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2025年12月22日

主張

官邸「核保有」発言
あまりにもタガが外れている

 あまりにもタガが外れています。

 高市早苗内閣で安全保障政策を担当する首相官邸の幹部が「日本は核(兵器)を持つべきだ」と記者団に語りました(18日夜)。

 日本は、核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」という非核三原則を国是にしています。官邸幹部の発言がこれに反するのは自明です。広島、長崎の被爆者らでつくる日本原水爆被害者団体協議会が「被爆者の存在を無視し、核戦争を容認するものであり、絶対に許すことはできない」とする談話を発表したのは当然です。

 発言は、高市首相の「台湾有事発言」で緊張が高まっている中国をはじめ周辺国や、米国を含めた国際社会に不信と懸念を広げるとともに、唯一の戦争被爆国として核廃絶を世界に訴える道義的立場を失墜させるものです。官邸幹部は直ちに罷免すべきです。

■小渕内閣時と比べ

 しかし、木原稔官房長官は、幹部の進退について「個別の報道の逐一についてコメントすることは差し控える」(19日の記者会見)とし、罷免する考えを示していません。

 日本の核兵器保有をめぐっては、1999年に西村真悟防衛政務次官(当時)が核武装の議論を求める発言を雑誌で行い、更迭されたことがあります。当時の小渕恵三首相は「非核三原則はわが国の国是として堅持しており、今後ともこの立場に変わりはない」と述べ、「任命権者として国民に心からおわび申し上げる」と陳謝しています。高市内閣の姿勢とは対照的です。

 重大なのは、今回の官邸幹部の発言が、国家安全保障戦略など安保3文書の来年中の改定に向け、高市内閣が非核三原則の見直しを検討しようとしているさなかに飛び出したことです。

 高市首相は就任前、非核三原則のうち「持ち込ませず」の原則について見直しを主張していました。就任後も、安保3文書の改定に際し、非核三原則の堅持を維持するかどうか「私から申し上げるような段階ではない」と明言を避けています。

■三原則法制化こそ

 木原官房長官も19日の記者会見で「政府として非核三原則を政策上の方針としては堅持している」と言うだけで、国是と言いません。小泉進次郎防衛相にいたっては非核三原則の見直しについて「あらゆる選択肢を排除せずに検討を進めるのは当然」と述べています(同日の記者会見)。

 日本は、核兵器の保有を米ロ英仏中の5カ国だけに認め、それ以外の国には認めない核不拡散条約(NPT)に加盟しています。原子力基本法や日米原子力協定で原子力の利用を平和目的に限っています。核兵器の保有は国際法上も国内法上も不可能です。

 これらのことを熟知しているはずの官邸幹部がなぜ核保有発言をしたのか。そこには、核兵器は二度と使われてはならないという日本国内の「核タブー(禁忌)」に風穴を開けようとする意図が感じられます。

 政府がすべきは、非核三原則の国是としての堅持、法制化であり、一日も早い核兵器禁止条約への参加です。