日本共産党の田村智子委員長が17日、臨時国会閉会にあたって開かれた国会議員団総会で行ったあいさつは次の通りです。
(写真)あいさつする田村智子委員長=17日、衆院第2議員会館
議員団の皆さん、事務局の皆さんの奮闘に心から敬意を表します。
高市政権との最初の論戦となった臨時国会が、今日で終わります。新政権発足からわずか2カ月足らずですが、この国会での論戦をつうじて、高市政権の危険性とともにもろさと弱さがあらわになりました。正面から対決するわが党のかけがえのない役割が明らかとなっています。
道理のない「議員定数削減」--反対の一点で世論と共同を
まず、国会最終盤に、自民、維新が突然提出した衆院議員定数「自動削減」法案です。なぜ定数1割削減が必要なのか、法案にはその目的さえない、この一点のみを見ても道理のなさは明らかです。(「そうだ」の声)
わが党は、自民・維新の連立合意の直後から、金権腐敗の一掃、企業・団体献金禁止という国民の切実な願いを、議員定数削減にすり替え、悪政推進のために民意の切り捨てを狙うものだと厳しく批判し、「定数削減反対の一点で共同を」とよびかけてきました。
また、定数削減は民意を削り、政府に対する監視機能を弱めることになり、定数削減に合理的な根拠はないという根本的な問題を指摘し、必要なのは民意をより反映する選挙制度への改革だと、議会制民主主義を守り発展させる立場を貫いて、道理ある主張を国会内外に広げました。
新聞各社も「憲政の常道に反する暴論」(「読売」)、「これほど党利党略を優先した法案も珍しい」(「日経」)など厳しく批判している通り、定数削減の策動は、内容もやり方も、民主主義のイロハをわきまえない、邪道そのものと言わなければなりません。(「そうだ」の声、拍手)
当初、自民と維新が狙った「臨時国会での成立を目指す」というたくらみを打ち破ったことは、国民の世論と運動の大きな成果です。通常国会できっぱり断念に追い込むために、議員定数削減反対の一点での国民世論と共同をさらに広げようではありませんか。(「よし」の声、拍手)
首相の「台湾発言」--「危機」と不安あおり、大軍拡を正当化する異常さ
高市政権の軍事一辺倒、戦争国家づくりの危険性もあらわになりました。
その象徴は、高市(早苗)首相の「台湾発言」です。台湾海峡での米中での武力衝突を想定し、「どう考えても存立危機事態になりうる」という発言は、日本が攻撃を受けていなくとも自衛隊の武力行使、つまりは中国との戦争がありうると宣言したことを意味します。戦争放棄、交戦権の否認という憲法9条を踏みにじる、日本の国民にとって、極めて危険で断じて許されない発言であり、あらためて撤回を求めるものです。(拍手)
この問題では、香港フェニックステレビのインタビューに答えて、志位(和夫)議長が、「台湾発言」のどこが問題かを踏み込んで明らかにし、また、極度に悪化した日中関係をどう打開するかについて詳しく述べています。まず高市首相が発言撤回を明言すること、そのうえで、1972年の日中国交正常化にあたっての日中共同声明で、中華人民共和国政府が台湾は「中華人民共和国の領土の不可分の一部である」と表明したことに対して、日本政府は「十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する」と約束したことの再確認をはじめ、国交正常化以降の重要な合意文書を厳格に守ることを再確認し、友好関係を再構築する努力が必要だと提起しています。
またこのインタビューでは、日本共産党が中国の政府と党に、(1)一部の右翼的潮流と日本国民全体を区別すること、(2)人的交流、文化交流、経済関係などにリンクさせないこと、(3)事実にもとづかない発言や対立をことさらにあおる言動をつつしむこと、という要請を伝えていることを明らかにしました。このように冷静に、かつ歴史的経緯を踏まえて、打開の展望を示し、行動している党がほかにあるでしょうか。
高市政権はどうでしょうか。日中関係を悪化させた第一の原因は高市首相の「台湾発言」なのに、かたくなに撤回を拒否しています。自ら引き起こした外交問題の重大性も理解せず、解決する展望も能力もない深刻な事態に陥っているのです。加えて危険なことは、小泉(進次郎)防衛大臣などを先頭に閣僚が、中国を名指しして、“中国もやっているのだから、日本が長射程ミサイルを配備するのも大軍拡も当然だ”という主張を居直り的に繰り広げていることです。
これらはまったく異常な事態です。特定の国との戦争がありうるという発言や、特定の国を名指ししてその「危険」をあおるなどということは、戦後の自民党政権でもかつてやったことのない初めてのことです。
一方で、自らの外交的大失態によって、日中関係を最悪のレベルにまで悪化させながら、他方で、「中国もやっているから」と言い募り、自らの大軍拡を平然と合理化する。それは、道理ある外交の力で事態を打開しようという真剣な姿勢も意思のかけらもなく、また、憲法9条や「専守防衛」などの平和的規範をもはやあってなきがごとく扱い、米国のトランプ政権にこびへつらい、軍事対軍事の無謀な悪循環のなかに日本を投げ込み、日本国民を危険にさらす亡国の政治にほかなりません。(「そのとおり」の声、拍手)
高市政権は、公明党の連立離脱後、(日本)維新の会という排外主義の政党を取り込むことで政権を獲得しました。自民党のなかでも極右的な潮流と、露骨な排外主義の政党が結託することで権力を得たのが高市政権です。そして、特定の国を敵視することで、排外主義をあおりたて、「危機」と不安をあおりたて、国民の支持を得ようという、政治としては最もやってはならない邪道を走っているのがこの政権です(「そうだ」の声)。このような卑劣なやり方で一時的に高い政権支持率を得たとしても、それは早晩、大きな破綻に陥ることは、火を見るよりもあきらかではありませんか。
