約180棟が焼け、1人が死亡した大分市佐賀関の大規模火災発生から1カ月になります。約5万平方メートルに及ぶ焼失面積は近年の市街地火災では震災を除き最大規模です。現場は木造住宅が密集する地区でした。市町村合併に伴う若者らの人口流出で空き家が多く、延焼に影響しました。
■高齢被災者のため
被災者の多くは高齢者です。住み慣れた地域で家財や思い出の品がある家が一瞬にして灰や炭に化したことに深刻なショックを受けています。高齢被災者の住まいの確保・再建は、寒い冬を迎え、本人任せではなく、大分県や国が責任をもって当たるべきです。
大分市は被災者の仮住まいとして、市営住宅や民間企業の独身寮の確保をすすめていますが、車がないと行けない場所にあったり、エレベーターがなく高齢者には不向きだとの声があります。被災住民と協議しながら、地域内に恒常的に暮らせる復興住宅を建設する案が出ており、検討されるべきです。
地域医療に貢献してきた関愛会佐賀関病院の大屋譲院長は「協力して助かったわけだから地区のコミュニティーが衰退しないようにするのが大切です。高齢者や持病がある人の災害関連死を絶対に出さないように、心のケア、フレイル(虚弱)予防が大事。住み慣れた所で過ごすのがベストです」と話します。
日本共産党は、小池晃書記局長や国会議員団が繰り返し、被災者聞き取りの現地調査に入り、国会質問で取り上げました。地域の結びつきを望む高齢被災者に寄り添って安心して暮らせる住宅と生活・生業(なりわい)の再建のために、国は財政支援すべきです。
自然災害で住宅に大きな被害を受けた世帯に生活再建のための支援金を支給する被災者生活再建支援法の適用が決まりました。
しかし、支援金の上限は300万円にとどまります。今回の大火災に限らず、暴風、豪雨、地震などの災害が頻発しています。国は増額を検討すべきです。
■空き家対策の強化
今回の大火災の教訓の一つに空き家問題があります。焼損した住宅の4割前後が空き家だったとみられます。空き家は家屋の耐火性能が低くなり、庭の草木の手入れが行き届かず、燃えやすくなります。防災面での空き家のリスクを示したといえます。
国土交通省はこれまでも、空き家発生の問題例として、火災の恐れや家屋の倒壊、屋根・外壁の落下など防災性の低下を指摘していました。
政府の最新調査(2023年現在)によると、全国で空き家は過去最多の約900万戸になります。そのうち、長期不在や取り壊し予定を意味する「その他の住宅」は385万戸もあります。都道府県別の空き家率は、2割を超えるのはトップの徳島(21・3%)をはじめ、和歌山、鹿児島、山梨、高知、長野です。大分県は19・1%です。
防火・防災の観点から地域に点在する空き家を改めて点検することも求められます。
火災に強い地域をつくることは、災害への備えとしても欠かせません。

