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2025年12月17日

『資本論』がいよいよ生命力を発揮する時代がやってきた

「赤本」学習・経験交流会 志位議長の発言

 日本共産党が12日に開いた「『Q&A資本論』(赤本)学習の県・地区委員会の経験交流会」での志位和夫議長の発言は次の通りです。


写真

(写真)オンラインを通じて発言する志位和夫議長=12日、党本部

 若干の発言を行って、会議に参加したいと思います。

 私は、8月に行った『Q&A資本論』(「赤本」)の刊行にあたっての記者会見で、いまアメリカで「第4次マルクス・ブーム」といわれるような状況があるなど、欧米で『資本論』が大いに読まれていることを紹介し、「『資本論』を読むムーブメントをこの日本でも起こしたい」と抱負を話しました。正直言って、果たしてどこまでできるかという気持ちもありました。ところが、それから4カ月。日本でも『資本論』を読むムーブメントを起こすことは可能だということが、端緒的ですが、見えつつあるのではないでしょうか。

「赤本」の学習運動のもつ豊かな可能性が生き生きと明らかにされた

 何よりも、日本共産党の全国の党組織と党員のみなさんが、草の根から「赤本」の学習運動に挑戦し、大きな手ごたえをつかみつつあります。

 今日の発言を聞いておりまして、そのどれもが、この運動のもつ豊かな可能性を生き生きと語る、素晴らしい内容だったことに感動しました。私が大切だなと感じたことを、順不同で、4点ほどのべたいと思います。

若い世代や労働者に強く響き合い、党や民青に迎える大きな力となっている

 第一は、「赤本」と「青本」の内容が、とりわけ若い世代や労働者に強く響き合い、日本共産党や民青同盟に迎えるうえで大きな力となっているとの経験が、多くの方から報告されたことです。

 日本共産党は、科学的社会主義を理論的基礎とする政党ですけれども、私たちが基礎とする理論のなかでも、その一番の土台となっているのが『資本論』です。『資本論』は、わが党の理論の「土台中の土台」です。そうした「土台中の土台」の魅力に触れて、入党する方が広がっていることは、本当に貴重で、うれしいことで、わが党の未来にとって大きな意義をもつものだと私は思います。

「知は喜び」―党の質を大きく変えつつある

 第二に、「赤本」学習が、「支部会議が楽しくなった」「労働者階級の党の一員として活動していく自覚がわいた」など、党活動全体に新鮮な活力、新鮮な明るさ、新鮮な喜びをあたえて、党の質を大きく変えつつあることも、共通する経験として報告されました。よく私たちは哲学者・ベーコンの格言として「知は力」という言葉を使ってきましたけれども、私はそれに加えまして、古代ギリシャの哲学者・アリストテレスが語った「すべての人間は本性として知を求める」―「知は喜び」ということを強調したいと思います。新しいことが分かっていくことは、世界を見る目が変わり、生き方に新しい道が見えてくる、それ自体が大きな喜びであるということが、この学習運動を通じて実感されつつあるのではないでしょうか。ですからこの運動を発展させる最大のカギは、「学ぶ喜び」、「学ぶ楽しさ」、これを伝えていく、これこそが運動発展の原動力であると、私は思います。

 党の質を大きく変えるという点では「質問タイム」のなかで出されたことでありますが、この学習運動を通じて「弁証法的なもののとらえ方」を、自然にわが党が身につけつつあるということが語られたことも、とても大事だと思うんです。マルクスは、『資本論』を貫く弁証法について、「現存するものの肯定的な理解」のうちに、「同時にまた、その否定、その必然的没落の理解を含み」、と特徴づけましたが、この学習運動をつうじて、事物の弁証法的なとらえ方、すなわちさまざまな断面だけでみずに、運動のなかでとらえる、世界の大きな動きのなかで日本の情勢をとらえるという弁証法的な世界観が、党の中にひろがってきつつあるということが発言されました。こういう点でも、党の質を変えつつあるというのは、本当に大きな出来事だと思います。

この学習運動を労働運動の発展にもつなげていくとりくみに挑戦を

 第三に、「赤本」学習を力に、職場の労働条件改善のための交渉に勇気をもってたちあがって、第一歩の前進をかち取った闘いの経験が語られました。この企業ではお昼の休憩がない、交代勤務もない、隙を見つけて昼食をかきこむ毎日だったといいます。そんなときに「赤本」に出あって、その学習運動のなかで自覚したのは、これはマルクスが言っているとおりの、労働時間のひどい「ちょろまかし」じゃないか、「これこそ搾取じゃないか」ということをつかんでいった。そしてこの方は「足が震えた」そうでありますが、一人で会社の上司たちと交渉し、改善をかち取った。私は、こういう経験をマルクスが知ったら、喜ぶと思います。勇気ある闘いに、私は、熱い連帯のエールを送りたいと思います。

