高市早苗政権は、暮らしや外交での行き詰まりが深刻化する中で、生活が苦しいという国民の不満の矛先を外国人に向け、外国人を敵視し、国民を排外主義へ誘導する政策を推し進めています。
11月には関係閣僚会議を設置し、「外国人との秩序ある共生社会の実現について」と題する「首相指示」を示しました。「共生」を掲げながら、排除と管理を強化するもので、重大です。
首相指示は、▽「不法滞在者ゼロプラン」の強力な推進▽在留資格審査や帰化の厳格化▽社会保障制度、外国人学生・留学生への支援見直し▽外国人犯罪対策の強化―などを関係閣僚に求めています。
排外主義とは一線を画すとしながら、個人ではなく「外国人」と一括(くく)りにして取り締まり、排除するものです。
■非人道的強制送還
政府は、外国人観光客のマナー違反と難民認定申請者などを意図的にごっちゃにし、「ルールを守らない外国人により国民の安全・安心が脅かされている」と言い募って、難民認定申請の抑制や審査の「迅速化」、強制送還を加速する「ゼロプラン」を5月に策定しました。
策定後、▽日本育ちの子どもが退去させられる▽家族が引き離される―などの強制送還が相次ぎました。国会前の集会で、子どもらは「命を守ってほしい」と訴えました。
日本共産党の仁比聡平参院議員は国会で、「ゼロプラン」は、難民申請や在留特別許可が不当に認められず、仮放免や非正規滞在となっている人を「不法滞在者」と呼んで差別と偏見を助長し、強制送還一本やりで人道に反し、やめるべきだと迫りました。
仁比議員は、難民不認定に対する不服申し立てで口頭意見陳述が十分保障されていない実態を明らかにし、人権侵害を引き起こしている「入管の闇」を厳しく批判しました。難民条約の立場からかけ離れた入管行政を是正することこそ必要です。
■人権侵害許さない
埼玉県ではクルド人差別が激化し、偽情報の拡散や議員による差別的発言が続いています。しかし、首相指示や関係閣僚会議は「外国人による不安」を強調し、差別やヘイトには一言も言及しません。
日本弁護士連合会の声明は「ゼロプラン」は「『国民の安全・安心を脅かす危険な外国人を退去させる』としながら、実際には、国民の安全・安心に何ら脅威を与えず、かつ、保護されるべき外国人の人権を侵害するおそれが高く、国際人権法に反する」と強調しています。
仮放免で医療保険もなく就労も制限されるなど弱い立場の人たちに対し、一人ひとりを見ず、「非正規滞在者が治安を悪くする」という偏見を固定化することは人権侵害という暴力だと言えます。「クルド人」など特定の属性への不信や差別を助長する政策は断固として許されません。
各地の取り組みに学び、国籍や文化の違いを尊重するための教育や対話・交流の仕組みの整備が必要です。国内人権機関をつくり、難民申請などの在留資格を公正に審査し外国人との共生社会を築こうではありませんか。

