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2025年12月7日

主張

大浦湾の埋め立て
名護市民の屈服狙う無謀工事

 「来年1月25日投開票の名護市長選を念頭に、工事の進捗(しんちょく)をアピールすることで市民の屈服を狙っているのなら到底許されない」

 沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設をめぐり、防衛省が大浦湾で埋め立て土砂の投入を始めたことに対する地元紙(琉球新報11月29日付社説)の批判です。

■完成の見通しなし

 防衛省は11月28日、大浦湾での本格的な埋め立てに着手しました。

 埋め立て区域北側の大浦湾には、最大で海面下90メートルに達する軟弱地盤が大きく広がっています。防衛省が今回土砂を投入したのは、軟弱地盤のない区域です。

 大浦湾での埋め立てを完成させるには、軟弱地盤を固める改良工事が不可欠です。防衛省は今年1月に改良工事を開始しました。しかし、そのための海底へのくい打ちは6月からおよそ半年、気象条件などの理由で中断しています。

 改良工事では、7万1000本のくいを打ち込む計画ですが、実際に打ち込んだのは2900本にすぎません。くい打ちだけで、今後20年近くかかるペースで、完成はまったく見通せません。

 しかも、改良工事は、海面下70メートルまでにとどまります。海面下70メートル~90メートルの部分は技術的に改良が不可能なため、そのまま放置されます。

 軟弱地盤のない区域で埋め立てを始めたとしても、地盤改良ができなければ、それ以上、埋め立ては進みません。

 沖縄県の玉城デニー知事は「埋め立て工事全体を完成させることが困難な状況が明らかになりつつある」とし、「全体の見通しが立たないにもかかわらず、生物多様性が極めて高く貴重な自然環境を有する大浦湾を埋め立てることは性急にすぎる」と述べ、その無謀さを批判しています。

 今回の土砂投入は、年明けの名護市長選をにらみ、市民の中に「工事は止められない」という空気をつくるためだけに強行したことは明らかです。あまりにも卑劣です。

■過重負担を永久化

 沖縄県は8月に辺野古新基地建設の問題点などを指摘した資料をまとめ、ホームページで公表しています。

 資料は、辺野古新基地について、基地機能の強化が図られ、普天間基地(沖縄県宜野湾市)の単純な「代替施設」とは言えず、沖縄の過重な基地負担を永久化・固定化するものだと批判しています。

 その上で▽繰り返し示されている反対の民意を一顧だにしない▽自然環境を不可逆的に破壊▽軟弱地盤の未改良部分が残るなど、たとえ完成しても安定的な運用は困難▽9300億円とされる総事業費の大幅増は確実▽新基地の完成は早くても「2037年」(在沖米軍幹部)で、「普天間基地の一日も早い危険性の除去」につながらない―ことなどを指摘しています。

 辺野古新基地建設があらゆる点で破綻しているのは明らかです。沖縄県は、普天間基地の「移設」先として「辺野古が唯一」とする政府の姿勢を見直すよう求めています。工事の即時中止、普天間基地の無条件撤去を求める運動と世論を大きくする時です。