日本共産党

メニューとじる

すべての記事が読める

赤旗電子版購読お申し込み

2025年11月20日

富裕税を考える(2)

「国連枠組み条約」へ協議
政治経済研究所主任研究員 合田寛さん

写真

(写真)EUにタックスヘイブン対策を求めた国際NGOオックスファムの2019年のリポートの表紙

 いま、国連では公正な課税のための国際協力に関する「国連枠組み条約」の採択に向けた動きが大詰めを迎えています。

 国際的な税のルールは戦後長く、先進国で構成する経済協力開発機構(OECD)が主導して決められてきました。そのためにルールが先進国優位、多国籍企業寄りとなり、多国籍企業、富裕者はしばしば利益や所得をタックスヘイブン(租税回避地)に移転するなど、脱税・税逃れがまかり通る要因をつくり出していました。

 2013年以来、OECDは「税源浸食と利益移転(BEPS)プロジェクト」を開始し、さらに「二つの柱」の改革を進めてきました。しかしそれらの改革は不十分なものにとどまり、また多くの途上国や新興諸国の利益に沿うものではありませんでした。

国連を舞台に

 そのような背景の中で、国際的な税のルールはすべての国が参加する国連を舞台にしてつくられるべきだとの声が、グローバルサウス(途上国・新興国)の国々から高まりました。22年12月、国連総会はナイジェリアが提案した租税協力を国連の舞台で進めるべきだとの画期的な決議案を全会一致で可決しました。

 翌23年から「国連枠組み条約」採択に向けた具体的な取り組みが開始され、27年の国連総会での議決に向けて、現在協議が続けられています。

 「国連枠組み条約」とはグローバルな解決を要する問題に関して、原則や目標を定め、国際的な合意形成を促し、各国の事情に応じた参加を可能にし、あとに議定書や決議で具体的な目標を追加することによって、柔軟で実効性のある国際協力を実現できる条約です。

 たとえば「気候変動に関する国連枠組み条約」は、33年前に採択されましたが、毎年、締約国会議(COP)を開催し、京都議定書、パリ協定を採択するなど、これまで地球温暖化を抑止する上で不可欠の役割を果たしてきました。

 「租税協力に関する国連枠組み条約」は、租税に関する共通の原則やルールを定め、それによって必要な財源を確保し、貧困と不平等、気候変動問題などを含め、世界が直面する地球的規模の課題に取り組むために不可欠な条約です。

完全に包摂的

 「国連枠組み条約」に盛り込まれる内容について、各国の代表によって現在、協議が進められていますが、条約の目的には、完全に包摂的、かつ効果的な国際租税協力の構築などが掲げられています。基本原則には、(1)すべての国連加盟国が対等に参加できること(2)租税主権を尊重し、各国の税制の独自性を認めつつ、協調を促進すること(3)税制が人権を侵害しないよう配慮すること(4)持続可能な開発と連携し、「持続可能な開発目標(SDGs)」達成に資する税制度の構築をはかること―が掲げられています。

 また約束事項として、(1)多国籍企業への公平な課税のために利益の移転やタックスヘイブン利用に対処し、課税権の公正な配分をはかる(2)富裕層への課税を強化し、オフショア資産(国内の税制や法令の制約を受けない海外の国や地域に移された資産)や租税回避に対応する(3)透明性と情報交換を進め、税務情報の国際的な共有と行政支援を図る(4)不正資金の流れを抑制し、違法な資金移動や脱税を防止する(5)租税紛争の予防と解決を図り、国際的な税務トラブルの調停メカニズムを構築する―などが盛り込まれています。(つづく)