原発の再稼働をめぐる動きが相次いでいます。北海道の鈴木直道知事が先週、北海道電力泊原発3号機の再稼働に同意しました。先月は新潟県の花角英世知事が東京電力柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働の容認を表明。原発の「最大限活用」にかじを切った政府方針に応じた格好です▼まるで2011年の東電福島第1原発事故がなかったかのようです。先日、福島県浪江町津島地区の住民の約半数が原発事故で奪われた、ふるさとをきれいにして返せと、東電と国を相手に提訴し、高裁でたたかっている津島訴訟の集会がありました▼津島地区は事故で大量の放射性物質が降り注ぎ、避難を強いられたまま、14年以上たった今もほとんどが自由に立ち入りできない帰還困難区域のままです▼管理ができない家屋は森にのみ込まれ、キツネなどの動物に侵入され、田畑は森林と化して…。原告住民から荒廃を極める地域の被害の現状が訴えられました。なかでも帰還困難区域の住民にとって大きな懸念を抱かせると声があがったのが、政府が6月に閣議決定した「復興の基本方針」です▼ゲートの開放など立ち入り規制の緩和や「区域から個人へ」という考え方の下で、個人線量ベースで活動を自由化していくことなどを検討するといいます。住民らは、すべてが個人の自己責任にされて一切の不都合、理不尽さが押しつけられる、として見直しを求めています▼原発政策を推進する政府は、事故処理の責任までうやむやにしようというのでしょうか。
2025年12月19日

