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2025年12月14日

全国革新懇「さよなら自民党政治」シンポ

 全国革新懇が12日夜開催した「さよなら自民党政治、生活向上、民主主義と平和を実現する政治をめざすシンポジウム」での、日本共産党の田村智子委員長ら5人のパネリストの冒頭の発言(要旨)と、田村氏の最後の発言(同)を紹介します。

各氏の発言要旨

左派・革新 再生してこそ
上智大学教授 中野晃一さん

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 いまの政治状況は10年前の安保法制強行のときより危険な段階に入っています。政治は振り子のように「左右」に振れると言われますが、「右」に振れたら支点も一緒に「右」に振れるということが起きていて、「左」に戻っても以前の「右」と同じです。

 リベラルの人が石破さんを応援するという奇妙なことが起きました。そもそも、石破さんは褒められた政治家ではありません。こうしてセンターラインが「右」へ「右」へと動かされ、右傾化は進んできました。

 立憲民主党が安保法制合憲論にかじを切るといった話が出ていますが、これは危険です。政治体制全体の右傾化がとても危うい。高市政権で政治はさらに右傾化しました。それを追いかけて野党まで右にいく。深刻な状況にあります。

 この流れを変えなければいけないなかで、「革新」というアイデンティティーは非常に重要です。でたらめな政治がまかり通っている今、左派・革新勢力を再生しないとリベラルな世の中さえつくり直せません。みんながより自由になれる政治ビジョンを打ち出すことが重要です。

財界のための政治を断て
元文部科学事務次官 前川喜平さん

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 高市政権は米国に言われるがままに大軍拡を続け、新自由主義的経済政策で教育や福祉の予算を削り、国民は貧しくなる一方です。大本は金権政治です。財界と政治権力が癒着し、財界のための政治をしている。この流れを断ち切らないと政治は良くならない。

 政治の本当の問題点から目をそらす手段として排外主義が利用されています。外国人労働者が悪い、あるいは中国が悪いと話をすり替えています。

 いまメディアは、盛んに高市首相を持ち上げるような番組づくりをしています。政権に対する忖度(そんたく)や迎合が起きているわけですが、原因は経営陣と政治権力との癒着です。権力の圧力で現場が萎縮し政治報道が少なくなった隙間にデマやフェイクが飛び交っています。これらに対してファクトチェックをして事実に基づいた政治報道をすることがメディアの果たすべき役割ではないでしょうか。メディアがもっとまともになってくれないと日本の民主主義は奈落の底に落ちていくと思います。

学費増は排外主義と密接
東京大学院生 金澤伶さん

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 今、学費値上げの問題は、深刻な領域まで進行しています。学費値上げは、学生の人生を左右しているという問題です。それが、排外主義とも密接に結びついています。留学生のみ対象の学費値上げが、東北大、早稲田大、広島大などで行われようとしています。武蔵野美術大は2024年に留学生のみ4年間で145・2万円増額し、学生から批判の声が上がりました。

 留学生には「特別な配慮」が必要だから、学費値上げは一般的だといわれます。それは合理的調整や、配慮が必要な日本国籍を持つ学生に対しても同じ論理が適用される可能性が、今後ますます増えるということです。お金があって、障害がなく、病気をせず、家庭内の不和がない、安定した成績を維持できる学生しか大学には残れなくなるという可能性があるということです。

 学費値上げは、声を上げにくい人たちを対象に進められようとしています。当事者が声を上げにくいということから、全国で連帯しようということで私も頑張っています。

非常に危なっかしい政権
関西学院大学教授・全国革新懇代表世話人 冨田宏治さん

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 私たちは非常に危なっかしい政権の下にいます。危なっかしいというのは、これまでの政権が口にしなかった、あるいはできなかったようなことを簡単に口にし、行おうとしているということです。海外有事を巡る国会答弁、議員定数削減の自動発動法案、円安が進んでいる中での大量の国債発行などにも平然と手を付けていて、危険だという意味で危なっかしい政権だと思います。それが確信犯なのか、ただそこつなだけなのかよく分からないことも含めて危険性があります。

 さらに、自民党が衆参両院ともに過半数を割り、公明党も連立離脱をし、政権基盤が非常に脆弱(ぜいじゃく)でいつこけてもおかしくない。高市政権の脆弱性という意味での危なっかしさだと思います。

 SNS上のさまざまな言説や、いわゆるオールドメディアと言われているものの中でテレビが、高市首相持ち上げを繰り返しています。政権基盤が弱い分、風頼みの高支持率に支えられ、安倍晋三政権を支えた岩盤保守層と呼ばれる人たちだけを頼りにしています。