 岡山県の職場支部援助委員会の責任者の発言も多くの学ぶべき豊かな中身を語ってくれました。職場が多忙だから学ぶ時間がない、活動もできない。こういう悩みがいま職場ではどこでも広くあります。それに対して、「困難を乗り越える力は学習しかない」ということを言って、ここから突破していこうという激励をしながらとりくんでいるという経験でした。私が、それに加えてのべたいのは、労働者に、「自由な時間」をあたえないでこき使っているのは、資本の側の攻撃であるわけです。労働者に、「ただ働いて、食べて、寝るだけ」。ものを考えたり、学んだり、仲間と交流したり、連帯したり、そういういっさいがっさいの時間を奪っているのは、資本の側の攻撃であるわけです。だからそれがあるからと言って、私たちの側が忙しいから学べないとなってしまったら、相手の思うつぼになってしまうわけです。時間をつくって学ぶこと自体が闘いなんだという立場で、がんばっていくことが大事じゃないかと思って発言を聞いたしだいです。

 この学習運動を労働運動の新しい発展にもつなげていくとりくみに、みなさんといっしょに挑戦したい。この間、私は、建設労働者、学校教職員労働者、自治体労働者など、各分野の労働者のみなさんと、さまざまな交流、懇談、対話をしてきました。ぜひこの日本にも強大な階級的・民主的な労働運動をつくっていきたい。こう決意しておりますが、その発展にもつなげていくとりくみにしていきたいと願っているところです。

未来社会の魅力を攻勢的に語る対話運動への発展

 第四は、「赤本」「青本」学習をつうじて、これまでは、日本共産党へのさまざまな偏見や誤解に対して、「疑問に答える」という形で、いわば受け身で答えるということが多かったけれど、未来社会の魅力を自分の言葉で攻勢的に語るところから対話を始めるという活動に変わってきていることが強調されたことはとても大事だと思います。

 すなわち、社会主義・共産主義へのいろいろな偏見や誤解に答えていくというところから対話を始めるのでなく、共産主義の「基本原理」は「各個人の完全で自由な発展」(『資本論』)にこそあると、ズバリ、私たちの最も積極的な未来社会のテーゼをのべる。そしてそのためには、十分な「自由な時間」を獲得することが必要なんですよ、という私たちの展望をのべる。そうしますと、「個人の自由」「個人の発展」とはおよそ無縁のあれこれの体制は、共産主義でも何でもないということになります。「共産主義の基本原理はこうだ」と、積極的テーゼを前面におしだして、その魅力を自分の言葉で語ってこそ、私たちの目指す未来社会の素晴らしさが伝わると思うんです。

 今日の発言を聞きますと、そういう攻勢的な対話が、全国各地で始まっていると思いますし、そういう力を全党が身につけたら怖いものはなくなる。どんな選挙も、国民運動も、党勢拡大も、前進の土台がつくられていくというふうに感じました。

 全体を通しまして、始まったとりくみを、文字通り全党のとりくみに発展させ、草の根から『資本論』を読むムーブメントを広げることができたら、わが党は変わるし、そして日本は変わる。そしてそれは可能だ。短時間の会議でしたけれども、そのことを明らかにする重要な会議となったのではないかと思います。大志をもって、このとりくみを大きく発展させようではありませんか。

党外の人々に広く働きかける運動としても発展させよう

 さらにこの機会に、考えていることを2点ほど話したいと思います。

 1点目は、この運動を、党内の学習運動にとどめるのはもったいない。ぜひ党外の人々に広く働きかける運動として発展させようということです。

「選挙ドットコム」「リハック」―党の声が届かなかった人々にも共感を広げる可能性

 この間、私自身、「選挙ドットコム」、「リハック」などのネット番組で、「赤本」「青本」をテーマに対談を行う機会がありました。その体験をつうじて、このとりくみが党外の人々、それも、これまで党の声がまったく届かなかった、そういう広大な人々にまで、共感を広げる可能性をもっていることを強く実感しました。