臨時国会をつうじて、政党配置がすっきりと見えるようになってきました。国民民主党、連立政権を離脱した公明党は、補正予算に賛成し、高市政権の補完勢力としての立場をあらわにしています。参政党は「スパイ防止法」制定など、民主主義破壊の政治を進める先兵となっています。
いま政治の表層だけをみるならば、右翼的逆流が日本の政治を席巻しているように見えます。しかし、それは国民多数の願い、世界の動きとの深い矛盾を抱えています。この逆流は、日本が直面する問題を何一つ解決せず、国民の平和・民主主義・暮らしの要求と激しくぶつからざるをえないでしょう。
いまこそ、時流に流されず高市政権と正面から対決する政党が、日本の政治に必要です。「東アジア平和提言」で外交による平和構築を提唱し、アメリカいいなりの大軍拡の危険性を暴き、大軍拡、安保法制、集団的自衛権行使容認に断固として反対する日本共産党のかけがえのない役割を堂々と発揮しようではありませんか。(拍手)
暮らしと経済でも無策--政策・論戦広げ、要求実現の運動さらに
高市政権のもろさと弱さは、暮らしの面でも明瞭になってきています。
補正予算は、規模ありき、なかでも軍事費GDP(国内総生産)比2%達成ありきで、物価高騰から暮らしを守る政策は空っぽ、アベノミクスの「二番煎じ」で国債頼みの経済政策は、円安をもたらし、日本経済を混乱させています。
国民が選挙で求めた消費税減税を拒否し、最低賃金1500円の目標は投げ捨てる、収入を増やしたければもっと働けと、安倍政権が行った労働時間規制緩和をさらに進めようという。米の増産と安定供給も無策で、市場任せ、自治体のおこめ券任せにしてしまう。医療・介護の基盤崩壊は深刻な社会問題になっているのに、根本的な解決策はなく、OTC類似薬の患者負担増に突き進む。希望のかけらもありません。また暮らしの問題は、軍事費の異常突出とぶつからざるを得ないことも、いよいよ明らかになっています。
わが党は、国民の要求に立ち、暮らしと経済を立て直す具体的な政策を提起しています。この論戦を広く国民に知らせ、多面的な要求実現の運動に大きくとりくみましょう。国民の暮らしや平和への要求と運動で、この政権を追い詰めていこうではありませんか。
反動ブロックの形成の危険が現実のものになるなかで、日本共産党は、多様な要求での国民的な共同を広げるとともに、高市政権の危険性の核心であるアメリカいいなりの大軍拡と安保法制に立ち向かう「確かな共同」をつくるために、特別の力をそそいできました。
この間、社民党、新社会党、「沖縄の風」との会談を行い、大軍拡に反対し、憲法を柱とした共同を確認したことは、とても重要だと確信しています。この会談のなかで、「共同の姿を国民の前に示そう」「高市首相が初めての女性総理といわれるけれど、いわゆる左派の政党も女性がリーダーとしてがんばっているではないか」ということが話し合われました。そして、26日、四つの政党・会派が合同で、「戦争よりも平和を私は選ぶ」と題して、女性党首・幹事長トーク=共同街宣を行うことになりました。これは第一歩で、来年さらに共同の行動をと相談しているところです。全国各地でも、こうした「確かな共同」を大いにつくり、市民的・国民的運動との連帯を強め、大きく広げようではありませんか。(拍手)
「集中期間」・党づくりでも国会議員団が先頭に
最後に、全党がとりくんでいる「集中期間」、党づくりで、国会議員団が全力をつくすことをよびかけます。
高市政権発足を受けて、“日本も世界も歴史的岐路にある、この時代にどう生きるのか”を問いかける「入党のよびかけ」(赤リーフ)をつくりました。これが党員の皆さんの心に響いて、「赤リーフ」を一緒に読むという入党のはたらきかけが運動になり始めています。排外主義の台頭に心を痛めたり、高市政権に危機感を持っている方、あるいは資本主義のままでよいのかと考えていたという若者など、各地でよびかけに応えて入党の決意が広がっています。「しんぶん赤旗」日曜版の電子版発行が、新しい層に読者を広げる力となっています。
また、『Q&A いま「資本論」がおもしろい』(赤本)が、党の活動に新たな息吹をもたらし、広い国民のなかにも「搾取のしくみがわかった」「共産主義のイメージが変わった」「共産党は支持してこなかったが、これは知る価値がある」など、私たちの想像を超えて関心や共感が広がっています。自衛隊の準機関紙「朝雲」の新刊紹介コーナーでも好意的に紹介されたことには、驚きとともに『資本論』のもつ豊かな可能性を実感します。
高市政権の支持率は排外主義を取り込んだことが、大きな要因だと述べましたが、その排外主義が広がる根本には、新自由主義による弱肉強食、自己責任の押しつけ、貧困と格差の拡大によって、生活苦や将来不安、現状への不満や不安がまん延していることがあります。さらに大本には、資本主義そのもののあまりにもひどい搾取、「利潤第一主義」がもたらす矛盾の激化があるのではないでしょうか。
苦しみをもたらすものの正体とともに、本当に希望ある社会への展望を語ることは、排外主義の根本的な克服の力となるでしょう。政治や社会の変革は労働者をはじめ国民の連帯とたたかいにこそあるとつかむことは、分断を乗り越える大きな力となるでしょう。「赤本」そして『資本論』を読むムーブメントの可能性に、私もワクワクしています。
こうした学習や対話、そして党づくりの先頭に立って、議員団が奮闘することをよびかけ、2026年、党づくりでも、論戦でも、一層のパワーアップを互いに誓いあい、あいさつといたします。ともにがんばりましょう。(大きな拍手)

