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2025年12月17日

主張

加速する農家減少
大小多様な担い手の確保こそ

 農水省が11月に発表した2025年農林業センサス結果が衝撃を与えています。農業を主な仕事とする「基幹的農業従事者」が、この5年で25%も減少したのです。

 「洪水のように離農が増え、この国から農家・農民が消えようとしている」―全国の農家らが東京都心などで開催した「令和の百姓一揆」(3月)での訴えを裏付け、農業危機が一段と加速していることを浮き彫りにしました。

 農林業センサスは5年ごとに行われ農業版「国勢調査」といわれます。基幹的農業従事者の2000年以降の5年ごとの減少率は6・6%、8・4%、14・5%、22・4%と年を追うごとに高まっており、それにいっそう拍車がかかった形です。

 しかもその平均年齢は67・6歳で、70歳以上が55%を占める事態です。長く日本農業を支えてきた世代の大量引退が迫り、今後も担い手の急減は必至とみられます。

■大規模化だけでは

 鈴木憲和農水相は、農業者減少の背景に近年の資材価格高騰や猛暑による厳しい経営環境があるとします。しかし、センサスが示した深刻な事態は昨日今日始まったものではありません。

 「食料は外国から買えばいい」「競争力のない農業はいらない」という考え方で、農産物の輸入自由化や価格保障の削減などを続け、大多数の農業経営を成り立たなくしてきた自民党政府の歴史的責任こそ問われるべきです。

 ところが自民党政府はみずからの農政を反省するどころか農業者の激減を不可避なものとして、少ない人数でも生産を維持するためとして農業の大規模化や農地の大区画化、スマート農業の推進など従来の規模拡大一辺倒の路線を走っています。

 今回のセンサス結果では、ごく一部の大規模経営が増加し、その耕地面積のシェアが増えたのは確かです。しかし全国の経営耕地面積はこの5年で5・8%減少しています。離農者の農地を大規模経営がカバーできず、耕作放棄地が広がっているのが実態です。とりわけ中山間地域などではそれが深刻です。

■社会存続に関わる

 農水省は全国の市町村に、将来の農地の担い手を特定する「地域計画」を作成するよう求めてきましたが、4月末のまとめでは10年後に耕作者の確保を見通せない農地が全国で3割に達するといいます。現状の農政を前提に農村の関係者に大規模化などの努力を求めても、農村の崩壊が防げないことは明らかです。

 昨年来の「令和の米騒動」やクマの頻繁な出没・被害などは農業者の歴史的な減少と農村の疲弊を背景に起きたものです。これ以上の農業者の減少は国民食料の安定供給や社会の持続可能性を土台から脅かすことになります。

 今回のセンサス結果が求めているのは、政府が大小多様な農業者の確保・育成を社会の存続に関わる課題として総力をあげることです。価格保障や所得補償などで大多数の農業者が安心して営農に励み農村で暮らせる条件を整えるとともに新規就農者の確保・育成を国家プロジェクトとして取り組むことです。