高市早苗首相が中国による台湾侵攻(台湾有事)をめぐり「存立危機事態になり得る」と国会で答弁したことが深刻な国際問題になっています。「存立危機事態」になれば、日本は直接攻撃を受けていないのに、集団的自衛権を発動し、自衛隊が武力を行使することになるからです。
問題の答弁は7日の衆院予算委員会でのものです。「台湾を完全に中国北京政府の支配下に置くためにどういう手段を使うか」と述べた上で、「それが戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得る」「武力攻撃が発生したら、これは存立危機事態に当たる可能性が高い」と発言しました。
■平和的な解決こそ
「存立危機事態」は2015年に成立が強行された安保法制に規定されています。「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ」る「明白な危険」がある事態です。その際、「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃」を「排除」するため、日本は必要な武力行使=集団的自衛権の行使ができると定めています。
台湾有事で米国が台湾を支援するために軍事介入し、中国と戦争になる事態が起こった場合、日本政府がこれを「存立危機事態」と認定すれば、自衛隊は米軍への攻撃を排除するためとして武力を行使することになります。台湾有事への参戦です。
台湾問題は、台湾住民の自由に表明された民意を尊重し、平和的に解決されるべきです。中国の台湾に対する武力行使や武力による威嚇は許されません。同時に、米国や日本が軍事的に介入することがあってはなりません。
■冷静な話し合いを
政府は従来、台湾有事と「存立危機事態」の関係について問われた際、「いかなる事態が存立危機事態に該当するかは、個別具体的な状況に即し情報を総合して判断することとなるため、一概に述べることは困難」(24年2月2日、参院本会議、岸田文雄首相=当時)と答えてきました。
安保法制の審議の際、当時の安倍晋三首相は「存立危機事態」に該当する例として中東・ホルムズ海峡での機雷敷設を挙げました。政府の担当者は「(安保)法制の審議に当たり、存立危機事態に該当し得るケースとして台湾有事の事例を挙げて説明はしていない」(今年5月22日、参院外交防衛委員会、小杉裕一内閣審議官)と述べています。
石破茂前首相も「台湾問題で『この場合はこう』と政府が断定することは、歴代政権が避けてきた」(「毎日」13日付電子版)と述べています。地域名などを挙げ「存立危機事態」になると政府が公式に発言すればどんな事態になるか分かっていたからです。
「危機」を過大にあおり大軍拡の口実にすることは許されません。高市首相の「外交的失態は是正されるべき」(日本共産党の志位和夫議長)で、発言は撤回すべきです。日中関係で必要なのは「互いに脅威にならない」(08年の日中首脳会談共同声明)など、両国が確認した合意に基づき冷静に対話することです。

