沖縄県民の民意を踏みにじる米軍辺野古新基地建設が強行されている名護市で、来月18日告示(25日投票)の市長選が実施されます。基地依存の交付金頼みで、市民を置き去りにする現市政からの転換を掲げて立候補を決意する、前市議の、おながクミコさん(69)に思いを聞きました。(田中正一郎)
(写真)インタビューに答えるおながクミコ氏=2日、沖縄県名護市
名護市長選はいつも国とのたたかいです。名護市民だけでは勝てず、沖縄全体でたたかわないといけない。国は11月末に辺野古の新基地建設で大浦湾での土砂の投入を始めましたが、市長選を前に、基地建設は止められない、諦めなさいという市民へのアピールです。負けられません。
私は市議になった15年前、基地建設をひとごとのように感じていました。市議になる前は保守のみなさんの選挙に多くかかわって運動するなど、保守系として市議になったこともあり、みなさんがなぜこれほど基地に反対するのか分からなかったのです。
辺野古で座り込みを続ける人たちの思いを知りたいと考え、沖縄戦の史実を伝える糸満市摩文仁の県平和祈念資料館に行きました。沖縄が「捨て石」にされた歴史と犠牲になった県民の思いを知るうち、基地建設は絶対に止めるしかないと思うようになりました。
「寝袋議員」と
(写真)キャンプ・シュワブゲート前の県民大行動で国会議員らとともに声を上げるクミコ氏(中央)=6日、沖縄県名護市辺野古
新基地建設が始まったころ、沖縄防衛局は深夜に不意打ちで工事資材などを運び込むこともしました。そのため辺野古のゲート前では、泊まり込みで監視・抗議が続けられていました。
私も寝袋持参で参加し、歩道のアスファルトの上で夜を明かす生活を1年間続けました。早朝起きて朝の抗議行動が終わったら家に帰り、議会のときはシャワーを浴びて着替えてから議場に行くわけですよ。
そのうち「クミコさんは寝袋議員だね」と言われたことが、ニックネームのように広まりました。本名よりも知られるようになり、全国から辺野古のたたかいを支援しに来られるみなさんからも、「寝袋議員って知ってる?」と(笑)。
夏場は暑いし、雨が降るとブルーシートの下からも水が流れてきて寝られない。ダニもいて足に発疹(はっしん)ができるなど大変な思いをしましたが、当時はただただ一生懸命でした。一人でも多く頑張ったら止められる、工事を遅らせることができるという思いでやり通すことができたと思います。
当選すれば最初に玉城デニー知事とともに上京し、名護市民の代表として高市首相に辺野古新基地建設の即時中止を要請したい。
同時に、交付金頼みで国の方ばかりを見る現市政を代え、市民生活に寄り添う政治にアップデート(新しくすること)をしなければと強く思います。
渡具知武豊市長は約8年前の当選以来、新基地建設に賛成でも反対でもないという態度を続けています。一方で今回、2026年度で期限切れになる再編交付金に代わる措置を木原稔官房長官に要請しました。
「駐留軍等の再編の円滑かつ確実な実施に資する」ための交付金です。それを自分から求めるのは基地建設に賛成ということです。
現市政は、再編交付金を使って子ども医療費、保育料、学校給食費の三大無償化を実施してきました。しかし、玉城デニー県政下で医療費や給食費の助成が拡充され、国の保育無償化も進んでいます。市独自の財源で無償化は続けていけると確信しています。
賃金底上げを
見過ごせないのが補助金や交付金で市の予算は増えているのに、市民所得は減り続けていることです。労働者の賃金を底上げする仕組みが必要です。市の発注する事業で現場労働者の適正賃金を確保する公契約条例を制定し、中小企業が受注しやすいよう分離・分割発注も復活させます。
前市政で最大約40億円だった農林水産業費は、渡具知市政で約3分の1に大幅削減されています。規格外や廃棄される果物、野菜を加工して生産者が作ったものを全て商品化する6次産業化と販路拡大を応援することで農漁業者の収入を増やしていけます。
市内の保育、介護の人材不足も深刻です。看護現場を含めこれは処遇改善しかありません。保育士のみなさんから「8時間労働といっても交代時間になっても帰れず、11時間ぐらい働いている。でもその手当を国はつけてくれない」との声が上がっています。
私は母の在宅介護を33年間続けました。家族介護の大変さを、身をもって知っています。自分の時間がなくなり、仕事も離職しなければいけなくなる。何年もの介護で疲れ切って追い詰められる絶望がよくわかります。介護施設を増やし、希望しても市内で介護が受けられずにいる待機高齢者をゼロにしたい。
市内に産婦人科が1カ所しかない現状を改め、妊娠から子育てまで一貫して支援をするバースセンターの整備や、物価高騰対策で市独自の水道の基本料金免除を進めます。
多様性に配慮
市議として多様性に配慮した個室トイレや生理の貧困の解決に取り組んできました。性的少数者のカップルや家族のためのパートナーシップ、ファミリーシップ条例はぜひ導入を進めたい。「県がやるから市独自の導入は考えていない」と答える渡具知市政ではできないことです。
現市長が行ってきたのは、中心商店街をつぶす再開発をはじめ市民が知らないうちに物事が進められ、決定事項が降りてくる、市民目線とかけ離れた市政運営です。応援してくださるみなさんの期待に応え、名護市初の女性市長として市民の声第一の市政を必ず実現しなければと思っています。
略歴 1956年生まれ。武庫川女子短期大学卒業。市委託事業の高齢者運動支援員として勤務後、名護市議(無所属)4期。市女性ネットワーク協議会会長。

