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2025年12月24日

22年名護市長選

現職陣営 迂回献金か
公選法違反の疑い
市事業受注企業から自民支部通じ

 2022年1月の沖縄県名護市長選で渡具知武豊市長の陣営の選挙運動に、市発注工事を受注した企業からの献金が、自民党支部を迂回(うかい)する形で使われていた疑いが政治資金収支報告書や関係者などの証言から分かりました。公職選挙法は、市の事業を受注した企業から市長選の候補らが献金を受ける「特定寄付」を禁じています。公選法などに違反する疑いがあり、渡具知氏側の説明責任が問われます。


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 21、22年分の収支報告書によると自民党名護市支部は、前回市長選の告示まで2カ月を切っていた21年11月20日以降、投票日までに市内外の企業から少なくとも計2875万円の献金を集めています。うち240万円が市の工事を受注し、選挙期間中も工事を続けていた名護市内の建設業者6社からの献金でした。

 同支部は、渡具知氏陣営の選挙を担った確認団体「くらしを豊かにする市民の会」へ21年末と市長選投票翌日の2回に分けて計1750万円を寄付しています。同会は、市長選告示から投票日翌日までにビラ印刷代や折り込み代などに約400万円を出しています。

 約3億円の工事を市から受注し、市長選告示の翌日付で自民党支部へ献金したA社の代表は、渡具知氏の選挙応援のためだったと証言しました。「下請けをしていた会社を誘い、渡具知市長の選挙事務所へ一緒に行って自民党支部へ寄付した。初めて市長にも会って本人も『応援してくれてありがとう』と言っていた。建設業協会で渡具知さんを推そうという方針で、協会支部長に仕事でお世話になっていたので出した」

 市工事を受注したB社は告示4日前に自民党支部へ献金しました。同社の代表は「(渡具知氏が)勝つと負けるとでは仕事(の量)が違ってくる」と強調。10万円を献金した覚えはあるとして、選挙応援の見返りを期待した献金であることを隠しませんでした。

 市工事を受注したC社の代表も、献金が選挙のためだったかという質問に、「そうです」と答えました。

 公選法は、自治体の受注業者が首長選挙に関連する寄付を禁じています。県内では01年の宜野湾市長選時、自民党支部を迂回して当時の市長の後援会に特定寄付が行われたとして、市長らが公選法違反などで有罪判決を受けています。

 また、渡具知氏が名護市選挙管理委員会へ提出した選挙運動費用収支報告書には、渡具知氏が「市民の会」から21年末と、告示6日前の2回に分けて250万円の寄付を受領していたと記載されていました。他方、市民の会の収支報告書には渡具知氏に支出した記載はありませんでした。公選法は選挙運動費用収支報告書に虚偽の記入をした場合、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金を定めています。

 本紙の取材に、当時の自民党支部の会計責任者は「ちゃんとルールにのっとった手続きをしていると思う」と回答。同支部の事務担当者と市民の会の会計責任者を当時、兼務していた関係者は、事実関係について「全く分からない」と述べました。

01年宜野湾市長選 公選法違反有罪
名護現職陣営、同じ構図

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(写真)2003年当時、市長の逮捕や有罪を報じる地元紙(画像を一部加工)

 2022年の前回名護市長選で自民党支部を迂回(うかい)して、市工事受注企業からの献金が現市長・渡具知武豊氏陣営の確認団体に渡った構図は、01年に宜野湾市で起きた違法献金事件と重なります。

 同年の宜野湾市長選では、当時の市長の後援会が市発注工事を受注した4社から自民党支部を迂回して500万円の献金を受けたとして、現職市長が03年3月に逮捕され、裁判でのちに有罪となりました。

 判決は、市工事受注企業からの献金である「特定寄付」を受けることを禁じた公職選挙法への違反を認定。同時に、政治資金規正法で禁じられた市長後援会への企業献金を自民党支部への献金と偽装し、政治資金収支報告書に記載したとして同法違反も認めました。

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(写真)沖縄県石垣市の地元紙「八重山毎日新聞」(2022年2月21日付)に掲載された意見広告

 また、企業献金を迂回するための受け皿となった自由民主党沖縄県第二選挙区支部の会計責任者(当時の仲村正治衆院議員の政策秘書)も、収支報告書の虚偽記載にかかわった規正法違反で有罪となりました。

 政治資金規正法で企業から献金を受け取れるのは、政党と政党の政治資金団体に限られています。渡具知氏陣営の確認団体「くらしを豊かにする市民の会」は、企業献金を受けることができない政治団体です。

 18年の収支報告書によれば、渡具知氏が初当選した同年2月の名護市長選でも、自由民主党名護市支部を迂回した形で「市民の会」へ企業献金が渡っていました。当時も市の工事を受注した企業からの献金も含まれ、同様の資金集めは市長選のたびに繰り返されてきた可能性があります。

 さらに、県内の各市長選などでも市工事受注企業からの献金が同様の構図で集められ、市長選に使われた疑いも収支報告書などから確認できます。

 同様の構図がみてとれるのは、少なくとも21年2月の浦添市長選、同市議選、22年2月の石垣市長選、同年4月の沖縄市長選、同年9月の宜野湾市長選、同年10月の豊見城市長選、24年9月の宜野湾市長選です。(表参照)

表