日本共産党の小池晃書記局長が9日の記者会見で発表した「議会制民主主義破壊の暴挙 衆院議員定数削減をやめさせるため力を合わせましょう」と題するアピールは次の通りです。
国民のみなさん
自民党と日本維新の会が12月5日、衆議院議員定数削減法案を国会に提出しました。その内容は、現行の465から1割削減を目標とし、420以下にするとしています。削減方法は衆議院の選挙制度協議会で行うとしていますが、1年以内に結論が得られない場合は、「小選挙区25・比例代表20」の合計45削減の法律改定が施行される“自動削減条項”を盛り込んでいます。なぜ1割削減なのかという理由や根拠は一切示さず、自民・維新両党の「政権合意」を問答無用で国会と国民に押し付ける身勝手極まるものです。
議員定数を含め国会や選挙のあり方は、民主主義の根幹をなすものです。議員定数「自動削減」法案は、議会制民主主義を否定する暴挙であり、断じて許されません。
裏金の全容解明と企業・団体献金禁止の棚上げ、論点のすり替えは許されません
今回の定数削減は、維新の会が「連立の絶対条件」として突きつけ、自公連立の崩壊によって危機に陥った自民党が政権を維持するために受け入れたものです。
昨年の衆院選挙に続き、今年の参院選挙でも「与党過半数割れ」という厳しい審判を下した国民が求めたのは、自民党裏金問題など金権腐敗政治の根絶です。今国会でやるべきは、国民の審判にこたえ、裏金問題の全容を徹底解明し、裏金の原資となったパーティー券購入を含む「企業・団体献金の全面禁止」を実現することです。
ところが維新の会は、定数削減は「政治改革のセンターピン」と強調し、論点をすり替えて、自民党との連立の邪魔になる「企業・団体献金禁止」の主張を棚上げしています。自らのカネをめぐる疑惑に頬かぶりし、裏金問題を不問にして自民党の責任逃れに手を貸しています。国民の審判に逆行する姿勢は許されません。
議員定数削減は、民意を切り捨て、国会の政府監視を弱めます
国会議員は主権者・国民の代表です。民意を正確に反映した国会での徹底した議論を通じて国の進路を決めることこそが、国民主権の議会制民主主義です。
定数削減で切り捨てられるのは主権者・国民の声です。国民の意見を国会に反映させるツール(手段)である議員の削減は、民意の反映に逆行します。地方の議席を減らし、少数意見や少数政党を排除し、若者や女性の政治進出を妨げ、多様な民意の議席への反映をいっそう困難にします。国会に国民の声が届かなくなれば、国会の最も大事な役割である政府監視機能が弱まることは明らかです。
削減に「合理的根拠なし」が、これまでの国会議論の到達点です
そもそも現行の衆院定数465は、わが国の普通選挙100年の歴史で最少です。1925年男子普通選挙法制定時(衆院総定数466)は議員1議席が代表する人口は12万人でしたが、現在は1議席当たり約27万人です。また、国際的にみても、日本の国会議員数(人口100万人当たり)は、OECD(経済協力開発機構)加盟38カ国の中で36番目の最低の水準です。歴史的にも国際的にも日本は議員が少なすぎます。
議員定数削減に合理的根拠は存在しません。このことは、2016年の定数削減の際、衆院議長の下に置かれた調査会が「削減する積極的理由や理論的根拠は見出(いだ)し難い」と答申しており、国会論戦でも与野党が共有していることです。
民意が届く国会へ、選挙制度の抜本改革こそ必要です
圧倒的多数の国民が求める消費税減税や裏金の全容解明の声が国会に反映しない最大の要因は選挙制度です。現行の小選挙区中心の衆院選挙制度の下で、1人しか当選しない小選挙区は、多数の「死票」を生み出し比較第1党が議席を独占して虚構の多数をつくり出しています。自民党議員が多すぎることが国民の国会議員不信につながっているのです。
いま国会では、昨年12月に設置した衆議院選挙制度協議会に全会派が参加し、「議員定数の在り方」を含む選挙制度の「抜本的な検討」を行う議論を重ねてきています。議員定数は選挙制度の抜本改革と一体で検討するのは当然のことです。全会派の合意で進めてきた国会の議論を無視し、政権与党の身勝手な結論を押し付けることは許されません。
全政党・会派の議員が参加する「衆議院選挙制度の抜本改革を実現する超党派議員連盟」の総会では、現行小選挙区制維持を提案した議員はおらず、中選挙区制や比例代表制などへの抜本改革が提案されています。今回の定数削減は、小選挙区制を維持して自民党に有利に働く制度を続けようというものです。比例削減は少数政党の議席獲得を困難にし、民意の議席への正確な反映をいっそうゆがめることは明らかです。民意が届く選挙制度への抜本改革こそ求められています。
定数削減の先にあるのは、強権政治、国民への悪政と痛みの押し付けです
維新の会は、定数削減は「改革への覚悟を示す」ためと言います。吉村洋文代表は、「政治改革のセンターピンは議員定数の削減」と強調し、「突破しない限り、後ろにある社会保障改革など日本を前に進めていくことの改革なんてできない」と繰り返し発言しています。社会保障「改悪」で国民の命に関わる予算を大幅削減し、戦争する国づくりを強化・推進し、改憲に突き進む、その突破口(センターピン)が定数削減だということです。
吉村代表が自慢する大阪府議会「改革」では、維新の主導で議員定数を3割削減し、7割の選挙区を1人区にしました。このもとで維新が過半数議席を得て、医療破壊や学校統廃合の強行、暮らしや地域経済を置き去りにする府政を推進してきました。
高市総理は「『身を切る改革』としての議員定数削減」と述べていますが、「身を切る改革」は、政権与党が自らの失政を棚に上げ、国民に負担と痛みを押し付けるときの常とう句です。消費税引き上げのたびに、セットで「身を切る改革」と称して定数削減が持ち出されてきた経緯をみても明らかです。
自民・維新両党の定数削減のねらいは、悪政押し付けのため、議員の数を減らして、国民の声を政治から遠ざけ、反対意見や少数意見を封じ込める多様な民意の排除であることは明らかです。
議員定数削減反対の一点での共同を呼びかけます
国会議員定数を含む選挙制度のあり方は、民主主義の土台であり、国民的な議論が不可欠です。一部の政党、ましてや政権与党が数の力で、しかも悪政推進の突破口として定数削減を強行するなど、断じて許されません。
日本共産党は、議員定数削減反対の一点での共同を緊急に呼びかけます。
2012年の「比例80削減法案」を民意の届く選挙制度を求める国民の声で阻止したことは重要な教訓です。請願署名や国会議員への要請なども始まっています。民意を切り捨て、悪政を押し付ける最悪の民主主義破壊に反対する広範な世論を結集しましょう。
政党・会派、良識ある議員のみなさんに「議員定数削減反対」の一点での国会内の共同を心から呼びかけます。

