物価高や人件費の増加、急速な少子化の影響により、大学の財政危機が深刻です。
2023年以降、4年制大学7校、短大51校が学生募集停止に追い込まれ、教職員の整理解雇が始まっています。「THE日本大学ランキング2023」で京都の女子大で1位と評価されていた京都ノートルダム女子大学が学生募集を停止したニュースは大学関係者に衝撃を与えました。
少子化により学費収入が減り、私立大学を経営する全国の543法人のうち、約半数の253法人が24年決算で赤字でした(東京商工リサーチ調査)。国立大学では、学費値上げに踏み切る大学が広がっています。研究力低下も深刻です。全国81の大学病院は508億円の赤字となり、事業継続の危機に直面しています。日本の発展を支える知的基盤が失われかねない重大事態です。
■実質的減額が増大
大学の財政危機の原因は、大学予算が物価高や人件費増に対応していないことです。
国立大学では04年の法人化後、運営費交付金が1631億円、13%削減されました。文部科学省は、消費税増税や物価高騰による経費増などにより、運営費交付金は実質的に1900億円の減額だとしています。国立大学協会は、法人化前に措置されていた人事院勧告に伴う人件費増は850億円と試算しています。結局、実質的には2750億円の減額です。
私大経常費補助金の減額も深刻です。経常費補助割合は、私立学校振興助成法成立時の付帯決議で「速やかに2分の1とする」とされていますが、8・5%にまで落ち込んでいます(23年度)。経常的経費は3兆5013億円に増加し、教員や学生数にもとづく経常費補助(一般補助)の算定額も増えています。しかし、政府の予算が増えないために、算定額からの減額(調整額)は、この二十数年間に164億円から1988億円に増大しています。
こうしたもとで政府も「骨太方針2025」に「物価上昇等も踏まえつつ運営費交付金や私学助成等の基盤的経費を確保する」と明記しました。
■定員未充足に懲罰
ところが、24日に行われた来年度予算の財務・文科相折衝では、運営費交付金は188億円増で合意したと報道されています。これは実質減額の7%にすぎません。実質削減を上回る抜本増でなければ危機打開はできません。
重大なのは、文科省が定員未充足の私大の経常費補助を減額・不交付にし、健全な大学を財政危機に陥らせ、少子化を理由に撤退に追い込もうとしていることです。定員未充足の原因は少子化であり大学に問題があるわけではありません。学生数により算定される補助金の減額に道理はなく、私学の健全な発達に資するという振興助成法の趣旨に背きます。未充足によるペナルティーは撤廃すべきです。
日本の高等教育への公財政支出のGDP比は、OECD(経済協力開発機構)諸国の中で最低水準です。大学予算を抜本的に増額し、学費無償化に道を開き、社会人も含めて誰もが高等教育を受けられる社会をめざすべきです。