 「リハック」での斎藤幸平東大准教授との対談は、現在までのところ、前編・後編あわせて58万回が再生され、コメント数は3779にも及んでいます。この対談は、全体として、お互いに積極的で率直な議論ができてとても良かったと私は思っていますが、とくに驚いたのはインターネットのコメント欄の反応でした。斎藤さんによりますと、「リハックという番組は、マルクスにとってはアウェーの視聴者が多い番組」だとのことでした。ですから、どんな反応が来るか、かなり身構えていたんですけど、寄せられたものを見ますと、圧倒的なコメントが好意的だったことに驚きました。ふだん日本共産党とはまったく接点のない方がほとんどだと思います。むしろかなり距離のある方の方が多いと聞きましたが、そういう方々から見ても、伝わるものがある、評価されるものがある、ということが、コメントに表れていました。

 この対談では、最後に、私が、斎藤さんに、「われわれで、マルクスと『資本論』に対する理解には違いもありますが、しかも大きな違いもあると思いますが、そこは大いに議論していったらいい。しかし、それぞれの立場で、マルクスの『資本論』のブームをつくっていく。マルクスの『資本論』を読むムーブメントを日本でもアメリカに負けないでつくっていく、という一点で協力しませんか」と提案したところ、斎藤さんから「もちろんですよ」という答えが返ってきて、意気投合したことはうれしいことでした。

 私は、こうした「理論的な統一戦線」を、現代にふさわしい形で、率直・誠実な対話をつくっていく努力をさらに追求していきたいと思います。これはぜひ全国の津々浦々でも、立場の違う方とも胸を開いて対話をし、お互いに学びあう、真実を追求する、こうしたとりくみが広がることを願ってやみません。

こうした対話の努力は、国際的にも広げていきたい

 私は、こうした対話の努力は、国際的にも広げていきたいと考えています。著名なマルクス研究者でカナダ・ヨーク大学教授のマルチェロ・ムストさんという方が、12月中旬来日しますが、先方から、来日のおりに対談をとの希望が寄せられ、お受けすることになりました。ここに持ってきましたけれども、これは今年9月に邦訳が出版された『マルクス・リバイバル』という本なんですが、この編著者をつとめているのがムストさんです。ムストさんは、この本のなかで、「2020年代の始まりにあって、カール・マルクスの真の思想が、今日ほどタイムリーで、尊敬や関心を呼ぶ時代はなかったのではないかと時折思えるほどになっている」と語り、「マルクスはブームになっている」とズバリ言っています。

 ムストさんは、この本の第2章「共産主義」という章の中で、「共産主義社会は労働時間の全般的短縮によって特徴づけられる」とのべ、マルクスの「自由に処分できる時間」論を重視して語っています。私たちとの共通点として注目して読みました。先方には「赤本」「青本」とその理論的背景を語った二つの講義―四つのテキストの英訳をメールでお送りしたところです。対談が実りあるものになることを願い、楽しみにしているところです。

他党議員や、知識人の方々などからのうれしい反応

 党外の方という点では、他党の議員のみなさんにも折に触れて贈呈するようにしています。ある方からは、こういう丁重で率直な感想が寄せられました。「私は経済学部出身なので、一応『マルクス経済学』を学び、『資本論』も読んだのですが、当時はチンプンカンプンでした。改めてご著書を拝読し、目から鱗(うろこ)が落ちた思いです」、「労働問題にもっと力を入れなければならないと気づかされました」、「共産主義に対しても、間違った見方をしていたように思います」。これもうれしい思いで読みました。

 私たちは知識人の方々にも、「赤本」をお渡しするようにしていますが、ある著名な経済学者に「赤本」を贈呈したところ、ちょうどこの方は、『資本論』の研究会にとりくんでいるさなかだった。研究会では、『資本論』の英語版を使い、1行、1行と読み進んでいるというお話でした。この方からは、こういう連絡をいただきました。「(『赤本』を)早速、メンバーたちに紹介しました。みなさんご購入下さるとのこと、これから先の研究会では、全員で手元に置き、何かにつけて参照させて頂きたいと思います。この貴重な参考文献を得たことで、時として意味不明なマルクス先生節の難関突破がかなりハードル低下するのではないかと期待しております」。こういううれしい連絡もいただきました。

