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2025年11月24日

特区医学部 留学生帰国

専門医研修進むと奨学金3000万円一括返済
アジアから受け入れ 国際医療福祉大

 帰国か、返還義務がない奨学金を一括で返すか―。日本の医学部に入ったアジアからの留学生が苦渋の決断を迫られ、無念の帰国を余儀なくされ、医師のキャリア形成で遠回りさせられています。「国際的な医療人材の育成」を目的として政府の「特例」で新設した医学部での実態を見てみました。(矢野昌弘)


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(写真)千葉県成田市にある国際医療福祉大学医学部のキャンパス(9月撮影)

 「まさか卒業後に日本人と同じ研修を受けられないとは思ってもみなかった。帰国せずに後期研修を受けるなら、奨学金を一括返済しろ、と言われた」

 そう語るのは、千葉県成田市にある国際医療福祉大学医学部の特待留学生Aさんです。

母国の医学部に

 ベトナムやインドネシアなどアジア6カ国から来た特待留学生たち。母国の大学医学部に在学し、成績優秀だった彼らは留学生募集に応じ来日しました。同大学から、6年間で学費や生活費など計3000万円の奨学金を支給されます。

 日本の医師養成制度では、医学部で学び、医師の国家試験に合格後、2年間の初期研修が義務づけられています。その後、ほとんどの医師が専門医となるために後期研修へ進みます。

 ところが、同大学医学部に17年に入学した1期生の特待留学生たちは、後期研修を受けずに帰国。他方、日本人や私費留学生は、後期研修を受けています。

 同大学によると、初期研修だけを終えて帰国した特待留学生は、母国では医学部卒業の扱いになるといいます。母国で臨床医として働くには、臨床研修や筆記試験を受けなければならない国もあるといいます。

 特待留学生が帰国せずに後期研修を受けたらどうなるのか―。同大学の担当者は、「(奨学金の)全額返金になります。本来的には一括して返しなさいとなっている」と説明します。

 キャリア形成に必須の後期研修を受けることは特待留学生にも有益なはず。それなのに、後期研修を受けると奨学金の返済を求める理由を、大学担当者は「(特待留学生は)初期研修まで終わったら、帰国して、母国で医療の発展に尽くす約束で入学しているから」だと言います。

 一方、Aさんは留学を決意する前に受けた同大学からの説明は、あやふやだったと指摘します。「日本の医師の研修制度について話は聞いてない。専門医までなれると思わされた」

 同大学には、特待留学生の間で入学前に交わす「覚書」があります。担当者は「『覚書』には初期研修を終えた時点で帰国すると書いている。後期研修について書いていない」と言います。「誤解を招かないように『覚書』に後期研修は受けられない、と明記する予定は」という本紙の問いに、担当者は「今のところはない」と回答しました。

安倍内閣の目玉

 同大学医学部は、第2次安倍晋三内閣の目玉政策「国家戦略特区」で15年度に「既存の医学部とは次元の異なる国際的な医療人材の育成を目的とする」として特例で認可されました。

 留学生の相談を受けてきたBさんは「『国際的な医療人材の育成』を目的に新設した医学部の存在意義にかかわる留学生が、奨学生という立場の弱さから大学に都合良く利用されている」と指摘します。「日本政府による特区の大学が、日本を信じて留学した学生の未来を閉ざしてよいのか。政府と医学界に適切な対応を求めたい」と訴えます。

 後期(専門)研修 初期研修が指導医のもとで2年間、さまざまな診療科を経験するのに対し、後期研修は一つの診療科に3~5年間、「専門医資格」を取得するため、経験・実績を積みます。初期研修は法律で義務づけられています。後期研修は義務ではありませんが、ほとんどの医師が後期研修に進みます。

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