持病のせきぜんそくを悪化させ、近所の呼吸器科を訪れました。待合室は患者さんがあふれかえっていました▼コンコンとせきをする子どもが窓口で、背伸びしながら「マイナ保険証」の顔認証に挑んでいました。背が低いのでカードリーダーに顔が届きません。母親がヨイショと抱っこして、ようやくできました▼従来の保険証を持って訪れた高齢の患者さんも。職員から「資格確認書が自宅に届いていませんか?」と聞かれると「届いていると思うけど見当たらなくて…」と素っ気ない。職員は負けずに「マイナ保険証」への切り替えを説得しますが、患者さんはニコニコとうなずくばかり▼筆者は初めて「スマホ保険証」を使いました。スマホの操作に手間取っていると職員がカウンターから身を乗り出して、「アプリを立ち上げて」「顔認証して」「クリックして」「タッチして」などと、身振り手振りで教えてくれました▼保険証があれば、いつでもどこでも、だれもが医療機関を受診できました。これさえあれば、子どもたちは背伸びしなくていいし、窓口の職員からつまらない説得を受ける必要もありません。国民と医療をつなぐ魔法のカードです▼魔法の正体は“シンプル・イズ・ベスト”です。わざわざ使い方を覚えなくていい。患者さんが渡し、窓口の職員が確認するだけで診察を受けられます。だから、症状が重くなる前に受診できる。それだけで安心できる。国民皆保険の土台である保険証の復活を願わずにはいられません。
2025年12月7日