 「しんぶん赤旗」でも紹介しましたが、自衛隊関連のニュースを主とする新聞「朝雲」の「新刊紹介」に「赤本」が取り上げられたことには驚きました。「本書が本家の『資本論』に挑戦するきっかけになるだろう」で結ばれている、好意的な書評です。現代を理解するうえで不可欠の教養として、立場の違いを超えて無関心ではいられない。『資本論』はそうした古典として世間に認識されているのだと感じました。ぜひ自衛隊員のみなさんにも読んでいただければと願っているところです。

 この運動が、ワクワクするような大きな可能性をもったとりくみだということ―『資本論』を読むムーブメントをつくることはこの日本でも大いに可能だということは、この4カ月の全党のとりくみでも明らかになりつつあるのではないでしょうか。このとりくみが、豊かな実を結ぶように、全党のみなさんとともに、引き続き、知恵と力をつくしたいと決意しているところです。

『資本論』が、その生命力を存分に発揮する時代がやってきた

 2点目です。私は、国内外でのこうしたマルクスと『資本論』への注目の高まりは、偶然のものではない、一過性のものでもないと考えています。それは、資本主義というシステムの矛盾がいよいよ深まり、「人類はこのシステムを続けていていいのか」という問いが、広くわき起こり、資本主義に代わる未来の新しい社会への模索が広がっていることの反映だと思います。

158年たった今、いよいよ生命力を、全面的に発揮する時代がやってきた

 私は、『資本論』が、本来の意味で、私たちが生きていく指針として、その生命力を存分に発揮する時代を、21世紀の今、私たちは迎えているといえると思います。1867年に『資本論』第一部が刊行されて、今年で158年です。「158年たってもなお生命力を発揮している」にとどまらず、「158年たった今、いよいよ生命力を、全面的に発揮する時代がやってきた」と言えるのではないかと、私は思うのです。

 何よりも、マルクスがこの書で解明した資本主義的搾取は、「青本」「赤本」でも紹介したように、グローバルな規模で、超富裕層の富の拡大と不平等の拡大を、人類が見たことがない空前のレベルにまで、拡大しています。日本でも世界でも、ひどい搾取が横行していることは、多くの人々が肌身をつうじて、感覚として感じていることです。「赤本」学習でも、今日みなさんが、それぞれ報告されていたように、「搾取の秘密がわかった」ことへの強い反応が共通していますが、資本主義の矛盾というのは、世界のどこか遠いところにある問題ではありません。それは私たちの「日常の労働と生活」のなかに深くあらわれ、それを深くむしばんでいるのです。資本主義のもとでも、このひどい搾取に民主的規制をかけることは急務となっていますが、この問題を根本的に解決する道は、資本主義体制そのものを変革するしかありません。このことを『資本論』は明らかにしています。

 さらに、「赤本」でもそのさわりを紹介したように、マルクスは『資本論』のなかで、21世紀の人類が抱える問題について、驚くほど深く立ち入り、先駆的に論じています。自由な時間、環境、ジェンダー、教育、生産力など、さまざまな問題について、彼が論じたことは、どれもが、いま現代が解答を求めている問題そのものでもあります。マルクスが、それらをどういう角度で論じたのか、その意味を深くつかみ、現代に生かすことが強く求められています。

 もちろん、理論の発展が必要です。たとえば「ICT革命」やAIなど、現代には、マルクスが目にしなかった資本主義のもとでの新しい技術的発展もあります。しかし、それもマルクスが資本主義のもとでの技術的発展、生産力の発展をどういう角度からとらえたのか――『資本論』の目で私たちの理論を21世紀の現代に発展させるなかで、その意義をとらえることが可能になってくるでしょう。

マルクスの革命的メッセージを広く労働者のものに

 そして、激動する内外の情勢のもとで、マルクスがこの書に込めた革命的メッセージ―資本主義を「必然的没落」に導く原動力となるのは、資本主義による矛盾や害悪とのたたかいのなかで、労働者階級が成長・発展をとげることにこそある―このメッセ―ジを、広く労働者階級のものとすることが、いまほど強く求められているときはありません。

 11月4日に行われた米国のニューヨーク市長選挙で、DSA(民主的社会主義)の候補、ゾーラン・マムダニ氏が勝利をおさめました。その後、行われたシカゴにある保守系シンクタンク「ハートランド研究所」による世論調査を紹介したいと思います。なんと調査した若者の52%が、2028年の大統領選挙では、民主的社会主義に投票すると答えたのです。同研究所は、非常に“懸念する結果”だとして、「アメリカ合衆国がアメリカ社会主義合衆国」にならないように、二大政党の政治家は政策を練り直せとコメントしています。いま帝国の心臓部で激動がおこっています。この激動を知らずに、いつまでアメリカ言いなりを続けるつもりかと、私は言いたいと思います。そしてその激動を支えている民主的社会主義の運動が、『資本論』の学習運動を行い、マルクスに問題解決の手がかりを求めていることは、私たちにとっても、大きな希望をあたえるものではないでしょうか。アメリカの運動とも、大いに交流を強めていきたいと考えています。

