(写真)質問する岩渕友議員=18日、参院農水委
さいたま市が11月、「食肉中央卸売市場・と畜場」の移転再整備事業を中止し、2028年度をめどに同施設を廃止すると発表しました。食品の安定流通の要で、公正・公平な価格形成で生産者や消費者、流通業者を守る公共的役割を持つ施設の廃止の突然の発表に、「将来が見えない」と不安や怒りの声が上がっています。日本共産党の岩渕友議員は18日の参院農林水産委員会で、関係者への打撃は計り知れないとして、市に廃止を撤回させるよう政府に強く求めました。
同市場が24年に扱ったのは牛1万1196頭、豚5万2014頭、金額は約70億円にのぼります。出荷・売買参加者、流通・小売業者、場内労働者など関係者は数えきれず、大学や研究機関に臓器を販売しており、廃止は医学や獣医学研究にも影響します。
市は、廃止を市議会にも直前まで知らせず、農水省も廃止を「報道で承知した」といいます。岩渕氏は、廃止で、と畜料金や経費などが高騰し、乳牛などの持ち込み先がなくなるとして対応策を追及。農水省の長井俊彦畜産局長は「現場の状況を聞く」としか答えられませんでした。
岩渕氏は、公設の卸売市場は公平・公正な取引の場で、力関係や投機的な要素が介在せず、純粋に需要・供給・品質だけが価格決定の指標だと指摘し、少量でも生産者による販売や小売りの仕入れが可能だとし、民間では代替できない機能を持っていると強調。とりわけ、さいたま食肉市場は、関東の食肉流通では東京市場、横浜市場と並び取引価格が基準として参照される「建値市場」で、価格の乱高下を防ぎ、透明性が担保されるなどの機能を持っていると強調しました。
こうした重要な公的施設を、なぜ一方的に廃止できるのか―。岩渕氏は、第2次安倍政権のもとで強行された改定卸売市場法にあると告発。18年の改定では、卸売市場の整備計画に関する規定を削除。全国に市場を配置する国の責任を放棄し、市場の廃止に必要だった農水相の認可を廃止し通知と届け出だけで可能としました。岩渕氏は「法改定がなければ国の整備計画に基づき農水相が廃止を拒否できた」と指摘しました。
岩渕氏は、改定時の農水相が「指導・監督することにより高い公共性を確保する」と答弁していたとして、同市に厳しく指導・監督し廃止を撤回させるべきだと追及。鈴木憲和農水相は「廃止ありきではなく、市と関係者との合意形成状況を注視し、必要な指導と助言を行う」と述べました。
岩渕氏は、市が廃止の理由に法改定を挙げていることにふれ、改定のさい日本共産党の田村貴昭衆院議員が「地方市場の外部化や閉鎖が進む」と指摘した通りだと強調。「全国にも波及しかねない。安倍政権下の新自由主義と規制緩和政策のゆがみ、弊害が噴出している。法改定が現場の実態と激しく摩擦を起こしている」と述べ、改定の検証と見直しを強く求めました。

