費補助+0・3%と物価高騰に遠く及ばない。教職員多忙化を解決する教員増などにも背を向けている。
物価高騰に苦しむ国民の暮らしを応援するうえでも、大企業のもうけが株主と内部留保にしか回らず経済に還流せずに格差が拡大するという日本経済のゆがみをただすうえでも、本予算案はまったく無策であると言わざるを得ない。
一、AI・半導体企業への1・2兆円もの支援をはじめ、企業への投資減税0・4兆円など、大企業には大盤振る舞いの予算となっている。トランプ政権の理不尽な要求に屈服して政府が進める「80兆円対米投資」に向けて、日本貿易保険への交付国債1・78兆円が計上されたが、これは民間投資のリスクを国民に押し付けるものである。
一、予算規模は122・3兆円と、過去最大となり、金利の上昇で国債費も過去最大となった。政府は新規国債発行を30兆円以内に抑えたとしているが、GX債、AI債、子育て債など、特別会計で別途発行される「隠れ国債」によって糊塗(こと)した結果にすぎない。高市政権の財政運営は、「責任ある積極財政」どころか「無責任な放漫財政」にほかならず、国債金利の急騰=国債価格の暴落のリスクを高め、いっそうの円安と物価高騰を招くおそれが拡大している。こうした事態を防ぐためにも、大軍拡や大企業へのバラマキを中止し、大企業・富裕層優遇税制をただす税制改革に踏み出すことが必要である。
日本共産党は、暮らしと平和をまもるため、政府予算案の抜本的な組み替えを求めてたたかうものである。

