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2025年11月25日

きょうの潮流

 少年の胸には、あこがれの存在がありました。一世をふうびした大横綱の大鵬。その父親と同じウクライナ出身の力士、安青錦(あおにしき)が優勝杯を抱きました▼「自分の選んだ道に間違いはなかった」。ソ連崩壊後に独立したウクライナで広まったSUMO。ダニーロ・ヤブグシシン少年は、レスリングと並行して土俵に通い、毎日けいこに励んでいたといいます。力士になる夢をふくらませながら▼転機となったのはロシアによる侵略が始まった2022年。徴兵対象となり出国が認められなくなる時期が迫っていた17歳は、相撲でつないだつてを頼って日本へ。関西大相撲部の練習生を経て安治川部屋に入門しました▼翌年の秋場所で初土俵を踏んでからは、持ち前の足腰の強さと低く鋭い出足でスピード出世。新入幕から5場所連続で2桁勝利をあげ、堂々とした勝ちっぷりで今場所の快挙に。大関昇進を確実とし、大先輩の背にまた一歩近づきました▼戦火のなかの祖国に心を痛める日々。一夜明けての優勝会見では、ドイツに避難する両親に電話で報告したら、母親は泣いて言葉にならなかったと話していました。国内外にいるウクライナの人びとにも喜びの声が広がっています▼太平洋戦争で辛苦を味わった大鵬さんは生前「戦争は二度と起こしちゃいけない」と強く語り、若人には「自分自身で進んで努力することによって何かをつくり上げたときの喜び」を感じてほしいと。さらに高みをめざす21歳は、今その言葉をかみしめているはずです。