高市政権に立ち向かう国民的共同を広げよう
田村委員長の報告

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 高市政権に立ち向かう国民的な共同を広げようというのが、発言のテーマですが、まず高市政権をどう見るかについて述べます。

 自民党政権を維持するために維新を取り込み、人気取りのためには排外主義も利用し、危険性をもつと同時に実に底が浅いことが、発足後わずか2カ月で明らかになっています。

 一つ目に「台湾発言」です。首相が、特定の国との戦争の可能性に言及するのは戦後初めてです。戦争放棄、交戦権の否認という憲法9条を踏みにじる日本国民にとって極めて危険な発言です。

 日中国交正常化の土台も崩しました。1972年の日中国交正常化のさいの共同声明は、中華人民共和国政府が「台湾は中華人民共和国の領土の不可分の一部」だと表明し、日本政府は「十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する」と約束しました。この合意に背く発言です。

 事態打開には、発言を撤回するしかない。国交正常化合意の再確認、これまでの重要な日中合意の再確認をしなければなりません。

 二つ目に米トランプ政権言いなりの異常な軍備増強が国民の「戦争はダメ」という平和への願いと激しくぶつかっていることです。

 日本で初めて長射程ミサイルが配備される熊本市陸上自衛隊健軍駐屯地の周辺では、外国を標的にするミサイルを配備したらこちらが標的にされるとの不安を多くの住民が抱き、説明会さえ開かないことに怒りと不満が渦巻いています。

 高市政権は長射程ミサイル配備も軍事費の国内総生産(GDP)比2%化も、アメリカの要請であることを懸命に隠しています。先制攻撃戦略をもつ米軍の事実上の指揮統制下に自衛隊を組み込む危険性を隠し「日本を守る」ためだと強弁しています。

 なぜごまかすのか。戦後80年、憲法9条は圧倒的な国民に支持され、日本を守る自衛隊は支持するが、他国へ攻め込むことはあってはならないというのが共通の認識として培われているからに他なりません。「戦争反対」という国民多数の願いこそ、高市政権の危険な思想と軍備拡大を止める力です。

 三つ目に、経済政策、暮らしを守る政策が、空っぽだということです。

 消費税減税は拒否、最低賃金1500円の目標は投げ捨てる、安倍政権が行った労働時間規制緩和をさらに進める、医療費4兆円削減など、希望はかけらもない。軍事費の異常突出も暮らしの要求とぶつからざるを得ません。

 国民的な共同をどう広げるか。

 一つに、多様な要求で対話し、その実現を求める共同を広げていくことです。街頭対話では高市政権に期待するという人でも、要求で対話すると支持や期待がすぐに崩れます。消費税減税、学費、お米、こういう切実な要求こそ、高市政権を追い詰める力です。

 二つに、政権の危険性の核心=アメリカ言いなりの大軍拡、安保法制のもとでの戦争国家づくりに正面から立ち向かう確かな共同です。

 この共同を政党間でつくろうと、社民党、新社会党、参院会派「沖縄の風」と会談し、継続的な連携を確認することができました。左の側の確かな共同を発展させていく、ここに対決の軸があるということを国民に示していく決意です。

不安あおるも無策の政権
解決の道 対話粘り強く

最後の発言

 高市政権の支持率の高さは、憲法の規定から許されない一線を超えて、排外主義に迎合し、中国の「危機」を過大にあおって国民の不安をかきたて、「強い日本」をつくるといって一時的な支持率をかすめとっているといえます。

 しかし、その決定的な弱さは、不安をかきたてても、不安を根本的に解決するすべをもっていないということです。不安にこたえる政策や対決軸を、どう新鮮に力強く示していくかが、とりわけ私たち政党に問われていると自覚しています。

 排外主義が先にまん延したヨーロッパのたたかいを、ベルギー労働党やドイツ左翼党などから聞いています。選挙制度の違いもありますが、徹底的な戸別訪問での対話です。大きく街頭でうってでるのと同時に、個別的な対話を広げることが大切です。相手のふところに飛び込み、不安のもとは、解決する道は何か、という対話を粘り強くやっていきたい。

 同時に、政党が左の側でまとまって、たたかう軸をいよいよ示さなければならない。いま街頭で訴えると、話しかけてくる人が必ずいます。先日は、中国から帰化をした女性が、帰化して10年たつが差別されている、高市政権の流れは本当に怖いと、しゃべり出したらとまらないくらいの勢いでした。

 私たちが堂々と対決する姿を示し、国民の中にモノがいえる状況をつくっていかなければと思う。社民党、新社会党、沖縄の風との共同を出発点に、さらに広げ、国会のなかでも積極的に取り組む決意を述べたい。