「いまの若者よくわからない」と思っているあなた。かくいう筆者もそんな気持ちになることも。「若者」とひとくくりにする愚を戒めつつ、文芸評論家・三宅香帆さんの話題の新著『考察する若者たち』を読みました▼本書による「考察」とは、小説・ドラマ・動画を問わず作者の仕掛けた謎を解き、唯一の正解を当てようとする姿勢。鑑賞して楽しむだけでなく、ゲーム感覚の達成感を求めていると定義します▼一方、「考察」の対照として「批評」を挙げ、自分の感性と思考、経験等を駆使して作品を読み解くことによって、時に作者も意図しなかった問いを掘り起こす作業と位置づけます。記者の仕事はさしずめ「批評」でしょうか▼「考察」には正解があり、「批評」には正解がない。正解というゴールがあるからこそ、努力も報われると考える若者が多いのではないか、と三宅さん。はやりの「それってあなたの感想ですよね?」という言い回しにも、正解ではない個々の意見に意味はないという前提があるといいます▼他者の感想を尊重できないのは、自身も周囲の求める役割に過剰適応し続けるうちに本来の感情を抑えこんでいるからではないか。正解にこだわるのは失敗を恐れるあまりではないのか。そんな仮説を読みながら、若者だけの問題ではないと痛感しました▼背景にあるのは偽・誤情報が渦巻くネット空間や排外的で不寛容な空気、貧困と格差の拡大。この社会で同時代を生きる者どうし、共に希望を探っていきたい。
2025年12月25日

