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2025年12月23日

主張

自衛官の定員割れ
海外で戦争する国への不安感

 自衛官の応募が少なく定員割れが続くなか、政府はかつてない自衛官の処遇改善を進めています。「防衛力の抜本的強化のためには、その担い手である自衛官の確保が至上命題」(24年公表の自衛官の処遇改善に関する基本方針)との認識からです。なぜ自衛官の応募が少ないのか―。その根本には自衛隊のかかえる本質的な問題があります。

■処遇を改善すれど

 「防衛力の中核である自衛隊員」(国家安全保障戦略)が充足されないのは防衛省にとって重大事態です。自衛官は2万人募集に対し9724人の採用しかできず(24年度)、定員割れが続き充足率は89%になっています。

 「過去に例のない30を超える手当等の新設・金額の引き上げ」など処遇改善をしていますが、解消しません。

 自衛隊に対して国民は「良い印象を持っている」が9割を超えています(「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」22年)。それにもかかわらず応募が少ないのはなぜか。

 人口減に加え、次々と発覚したセクハラ、暴力などハラスメントが影響を与えているのは明らかです。同時に、「戦争」という自衛隊ならではの問題を直視すべきです。

 そもそも自衛隊は、戦力を保持せず国の交戦権を認めない憲法に違反する存在という他国にはない根本矛盾をかかえています。一方、国民には戦争体験をもとに戦争への忌避感、紛争を武力で解決しないという平和意識が根強くあります。政府はこうした制約から「専守防衛」「海外派兵禁止」をかかげてきました。 しかし日米軍事同盟の拡大強化にともない、自衛隊の海外派遣が繰り返されてきました。イラクに派遣された時には、棺おけも持参し、帰国後も多くの自死者が出ました。 創立以後70年、直接の戦闘には参加していませんが、訓練などで2100人を超える殉職者を出しています。

 「世論調査」では、侵略されても「自衛隊に志願する」は4・7%にすぎません。こうした国民意識について元自衛隊幹部らの提言「防衛力における人的基盤の強化にむけて」(5月)は「戦後、長く続いてきた軍事に対する忌避感」などに起因するとし、「これが自衛隊を支える社会基盤の実態」と嘆いています。

 いまや敵基地攻撃能力を持つまでになり、首相が中国と戦争する事態を国会で公然と答弁しています。提言をまとめた1人の元海将補は台湾有事の可能性にも言及して「多数の負傷自衛官や殉職者が出る場合」の遺族年金などの拡充も提案しています。政府が危機をあおればあおるほど若者が「戦争」の危険を感じ取り、距離を置くのも当然です。

■誰のための宣誓か

 重大な問題は、自衛隊が対米従属の組織だということです。自衛官が「事に臨んでは危険を顧みず」と宣誓するのは、米国のためではないはずです。しかし現実は米国の軍事戦略に組み込まれています。

 個々の自衛官の心情とは別に、武力攻撃を受けた祖国を守るのでなく、安保法制のもと「存立危機事態」を口実に米国のための戦争に参戦させられる―これでいいのか。自衛隊の根本が問われています。