21世紀の今、『資本論』の内容をより豊かで充実した形で読む新しい条件が

 最後に強調したいのは、21世紀のいま、私たちが『資本論』の内容をより豊かで充実した形で読むことのできる新しい条件が発展してきているということです。1975年から、新しい『マルクス・エンゲルス全集』―草稿、ノート、書簡も含めて、マルクス・エンゲルスが書いたすべての文書を含む、文字通りの完全な全集、いわゆる新『メガ』の刊行が進められてきています。この新『メガ』の第二部門は、『資本論』とその準備草稿にあてられ、『資本論』に関係する草稿類が、順次、すべて公刊され、すでに完結しています。そのなかのいわゆる『57~58年草稿』と『61~63年草稿』は、すでにその日本語訳が、大月書店から『資本論草稿集』として全9冊が出版されています。新『メガ』のなかの重要な部分を、私たちは、日本語で読めるようになっているわけです。「青本」と「赤本」では、「自由に処分できる時間」に新しい光をあてて『資本論』を読んでいったわけですが、マルクスがこの考えをいかに発展させていったのかを、生の形で明らかにしているのは『資本論草稿集』をおいて他にはないんです。ですから、この新『メガ』と『草稿集』を読めるようになったことで、はじめて、「青本」も「赤本」も可能になったことを強調しておきたいと思います。

 エンゲルスも、こうした『資本論草稿集』―『57~58年草稿』と『61~63年草稿』は知っていて、ある程度は目をとおしたようです。ただエンゲルスは、『資本論』そのものの第二部、第三部の草稿を清書して、整理して、刊行にこぎつけることがたいへんで、『草稿集』の内容まで本格的に読み込むことはできなかったと考えられています。そこからくる編集上の弱点も、これまでの『資本論』には残されていました。

 この間、刊行された『新版 資本論』は、新『メガ』が明らかにした諸条件を全面的に生かして、マルクス自身の研究の発展、エンゲルスによる編集上の問題点を解決した、画期的な達成となっています。こういう積み重ねのうえに、私たちは「青本」「赤本」をまとめていったわけです。

 21世紀の現代、私たちは、『資本論』を読むさいに、エンゲルスも十分に読みこむ条件がなかったこれらの準備草稿を読むことができるんですね。その意味では、私たちは、『資本論』第二部、第三部を編集したエンゲルスよりも、もっと有利な条件のもとで、『資本論』の全体を読むことができるということがいえるでしょう(不破哲三「二一世紀・『資本論』のすすめ」、『前衛』2005年2~3月号)。21世紀になってようやくここまで来たのです。ここにも、21世紀のいま、私たちが『資本論』を読むことの新鮮な意義があるように思います。

「今さら資本論」ではなく、21世紀の「今こそ資本論」

 全国のみなさんからのアンケートを見ますと、党内には「なぜ今さら資本論か」という声もあるようです。それでも「そういわずに」と「赤本」学習を始めてみたら、「これは面白い」と変化しているとのことですが、私が、強調したいのは、「今さら資本論」では決してなく、21世紀の「今こそ資本論」だということです。21世紀の今、『資本論』がいよいよ生命力を発揮する時代がやってきた。また同時に、『資本論』の全体を深く理解する条件を私たちは手にする時代になっている。二重の意味で、21世紀の今こそ『資本論』を読もうということを訴えたいのであります。

 最後に、一つお知らせです。いま「緑本」―『自由な時間と「資本論」―マルクスから学ぶ』の出版を準備しております。これは「赤本」「青本」の理論的背景を語った二つの講義や、関連する発言などをおさめたものです。1月下旬に刊行の予定です。

 みなさん、日本でも、アメリカに負けないで、『資本論』を読むムーブメントをつくろうではありませんか。そしてこの社会を変える国民的運動をおおいに発展させようではありませんか。そして、それを支える質量ともに強く大きな党を草の根からつくるために力をつくそうではありませんか。

 以上をもって発言とします。ありがとうございました。