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2025年12月6日

主張

生活保護費の減額
利用者全員に全額を補償せよ

 安倍晋三政権が2013年から15年にかけて行った生活保護基準の最大10%もの減額改定について、今年6月の最高裁判決は生活保護法違反と断じ、原告が求めた改定取り消しを認めました。

 三権分立の下、国は司法の判断に従わなければなりません。改定を取り消すということは、基準引き下げはなかったものとして改定前に戻すことであり、減額決定前と決定後の差額をさかのぼって補償することです。

 基準はすべての利用者に一律に適用されるべきです。生活保護法が定める「無差別平等の原理」に従い、原告だけでなく生活保護利用者全員に差額全額を補償すべきです。

■最高裁判決を無視

 ところが高市早苗政権は原告が求めていた協議にも応じず、当時の基準とは別の基準で再計算を行って新たな減額を行い、補償を当初の減額分の一部にとどめることを決めました。最高裁判決の効力を無視するもので法治国家の基盤を揺るがします。

 新たな減額処分を行うのは、法で禁じられている「紛争の蒸し返し」に当たります。厚労省がこの問題に関して設けた専門委員会でも委員から指摘されています。蒸し返しは許されません。

 違法な減額が強行されたのは、安倍総裁の下、自民党が12年の総選挙で生活保護へのバッシングを大々的にあおり、10%削減を公約にしたからです。高市早苗首相もそれに加わった一人です。

 憲法と生活保護法が保障する最低限度を下回る生活を長年、強いたことを真に反省するなら、再減額はやめ、▽なぜ違法が行われたかの検証▽就学援助や最低賃金など生活保護基準と連動する他の制度への影響の検証と被害回復―をすべきです。

 違法とされた安倍政権の減額改定は、生活保護基準を、▽一般の低所得世帯との均衡を図る「ゆがみ調整」による減額に加え、▽恣意(しい)的な数字を使って消費者物価指数が下がったとし、それをもとに減額する「デフレ調整」を行ったものです。

■無差別平等に反し

 専門委員会の報告書は、最高裁判決はゆがみ調整も含めて改定処分を取り消したものだと認めています。にもかかわらず、ゆがみ調整は一般の低所得者との比較衡量の点から「許容される」という理屈をつけ、今回、原告を含め利用者全員にゆがみ調整を再実施しようとしています。

 加えてデフレ調整に代わる新たな減額をするとします。その際、原告には特別の給付金を出し、その他の利用者と差をつけようとしています。

 最高裁判決にも、無差別平等の原理にも反します。

 自公政権は2000年代半ば、生活保護基準を一般世帯の消費水準との比較から所得下位10%の低所得層との比較に変えました。日本の生活保護捕捉率は15~20%とされます。保護を使わず基準以下の生活に耐える層との均衡を図れば保護基準は際限なく下がります。「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する保護基準への拡充こそ必要です。

 最低でも国は今回、過ちを繰り返さず、司法判断に従わなければなりません。