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2025年12月8日

主張

戦後80年と12・8
歴史が教える存立危機の危険

 「台湾有事は存立危機事態になりうる」。高市早苗首相の国会答弁が大きな問題になるなかで戦後80年の「12・8」―1941年12月8日、日本がアメリカ、イギリスを奇襲攻撃し、侵略戦争をアジア・太平洋地域に拡大した―を迎えました。

 「12・8」は突然、起きたものではありません。いまその歴史の教訓と向き合うことが求められています。

 日本が太平洋戦争に突入したのは、泥沼化する中国への侵略戦争を打開するためでした。アメリカなどは中国を支援し、日本軍の撤退を求め、対日制裁を強めていました。そのため戦争を継続する資源を東南アジアに求めて、ハワイの真珠湾と同時にマレー半島などを攻撃しました。「12・8」は、日清戦争、日露戦争、満州事変、日中戦争と積み重ねてきた日本の領土拡張主義、権益の確保―侵略戦争の行き着いた結果でした。

■台湾の歴史と日本

 日本は明治以後多数の戦争を重ねましたが、海外から武力侵攻されて戦ったものは一つもありません。

 日清戦争で得た台湾の植民地化を手はじめに、韓国を併合しました。1931年、満州事変で中国への侵略を拡大しましたが、スローガンは「満蒙(まんもう)は日本の生命線」でした。対米英戦の「宣戦の詔書」は「帝国の存立また正に危殆(きたい)に瀕(ひん)せり」とし「自存自衛の為」戦争するとしています。

 すべて日本の領土拡張と、権益拡大を「生命線」「存立危殆」「自衛」と正当化し、侵略していったというのが歴史の事実です。

 高市首相はこの歴史と真摯(しんし)に向き合っていません。

 首相の「台湾発言」は従来の政府説明を踏み越えて中国と名指しして戦争することがありうると公言するもので、それ自体が危険な外交的失態でした。

 日本はポツダム宣言を受諾し、中国から奪い植民地にしてきた台湾を中国に返還しました。日本は72年の日中共同声明で「台湾は中国の領土の不可分の一部」とする中国政府の立場を「十分理解し、尊重する」としています。

 この歴史からも日本は共同声明の見地を誰よりも尊重すべき立場です。それだけに共同声明を踏みにじる高市首相の言明は重大です。

■真の危険を直視し

 同時に高市発言は、「存立危機事態」を規定した安保法制の危険性を浮き彫りにしました。台湾有事に介入する米軍と中国軍が交戦すると日本が攻撃されていなくても米軍のために中国を先制攻撃し、戦争するということです。

 存立危機事態は、「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由…が根底から覆される」事態を要件とします。あたかも“自衛”のためであるかのように思わせて参戦するのです。“自衛”の名で国民の危機感をあおってはなりません。戦前を彷彿(ほうふつ)とさせます。

 台湾有事で日本の安全が脅かされる危険があるのは、日米軍事同盟と安保法制によって米国の戦争に組み込まれるためです。この真の危険を直視すべきです。

 歴史は高市発言のもたらすものが愚かで危険な道であることを強く警告しています。